ここは迷宮、獣風呂の湯

「炭酸」「悪夢」「七転び」がテーマ
　
　俺の居住ダンジョン空間内に炭酸温泉が涌いた。そのまま放置しておくと空間内に二酸化炭素が沈殿して窒息しかねないので魔道術で排気システムを設置したら、今度は余所からモンスターが温泉に浸かりに来るようになった。入浴料は獣使いの相棒がダンジョン内のアイテムを回収させているが、当然当たり外れが激しい。

夏の一品

「太陽」「パフェ」「ぽつり」がテーマ

　山間の村で牛の乳で作ったクリームに蜂蜜で甘味を付け、木苺の実を散らしたものを食べて以来、彼女は長年を掛けて牛を飼い木苺を育て蜂の巣を回収して材料を集め、やがてあの幼い日に味わったレシピを完璧に再現した。更にそれを期間限定メニューとして自分の店で売り出した所、評判が評判を呼んで遠方からも客が絶えない。

　そんな彼女は最終的に、小振りで良いから魔法効果物質で構築した氷室が欲しいそうだが、流石に無理だろうそれは。

芋娘の出会い

「車」「カッター」「満たされる」がテーマ

　荷車に積んだ包みの一部が破れていたのに運び主が気付かず、そのまま道にバラバラと芋を落としながら進んでいたので、面白がって荷車を追いかけながら手持ちの袋に詰めるだけ詰めていたら向こうも気付いて、取りあえず芋を返したら礼だと三つ四つばかりくれた。ありがちな話かもしれないが、それが私と夫の出会いだ。

正体不明の餅男

「餅」「チェス」「ポーカーフェイス」がテーマ

　奴は餅のようにのっぺりした表情が読めない風貌で村に現れ、周囲の人間に賭けチェスを挑んできた。相手を侮った俺は勝負を受け、見事なまでにボロ負けすることになったが、賭け金は要らんからダンジョンに案内しろと言うので言うとおりにしたら結構な埋蔵品を発見して持ち帰って以来、奴は俺の相棒として村で暮らしながら探索を続けている。