迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

魂合作。

2019-12-07 21:45:00 | 浮世見聞記
来る十五日の本番に向けて、初めて装束と面を付けて稽古する。

初めは装束も、「コイツなにする気やろ……?」と戸惑ひ、強張ってゐたが、やがて「ああ……」と飲み込んでくれたらしく、次第に体と動きに馴染んでくれた。

藝能は、かうした身に着けるものとの信頼関係を築くことも、肝要だ。


一通りの稽古を済ませて面をはずすと、面がほんのりと温かい。


私の顔の熱が移ったのには非ず。

面に吹き込まれた、“魂”の温かみなり。

さう、面は生き物である。


面を造ることを、

『面を打つ』

といふ。

それは、面打師が面に魂を“打ち込む”から、『面を打つ』といふのである。



手猿樂は、わたし一人では舞へない。


シテと、面と、装束と、扇などの持ち道具それぞれの“魂”が信頼し合って、初めてひとつの作品へと成立するのである。

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