あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

映画『ライフ』を見て

2011-09-11 11:37:39 | インポート

先日,天声人語で紹介された映画『ライフ<いのちをつなぐ物語>』を見てきました。

産まれてくる子どもたちのためにさまざまな工夫をして,そのいのちをつなぐ役割と責任を果たす動物の親たち。

背中にオタマジャクシを背負って木の上の安全な水たまりまで運ぶイチゴヤドクガエル。一匹ずつ背中に乗せそれぞれの水たまりに運び終えると,今度は餌となる無性卵を一つずつその水たまりに産みおとしていきます。子どもが敵から襲われることなく,安心して育つことができるように身を粉にして行動する様子に,我が子に対する献身的な深い愛を感じました。

敵に襲われることがないよう,氷雪の上で子どもを産むウェッテルアザラシ。安全な反面,厳しい寒さの中,吹雪で真っ白になりながら自分の体を盾にし,我が子を守ります。激しい風雪の中でよりそう親子の姿が,感動的でした。

ミズダコのメスは一生の間に1回だけ産卵し,半年近くつきっきりでえさ食べずに卵の世話をし,子どもの誕生を見てから死んでしまいます。その懸命な姿を見ていると,生きることの切なさを強く感じました。

命の誕生の感動とその命を守るための親の献身的な姿が,美しい映像からストレートに伝わってきます。

命が誕生し,守られ,受け継がれていく 太古からの連続した つながりの中に 自分も生きているのだということを 強く 感じます。この映画のサブタイトルは「いのちをつなぐ物語」となっていますが,その意味が理解できるような気がしました。

ライフは,生きるという意味もあります。生きるためには敵から身を守り,餌をとらなければなりません。身を守るためには,さまざまな工夫や知恵があります。

ハネジネズミは,大きな耳と先の伸びた鼻で敵の動きを察知し,長いひげで縄張り内の地形を確認し,素早く逃げることができます。バシリスクは,以前テレビで見たエリマキトカゲのように,敵に襲われると水の上を2本足ですごい勢いで走って逃げることができます。オリオフリネラというカエルは,別名:小石ガエルとも呼ばれ,襲われると岩場を転がり落ちて逃げます。体が石のように固いつくりになっています。

たとえ体が小さく弱い立場であっても,身を守るための特別な武器と知恵を身につけているというところに 自然のしくみのすばらしさを 感じました。

餌の取り方にも,工夫と知恵があります。

食中植物のハエジゴクは,甘い蜜で蠅をおびきよせ2本のセンサーで侵入を察知し,瞬時に葉を閉じてつかまえます。バンドウイルカは,連携したチームプレーで海底の泥を巻き上げ,魚の群れを追い込み,驚いて飛び出してきた魚を次から次に食ベます。

こうして,巧みに身を守り餌をとり生きる中で,パートナーとなる相手との出会いを待つことになります。

特に圧巻だったのはクラークカイツブリという鳥の舞いです。相手の気持ちを確かめるための舞い。決めたパートナーとの優雅で力強く息の合った見事な舞い。スローモーションの画面からは飛び散る水の粒まで見え,二羽のカイツブリの翼・首・全身の動きが迫力ある形で伝わってきます,その動きの一つ一つがピッタリと重なり,二羽が一体となった姿がとても美しく,生の喜びを全身で表現しているように見えます。

いのちからいのちへと 目に見えないバトンで つながれていく 生の営み。そのいのちの連鎖の中に 人間もいるのだということを 実感します。同じ地球に生きる仲間として いのちあるもの同士の横のつながりも 感じます。

機会がありましたら,是非ご覧ください。よろしかったら見た感想などもお聞かせてください。

 


想定外の被害について考えること

2011-09-10 08:46:29 | インポート

台風12号による死者・行方不明者の数は,合わせて100人を超えたとのことです。亡くなった方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

台風の進路がある程度予想される中で,なぜこれほどの犠牲者が出たのか疑問に感じたのですが,当初の想定と異なることがいろいろ生じたために被害が拡大したとのマスコミの解説がありました。

それによると,○台風の進路が当初の予想より南側にずれ,大雨が降りやすい気候条件が重なったため,記録的な豪雨となった ○進むスピードが予想よりゆっくりしていたため影響を受ける時間帯が長くなった ○避難勧告を出すタイミングが遅れたり,出せなかった ○避難勧告を出しても,老人世帯が多く自主的に避難することが困難な面があった ○特に被害が大きかった和歌山県は,山あいに点在する集落が多く,大雨になると土砂崩れ等が起きやすく,小さな河川が増水しやすい環境だった   とのことでした。

先の震災では,想定を超えた出来事が重なり,2万人近くの人が亡くなったわけですが,今回も想定を超えたことがいくつか重なり,多くの犠牲者が出ました。想定を超えることがあり得るということは,先の震災で学んだことでもあります。その教訓が今回は生かされなかったのだろうかと思ってしまいます。

台風の進路にあたる地域では,早め早めに避難勧告や指示が出され,被害の拡大を防いだところもあったようです。最悪の事態を想定し,最善の防災対応に努めることの大切さを改めて痛感します。どうすれば被害の拡大を防ぐことができたのか,その原因を検討し,最善の対応策を工夫していくことが必要になって来ると思います。

