横浜市神奈川区の神奈川公会堂が企画した新春ロビーイベントに、現代手猿樂をもって参加する。
今年最初の番組は「那須与一」に、附祝言の踊りとして「すゑひろがり」の二題。
「すゑひろがり」は初演だが、「那須与一」は能樂を出典としない完全自作といふこともあり、より多く舞ひたいとの念願叶って、今回で四回目。
が、今回も含めてそのうち三回までが、嬉しくない天気に見舞はれる。
考へたら、そもそもこの曲の初演を予定してゐた或るステージイベントも、雨で内容の一部が中止となり、せっかくのお披露目が流れたと云ふ因縁がある。
以来、私の「那須与一」は"雨降らし"の曲になってしまったかと腕を組んでゐたら、今回は小雪が舞ふ有り様。
……しかし!
そっちが小雪を舞はせるならこっちは勇ましく舞ってやらうではないかと奮起して、惡天候のなか来て下さったお客さんたちに、精一杯應へる。
原典とした大藏流の狂言にならって、今回は面をかけずに演じた「すゑひろがり」は、高音の美聲で聴かせた長唄の亡き名人の音源でぜひ、との念願が叶ったもの。
三味線の聲のはうが、体が無意識に動くあたりに、私は私の"財産"を知る。
──かくして嵐悳江の現代手猿樂は、今年も本格的に始動したのである!