カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

場面その3

2016-05-23 00:57:20 | 松高の、三羽烏が往く道は
 旧制の学校制度は現代と違って様々な中等、高等教育機関、更に軍学校が存在した。
 例えば尋常小学校を卒業した後には中学校、七年制高校、高等女学部、高等小学校、実業学校などの進路が複数存在し、更に高等学校(旧制高校)専門学校、高等師範学校、陸軍兵学校、海軍士官学校などに分岐していく。

 なお官立大学、更に最終学府である大学院に入学するには七年制高校、もしくは高等学校を卒業する必要があったが、旧制高等学校の在籍者数は当時の同世代男子の1パーセントにも満たなかったという。

 ここで話は松本高校に戻るが就学年数は三年で学級は基本的に四十人編成、文科理科共に甲・乙類のクラスがあったと言うので全生徒数は四百八十名ほどの計算だろうか。甲類は第一外国語として学ぶのが英語、乙類は独語となる。文科と理科では若干授業内容が異なるが、国語・漢文、歴史、地理、哲学、数学、物理、化学、心理、体操など今日でも馴染み深い学科の他に修身、自然科学、図学など聞き慣れないものも存在する。

 いずれにしろ学生らは週に三十二から三十四時間、三年間では九十八時間をそれらの勉学に費やす計算となる訳だ。ざっと計算すると月曜から金曜までの五日間は六時限、土曜日は三時限編成と思われるが、残念ながら、その件に関しては乏しい資料から正確な時間割を発見することが出来なかった。

 それはともかく、この物語の主人公である三人は文乙、つまり文系で第一外国語は独語選択クラスの二年生である。授業内容は高度であったが『教わるのではなく学生自らが考え、そして学ぶ』をモットーに数多くの名物教授が個性的な講義を行う興味深いものであり、学生の入れる茶々で授業内容が脱線することも珍しくなかったようだ。
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おしまいのヤイバ

2016-05-23 00:16:50 | 色々小説お題ったー(単語)
「メモ」「カッター」「サヨナラダケガ」がテーマ

 刃物を友人や恋人に送るのが良くないとされるのは、その用途が縁を断ち切るのを連想させるからだろう。だから私は敢えて『一時間待ちました、さようなら』と書いたメモに買ったばかりのカッターを添えて、あの人との待ち合わせ場所だった店のマスターに託した。
 でも、果たしてこれで私は自由になれるのだろうか。
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