未来技術の光と影。
SIYOU’s Chronicle




ダムに無線タグ巨大読み取り機、サケを追跡
http://news.goo.ne.jp/news/wired/it/20060324/20060324206.html

 米デジタル・エンジェル社は23日(米国時間)、オレゴン州のコロンビア川で、無線タグによるサケの遡上追跡システムが完成したと発表した。ボンネビル・ダムの近くに、高さ約5メートル、幅約5メートルの巨大な無線タグ読み取り機を設置。稚魚にタグを植え付けて放流し、生還する確率などを調べる。

ダムの建設がサケの遡上の障害物となり、水産資源の減少を招いたとして、ダム廃止を求める声が出ているようだ。

今回の実験は、遡上して来るサケの数を正確にカウントし、ダムが自然環境に与える影響を科学的に検証しようという試みだ。

だが、機械、特に新しい技術には、思いもよらないようなトラブルが付きものだ。

特に、実用化が始まったばかりの技術を過信してしまうと、正確なデータを得るのは難しい。

せっかく実証実験を始めたからには、開発者は実験室に引きこもらず、フィールドに出かけて行って、地道な調査を怠らないようにして欲しい。

さもないと、思わぬ落とし穴が待ち受けているかも知れない。


「どうだね?」
「タグのデータを見る限り、今年は、サケの遡上数が激減しています。」
「対照データを取るために、先行して調査を開始しているが、ダムの建設はまだ、始まっていないんだろ?」
「ええ。既設の光学式のカウンターのデータは、前年と殆ど変わっていません。」
「それは・・・。つまり、どういうことかね?」
「どうやら、タグを埋め込まれたサケのゲート通過数のみが、激減しているようです。」
「タグを埋め込まれたサケが、何らかの理由により、生還する前に死滅しているとでも言うのかね?」
「タグの安全性は、我々社員全員が、身を持って証明しています。どうやら、原因は別の所にあるようです。」
「こんな実験室に閉じこもっていないで、現場に行って来たらどうかね。」
「それには、及びません。実は昨日の午後3時ごろに、一度に20匹のサケの通過が記録されました。」
「20匹同時にかね?」
「ええ。その時の監視カメラが捕らえた映像がこれです。」
「どうやら、熊のようだが?」
「はい。この熊が、ICタグを埋め込まれたサケを大量に食べ、腹部に溜まったタグが、熊の通過時に、一挙にカウントされたようです。」
「この熊は、ICタグの埋め込まれたサケのみ、好んで食べているとでも、言うのかね?」
「ええ、その通りです。」
「そんなことが、あり得るのかね?」
「はい。今度は、この拡大画像をご覧下さい。」
「熊が何か、前足に持っているようだが。」
「携帯型のICタグリーダーであることが判明しました。」
「つまり、ICタグリーダーを持った熊が、それをレーダー代わりに使用して、タグを付けたサケのみを、選択的に捕獲していたというわけだね。」
「ええ。これで、辻褄が合いましたね。」
「合わねぇよっ。いったい、熊が、どこでそんなもん手に入れたんだよ。」
「恐らく、自然保護活動家が、我々の調査を妨害しようと、渡したものだと考えられます。」
「サケの遡上を妨害して、ダムの建設に反対するためだね。」
「その程度なら、まだ良いのですが・・・。」
「まだ、何かあるのかね?」
「昨年、我々が放流した、ICタグ付きのサケは、1万匹ほどです。いくらタグリーダーを持っていたとしても、1匹の熊に、全部を捕獲することは不可能です。おそらく、20匹を越える熊が、ICタグリーダーを片手に、餌を求めて、山中を徘徊しているものと考えられます。

我々が、現場に行くのを躊躇しているワケが、お分かり頂けましたでしょうか?」


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