カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・お月様の振り子人形

2019-05-09 22:45:25 | 突発お題

 線を左右に動かすお月様の振り子人形を見ながら、三日月はどこか不誠実な印象が拭えないと彼女は言ったが、横顔のもう片方が隠れているからこそ魅力的に見えるものだってあると僕は思う、もちろん彼女にそんなことを面と向かって言えない僕も、きっと彼女には自分の横顔しか見せていない。
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骨董品に関する物語・花籠を捧げ持つ女性の手のパイプ

2019-05-09 22:43:56 | 突発お題

 私の白い手がいつかあなたを殺してしまうのを赦してください。あなたが生きていく為の毒をあなたの体に取り込むのを手伝わせてください。そしてこの白い手がやがて毒の色に染まっていき、しまいにはおぞましい闇色に変わり果てたとしても、どうかそれでも私を愛し続けてください。

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骨董品に関する物語・ドラゴンの爪が卵を持つパイプ

2019-05-09 22:42:12 | 突発お題

「そう言えば、ムーミンに出てくるスナフキンは愛煙家なんだよな」
「確か名前自体が『パイプ好きのおじさん』って意味で本来は『スヌムムリク』って発音だろ、分かりにくいから英語読みになったとか」
「今じゃパイプ好きは下手をすると規制の対象か」
「何処の世界も世知辛いな」
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骨董品に関する物語・フランス製の鍵付き箱

2019-05-09 22:40:45 | 突発お題

 鍵の付いた箱は秘密を封じ込める為ではなく開放する為にあるのだと彼は言った。鍵が掛かっているが故に人は躍起になって箱の蓋を開けようとするのだと。だから私は私の鍵をこじ開けて無理やり中身を暴いた彼を、同じように暴いて壊したことを悔やむ感情は欠片ほども抱いていない。
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骨董品に関する物語・オーストリッチの羽根

2019-05-09 22:39:44 | 突発お題

 異界を渡り歩く旅人は、たまに虚無の空間を飛び交う有翼の人影に遭遇することがある。美しい翼を広げて歌い続ける彼らを地上の人間は神を称える天使と称するが、地上の民に彼らと意思の疎通に成功した者はおらず、その姿を地上に留め置くことに成功した者も未だ存在しないという。
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第九十六景・桜の森の満開の上

2019-05-06 23:24:04 | 桜百景
たかあきは、白昼の異郷と桜の上に関わるお話を語ってください。

 満開の桜樹に登ったことがあるという従兄は、視界を覆わんばかりの薄紅と周囲を取り巻く花の香りに気が遠くなり、危うく樹上から落ちかけたそうだ。異界と呼ぶべき空間は思わぬ場所に存在するものだと言葉を締めくくった従兄に、桜樹は幹や枝を痛めるとすぐに枯れてしまうから二度とやるなと突っ込んでやっだ。
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第九十五景・お屋敷から吹く風

2019-05-03 21:12:46 | 桜百景
たかあきは、風の隣家と桜の葉に関わるお話を語ってください。

 うちの隣にあったお屋敷の庭は沢山の樹や花が植えられていて、風が吹くと散った葉や花弁がうちの前にも吹き込んできて掃除が大変だった。祖父母はお福分けだと気にしていなかったが、二人が亡くなると神経質な母はお隣に文句を言い続け、やがてお隣が引っ越してお屋敷が更地になった頃、うちの身代も傾いた。
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骨董品に関する物語・小さな立体写真のセット

2019-05-03 20:30:10 | 突発お題

 ここから見える建物は父さんの母校なんだぞと自慢気に渡された箱を覗いても、僕にはただの写真が二枚並んでいるだけにしか見えなかった。けれど母さんも妹も本物みたいで凄いと喜ぶので、結局は僕も見えるふりをするしかなかった。やがて成長した僕は父さんと同じ大学に入学したが、たまに校舎が平板な写真にしか見えなくなって困る。
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骨董品に関する物語・極めて小振りの印章

2019-05-03 19:09:14 | 突発お題

 うちの親方は変わった人で、たまに注文もないまま緻密極まりない細工物を作ることがあった。勿論それは売り物ではなく親方の技量を示す見本として使われるのだが、どんなに見事な細工だと周囲に絶賛されても、若い頃に見た異国の旅人が荷物に吊るしていた細工物の緻密さにはとても及ばないと、親方の顔は常に晴れない。
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骨董品に関する物語・初夏に似合う花模様のカラフ

2019-05-03 13:35:45 | 桜百景

 あまり酒の飲めない友人は、だからこそきめ細やかに酒を楽しみたいと器にこだわる。グラスやゴブレットの類は一通り欲しいものを集めたと言って今度は瓶から移した酒を注ぐ為の細長い器を探し始めたが、最終的には昔読んだ本に出てきた、たんぽぽのお酒に似合う器が欲しいそうだ。
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