迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

音色の心得。

2020-06-06 12:22:00 | 浮世見聞記
楽器の演奏、ですか……?

今は昔、箏をかじったことはございます。



いや、まうとっくにお返し、つまり忘れてしまひましたわ。

その時の琴爪だけは残ってゐますけれど、これだってどっちの手の、どの指に嵌めるのかさへ憶えていない有様で……。



同時にかじってゐたのが、長唄の三味線ですわ。



ええ、唄のはうも一緒に。

唄方の芳村伊四郎さんが贔屓でしてね、父の七代目芳村伊十郎とはまた違ふ、あの聲質が好きで……。


三味線は先代の杵屋巳太郎さん、いまは杵屋浄貢さんとおっしゃるさうですが、撥を大きく振って紡ぎ出す力強い音が大好きで、木挽町の芝居小屋に立三味線で出演されてゐるときは、立方なんかそっちのけで天井桟敷から魅入っていたものですわ。

……で、その杵屋巳太郎さんの弾き方を見様見真似してゐたら、象牙の撥先を欠ひてしまふ大失態をやらかしましてね、その時の講師から、物凄~くイヤ~な顔をされたものです。


ど素人の生かじりほど、コワイものはありませんことよ。



かくして、箏と長唄と長唄三味線をかじって体得したことは、

『好きであることと、素質があることとは全くの別モノ』

といふことですわ。


ですから私、

楽器は聴く側に徹しやう──

さう決めましたの。



ですから、“口三味線”も致しませんわ。





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