カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

店の名は琥珀亭・沈めた筈の想い

2017-04-24 18:39:39 | ワンフレーズで創作お題
たかあきで【水底】というテーマで創作してください。

 実は父が死んだと連絡が入りましてね、祭を見られないのは残念だし葬儀にも間に合わぬ身ですが家に帰ろうと思ったのですよ。

 そう言って神官が差し出してきたのは開封済みの手紙だった。港町の商人ギルドでもよく使われる、蝋を垂らした上から金属製の印章を捺印した封緘は、手紙の差出人が相当に格式の高い商家であることを雄弁に示している。

 今でも家族と相容れる事は出来そうにありませんが、それでも帰らずには居られないのです。
 家を出て神殿に入ったその日に、血の繋がりなど断ちきったつもりでいた筈なのですがね、難しいものです。

 己の口元に貼り付いたような笑みを消せないまま、そんな風に神官の言葉は続いた。
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