カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

「夜空」「扉」「輝くメガネ」ジャンル「童話」より・魔法のクレヨン

2015-04-07 21:48:34 | 三題噺
 魔法のクレヨンで描いた眼鏡をかけ
 魔法のクレヨンで描いた扉を開けて
 冒険の旅に出よう

 魔法のクレヨンで描いた
 世界で一番大きなカタツムリに乗って
 大きな声で歌いながら
 縞々のライオンや虹色の花を探しに行こう

 でも油断しないで、
 夜が明けて朝日が昇ったら
 魔法のクレヨンで描いた魔法が解ける
 そうしたら二度と家には帰れないよ
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「過去」「クエスト」「ぬれた遊び」ジャンル「ギャグコメ」より・泥田坊

2015-04-06 18:33:59 | 三題噺
 子供の頃、田植えの手伝いをしていて泥に沈んだ足が抜けなくなった。履いていた長靴を脱いで両手で引き抜くと妙な泥人形が「田んぼを返せ!」などど叫びながらくっ付いてきた。
 取りあえず落ち着かせて泥人形から話を聞くと、何でも泥田坊という名の妖怪らしく、放蕩息子のせいで田んぼを失った男の成れの果てだそうだ。とりあえず人違いを詫びて戻って行く泥田坊に対して、さっさと成仏してしまえば良いのにと子供の頃は思ったが、実の息子を育て損なった泥田坊の真の哀しみを知ったのは、大人になって世間の色々を知ってからだった。
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「黄昏」「プレステ」「危険な目的」ジャンル「ホラー」より・欠け落ちた記憶

2015-04-05 19:35:55 | 三題噺
 子供の頃に確かに自分の家でプレイしていた筈のゲームタイトルをどうしても思い出せない。内容はうろ覚えなのだが、確か主人公が奇妙な怪談を集めていって最後に謎が明かされるようなアドベンチャーゲームで、端々に挿入されたショートムービーがとてつもなく怖かった事だけは鮮明に覚えている。
 その他に何となく思い出せるのは黄昏時、泣き喚きながら誰かに何かを叩き付けている光景。

 ところで、家にあったゲーム機はいつから消えたのだろう。自身で捨てた覚えは無いのだが、両親は頑なに知らないと言い張る。
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「雲」「いけにえ」「業務用のツンデレ」ジャンル「指定なし」より・最期の言葉

2015-04-04 19:52:32 | 三題噺
 人間嫌いの老人はガイノイドと共に小惑星で暮らしていた。彼女は美しく聡明で良く老人に尽くしたが、老人は嘗て彼女と同じ顔をした妻に行ったのと同じように僅かな不備を論い、時には言い掛かりを付けて彼女を貶めた。
 やがて老人が死を迎えるとき彼女は優しく何かを囁きかけ、老人は驚愕に目を見開いたまま息を引き取った。

 天使のような表情で老人に向かって囁きかけた彼女の言葉を、誰も知らない。
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「夜空」「絨毯」「ねじれた物語」ジャンルは「偏愛モノ」より・壊れた人形を抱いて

2015-04-03 22:18:14 | 三題噺
 彼は、夜になると魔法の絨毯に乗って彼女の元にやってくる。
 家族も財産も誇りも全てを奪われ、彼への憎悪だけを糧に正気を保ち続ける彼女は、何の表情もないまま延々と呪詛を呟きながら彼を受け入れ、またおいで下さいと朝日と共に彼を見送る。そして、彼女と引き替えに全てを手に入れた男は独り泣くのだ。
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「本」「テント」「先例のない運命」ジャンル「指定なし」より・破壊神の慈悲

2015-04-02 18:51:09 | 三題噺
 天幕の中にいた占い師は僕の顔を見るなり複雑な表情になると、傍らの古ぼけた本を一通りめくってから言いにくそうに、僕の運命は極めて特殊なものだと答えた。生まれ持ったものと出会う筈のものがその原因らしいが、それが吉凶どちらに傾くかは自分には判らないと。

 正直な言葉に感心した僕は、町を壊す時に天幕だけは残した。
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「前世」「猫」「増える運命」ジャンル「大衆小説」より・猫が来る

2015-04-01 19:47:54 | 三題噺
 また、すぐに逢えます。
 そう言ってから病床の彼女は静かに息絶えた。

 僕はその言葉を信じながら日々を送り、ある日彼女を思わせる迷い猫を見つけて一緒に暮らし始めることに決めた。ほどなく猫は三匹ほど増えたが、きっとそれは彼女の魂が欠片となって四方に飛び散ったせいだと思い、とりあえずうちに現れる猫は全て彼女の生まれ変わりだと思って面倒を見ながら賑やかな日々を送っている。
 
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「昼」「時間」「きれいな城」ジャンル「ギャグコメ」より・王子様の行列

2015-03-31 21:22:37 | 三題噺
 小さなお城に住む王子様は散らかし魔で、昼間どんなに片付けても夕方には城内を滅茶苦茶にしてしまい、家臣たちの頭痛の種でした。

 そこである日、高名な魔法使いが術を振るって散らかしたものが王子様を追いかけるようにしたのですが、これは僕の行列だと喜んだ王子様によって事態は更に悪化しました。
 王子様の友達が「お前、ゴミを連れて歩いてるぞ」と指摘するまで、行列は続きました。
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「砂」「終末」「最初の大学」ジャンル「ミステリー」より・正義の使者(多分)

2015-03-30 20:18:51 | 三題噺
 更に続く船長の話。

「私の通っていた航空大学は私の入学時に新設されたのだが、理事や教授が結託して不正が蔓延っている悪の巣でな。
 この私も叩き潰すまでには卒業寸前までかかった。お陰で就職も外宇宙の探査船しか選べなかったが、まあ天職だと思っているよ」

 ここで我々は船長の母校の閉校理由を悟った。
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「山」「タライ」「真のヒロイン」ジャンル「SF」より・小さな桃源郷

2015-03-29 22:55:25 | 三題噺
 趣味で洗面器くらい大きさの台座に箱庭世界を作った。
 山に囲まれて湖を望む小さな村だが、いつの間にか何処から来たかも判らない住人が住み着いた。
 ジオラマの家に家財道具を持ち込み、湖から水を引いて田畑を牛と共に耕し、洗濯物がはためき子供が犬と駆け回る、そんな桃源郷のような世界で私は村の女神と認識されてるらしく、彼らが作った祠にはたまに小さなお供えが置かれ、私は代わりに木ぎれや役に立ちそうなものをお返しに置いておくのだ。
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