これからも,予想のできないことや予想を超えた想定外の出来事に直面することがあるかもしれません。

昨日の河北新聞には,石巻・大川小学校の惨事を取り上げさまざまな証言をもとに検証する記事が掲載されていました。地震発生から津波到達までの51分間を時系列に沿って振り返る紙面を読んでいると,改めてその当時の緊迫した状況がひしひしと伝わってきました。愛する子どもを失った保護者にとっては,なぜ裏山に避難することができなかったのか,待機していたスクールバスに乗せて避難する方法をとれなかったのかと,51分間の中で救える手立てをこうじることができなかったことに無念の思いをかみしめているのではないかと思いました。それはまた,二度とこんな惨事が起こらないよう,子どもの命をしっかりと守ることのできる防災対策に取り組んでほしいという願いを込めた思いなのではないかと思いました。

教育の場に身を置いた自分として,この保護者の心の痛みがずっしりと重く伝わってきます。自分が現場にいたとしたら,51分間の中でどういう判断や行動がとれたのだろうかと考えてしまいます。子どもの大切な命を預かっているという学校としての責任の重さを改めて感じます。最悪の事態を想定し,最善の対策や対応を計画し実践していく中で,確実に子どもの命を守っていくことが必要なのだということを痛感します。

石巻市教委では,改めて行った調査結果をもとに保護者への説明会を開催するとのことでしたが,その中でも今後の具体的な防災対策についての説明があることと思います。

原発の事故も想定外の事故として語られていましたが,それは想定した事態がもっとも最悪の事態を考えた想定でなかったということを裏付ける言葉でもあると思います。

人間は動物と違い,豊かな想像力を身につけています。災害に対しても,この想像力を駆使し,最悪の事態を想定した最善の対応策を考え,備えることができるはずです。

2万人もの尊い命が失われた事実から学んだことを生かし,しっかり命を守ることのできる防災対策・対応の実現を望みます。

これから想定外の出来事に直面しても,自由に,柔軟に,現実を見つめ,広く未来を見通し,かんじんなものを守り・大切にすることができる 真に豊かな想像力を,身につけていきたいものだと思います。


秋山ちえ子さんの取り組み

2011-09-02 10:49:02 | インポート

 最近は,テレビよりラジオを聞く機会が増えています。画像がない分,集中して一つ一つの言葉に耳を傾けることができます。印象的な言葉に出会うと,その言葉が鮮明に心に残ります。朗読等を聞くと,物語の情景や登場人物の表情が,続き絵のように頭に浮かんできます。テレビよりも受身的にならず,ラジオを楽しんでいる感じがあります。

 先日,秋山ちえ子さんの朗読『かわいそうなぞう』を耳にしました。秋山さんは,戦後から継続して,毎年8月15日の終戦記念日に,二度と戦争のない平和な日本であるようにとの願いを込めて,この朗読を続けているとのことでした。

 この物語は,戦争中に東京の上野動物園で起こった悲しい出来事を題材にした物語です。

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上野動物園には3頭の人気者の象がいました。ジョン・トンキー・ワンリーの3頭です。その頃の日本は,アメリカとの戦争が激しくなり,東京も空襲を受けるようになっていました。もし落とされた爆弾が動物園を直撃したらどうなることでしょう。壊された檻から動物たちが逃げだし町の中に出たら大変なことになります。そこで,軍の命令で猛獣のライオンやトラなどに毒薬を与えて殺すことになったのです。猛獣たちが殺され,いよいよ象たちも殺されることになりました。

まずジョンから殺すことになりました。大好きなジャガイモに毒薬を入れましたが,利口なジョンはそれを食べずに鼻でポンポン投げ返します。そこで,しかたなく毒薬を注射することになったのですが,象の体は皮が厚くて太い注射針は折れるばかりです。それで最後は食べる物を一つもやらずにおくことにし,17日目にジョンは死にました。

続いてトンキーとワンリーの番になりました。動物園の人々は,何とかこの2頭をたすけられないかと考え,遠い仙台に送ることも考えたのですが,もし爆弾が落とされ逃げ出したら仙台の人々が大変なことになります。そこで,2頭にはえさをあげないで殺すことにしました。日に日にやせ細っていく2頭の姿を見て,象係はとてもつらい気持ちになりました。

そしてある日のこと,象係の人が檻の前に立つと,2頭の象が最後の力を振り絞るように,後ろ足で立ち上がり,前足を折り曲げ,鼻を高く上げて,万歳をしました。よろけながら一生懸命芸当をするその姿を見て,象係はがまんができず,水と餌を運んできて2頭にあげました。動物園の人たちもそれを黙って見ていました。水も餌もあげてはいけない規則だったのですが,こうして長く生かしておけば戦争も終わって助かるのではないかと,みんなが考えていたのです。しかしこの願いは叶わず,ついに2頭は,どちらも鉄の檻にもたれ,鼻を長くのばし,万歳の芸当をしたまま,死んでしまいました。

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 秋山さんの朗読は,淡々とした読みではありましたが,説得力があり,場面場面のイメージが広がり,3頭の象の最期の場面が目に見えるような気がしました。愛する動物たちを自らの手で殺さなければならなかった動物園で働く人々の悲しみがストレートに伝わってきました。ライフワークとして毎年繰り返し読み続ける中に込めた,戦争のない平和な世界の実現を心から願う熱い思いが,メッーセージのように心に届きました。

 秋山さんは,1917年生まれで,現在93歳です。ラジオでは 番組に出演して朗読することになっていたのですが,体調をくずされ出演できず,代わりに以前に録音されていたものが放送されました。したがって私の聞いた朗読は,現在の秋山さんの声ではなかったわけですが,是非,今の声での朗読を拝聴したいと思いました。

 一つのことを長く続けることの意味と大切さ,そしてそれを自らの生き方として実現されていることに頭が下がります。

 秋山さんの健康のご回復とさらなる元気なご活躍を心から祈ります。