カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

「太陽」「機械」「おかしな山田くん(レア)」ジャンル「サイコミステリー」より・木の芽時

2015-03-18 19:35:31 | 三題噺
 ……太陽が燃え尽きるのを恐れて人間の心臓を生け贄に捧げた太古の民族のように、私はただ地球を食い潰すだけの不要な人間を効率的に刈る機械を開発して試運転をしただけだ、などと意味不明の供述をしており、近くYの精神鑑定が行われます。
 では次のニュース、今年も各地で桜の開花宣言が始まりました。
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「緑色」「金庫」「恐怖の目的」ジャンル「大衆小説」より・みどりの思い

2015-03-17 21:23:01 | 三題噺
 事故死した叔父が隻眼なのは知っていたが、まさか大量にコレクションした義眼を金庫に貯め込んでいるとは思わなかった。
 通常の硝子製品だけではなく手描き、宝石を嵌め込んだ象眼、本物の眼球に質感がそっくりの物と、様々な緑色の瞳にはそれぞれになかなかヘビーなドラマが有りそうなのだが、それよりも何よりも叔父の瞳は両眼とも黒なのだ。
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「曇り」「ロボット」「希薄なメガネ」ジャンル「ホラー」より・新しい顔

2015-03-16 19:48:13 | 三題噺
 そのロボットは「貴方の代わりに参りました」と言うなり、僕と全く同じ顔に変化した。
 そして、ロボットを連れてきた男たちは、代わりに僕を車に乗せて収容施設に向かった。

 こうして「真の人生」を求め続ける僕は今までの生活から解き放たれ、通算で三度目の新しい人生を始めることになったのだ。
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「天国」「狼」「恐怖の才能」ジャンル「大衆小説」より・狼と狩人の時間

2015-03-15 16:06:58 | 三題噺
 狼にとって、その地は己の為だけに存在する楽園のようなものだった。屠ることを許された獲物は眼前に幾らでも現れ、始末さえしくじらなければ狩人の気を引くこともない。そんな最高の餌場にある日紛れ込んできた別の狼は、ルールも何も弁えないまま獲物の乱獲に走っった挙げ句、事もあろうに狩人を本気で怒らせた。
 だから狼は己の無実を証明するため、そして餌場を守るために狩人と共に戦う羽目に陥った。
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「黒色」「鞠」「最速の才能」ジャンル「伝記」より・盟友

2015-03-14 13:26:36 | 三題噺
 鞠を以て知己となったと歴史に伝えられる二人の男は、やがて雷迅のごとき謀反で瞬く間に政を掌握して国の頂点に君臨した。
小心で軍才の無い帝と、やはり軍才を持たぬと己を称した寵臣はそれでも歴史に残る政を行いつつ、お互いに生涯背き合うことの無いままこの世を去った。
 ただし、彼らの死後に世は激しく乱れることになった。
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「水」「メリーゴーランド」「先例のない枝」ジャンル「SF」より・ペンドラゴンの末裔

2015-03-13 19:42:03 | 三題噺
 補給目的で降り立つ惑星では大概ろくな目に遇わないと相場が決まっているのだが、食糧不足で背に腹は変えられず着陸すると案の定治水システムの故障中だそうた。
 天に聳え立つ水柱を治めるには管理資格者が所定位置から管制棒を引っこ抜いて掲げる必要があるとかで、何となく予想が付いたらしく嫌がる乗組員の一人を無理矢理向かわせたらビンゴだった。良くやった我らがアーサー、でもその管制棒(エクスカリバー)をこっちに向けるのは止めろ。
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「音」「迷信」「壊れた遊び」ジャンル「童話」より・山彦と少年

2015-03-12 19:47:51 | 三題噺
 ある所にひねくれ者の男の子がいました。男の子は人の嫌がる言葉しか言わなかったので皆に嫌われ、いつしか彼の言葉に答えを返してくれるのは遙か遠くの山に棲む心優しい山彦だけになっていました。
 ある日、男の子は山彦に向かって悪口を怒鳴り散らしました。すると山彦の返事は返らず、男の子は不安のあまり声が枯れても叫び続け、とうとう喉が裂けてしまいました。

 山彦はただ、彼に対して悪口を返したくなかっただけなのですが。
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「風」「機械」「最弱の存在」ジャンル「アクション」より・エアーマンが(多分)倒せない

2015-03-11 19:31:47 | 三題噺
「よくぞ此処まで辿り着いた。だが四天王であるこの『疾風の……』がはっ!」

 一分後
「よくぞ奴を倒した。しかし奴は我ら四天王の中で最弱、この『旋風の……』ごふっ!」

更に一分後。
「よくぞ四天王を倒した。最も連中は我らの中では単なる前衛に……げうっ!」

「いい加減にしろ」
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「悪魔」「扉」「消えたトイレ」ジャンル「伝記」より・林檎の木で作られた洋服箪笥

2015-03-10 18:41:31 | 三題噺
 ナルニアに続く扉は、ナルニアに行こうと思って開いても洋服箪笥のままだ。
 それなら、いっそ扉を洋服箪笥から厠のものにすげ替えれば、ナルニアの事など考える余裕もないまま用を足そうと開いた扉がナルニアに至る道に繋がる気がするんだが、どうだろう。

 そう問い掛けられた俺は、少し考えてから答えた。
「全世界のナルニア愛読者に土下座して詫びろ」
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「天使」「裏切り」「穏やかな魔法」ジャンル「指定なし」より・飛べない空へ

2015-03-09 18:30:57 | 三題噺
 あの人は私にとって天使そのものだった。遙か高みから優しい言葉と毅然とした態度で励まし、陽の当たる場所へと誘ってくれたあの人に少しでも近付こうと、私は己の背に見えない翼を育み、弱々しいながらも空に浮かんでみた。そして地上から離れたつま先をとても心細く、けれど誇らしい気持ちで見下ろした私は、いずれは自分もあの人のように飛べるようになりたいと願った。
 けれど、あの人は極めて奔放に空を飛び回るのが常で、己の気分次第で言葉も態度も様々に色彩を変えながら容赦なく私を斬り付けた。だから、私は自分が壊れる前にあの人から貰った翼を打ち砕いて地上に戻った。

 己の足で大地を踏みしめる確かさに安らぎながら、私は、時折つま先立ちの格好で二度と手の届かない天を見上げる。
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