arata-tokyo-jp's blog(Henry Nagata)

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技巧的な曲と、クズカゴに捨てるような曲・・・?

2008年05月23日 19時25分37秒 | エッセイ
「リディアンクロマチックによる作品その2」をUPしようと思い、過去のデータを探している内に、思いがけず色々な事を思い出してしまいました。

その一つは・・・
私が17歳の頃に、エレックレコードの通信講座で作曲を勉強していた時の事です。
エレックレコードの機関誌に「エレックニュース」というのがあって、毎回「月例コンクール」をやっていたのですが、私はこのコンクールを通して先生に認めてもらった事が、後々まで随分と大きな自信になったものです。

本来このコンクールの趣旨というのは、アマチュアの優秀な作品をプロの歌手が歌ってレコード化する・・・というものでした。
ところが、ご存知の方も多いかもしれませんが、エレックというのは、初めは歌謡曲路線でしたが業績が振るわず、後にシンガーソングライター路線に変更してから 大成功して有名になったレコード会社です。
吉田拓郎、泉谷しげる、武田鉄矢・・・など、現在でも現役で活躍しているミュージシャンたちを発掘した優秀なディレクターがいたのです。

私がエレックニュースに作品を投稿し始めた頃には、もう既に路線が変わってしまった後でしたから、そのコンクールで選ばれてみても、その作品がレコード化されるという事は全く無くて、名ばかりのコンクールになっていました。
アマチュアから優秀な詩や曲を募集しなくても、シンガーソングライターが全て自作自演をしてしまうからです。
前置きはこれくらいにしまして・・・



その作曲のコンクールに選ばれますと、先生からコメントをもらえるのですが、その中で一つだけいつまでも心に引っかかっていた言葉がありました。
それがどんな内容のコメントかといいますと・・・
「あなたの曲は技巧的なところがあります」
「世の中には歌が上手くても売れない歌手がたくさんいます」
「あなたもそうならないように気をつけて下さい」
「これ以上、技巧に走らない方がよいでしょう」
というようなものでした。

その当時、私にはこの言葉の意味が全く分からず、「これはどういう意味でしょうか?」と質問したのですが、その返事は結局うやむやになってしまいました。

この話を思い出した時に面白く感じた事は、この先生は私の本質を見抜いていたのだな、という事です。
リディアンクロマチックのような曲は技巧的でこ難しくて、売れない曲ではないですか。
そういうものを創る人間である事が、まだ曲を作り始めたばかりの17歳の作品の中に既に現れていて、それを見破ってしまったのですから、その先生は大したものです。

このような作品は、鼻歌では絶対に作れません。
ギターでも作れません。
キーボード、特にアコースティックピアノでコツコツと作り上げます。



もう一つ思い出した事は・・・
その当時、歌謡曲のヒットメーカーとして一世を風靡していた作曲家に「Tさん」という人がいました。
「芸能界はこの人を中心に回っている」というような事も言われていたような気がします。
とにかく、作る曲作る曲が大ヒットの連続でした。

この人に次のようなエピソードがあります。
ジャズピアニストとして活躍していた「Sさん」という人が、歌謡曲の作品を売り込みにいった時に、ディレクターから次のように言われて追い返されたそうです。
「こんな専門的な曲じゃダメだよ」
「クズカゴに捨てるような曲を持ってきなさい」・・・とね。
Sさんはその後、ヒットに恵まれて有名な作曲家になりましたが、この時のディレクターが後のTさんだったのです。
Tさんもジャズをやっていたそうですが、ピアノで作曲をすると専門的になるので、歌謡曲はギターで作曲をしている、という事でした。

私はこの話を知った時から作曲家のTさんを嫌いになりました。
私が若い頃の事ですから、「クズカゴにすてるような曲」という言葉を、そのまま受け取ってしまったからです。
「Sさんという作曲家は、ジャズの専門的な曲からクズカゴに捨てるような曲を作るようになったから、レコードがヒットするようになったのか」とか・・・、
「Tさんにしても、クズカゴにすてるような曲を作り続けてヒットメーカーになったのか」・・・などと考えてしまったのです。

Tさんはピアノで作曲をすると専門的になり「こ難しい曲」になるので、それを避ける為にギターを抱えて作曲をするということですが、
私の場合は、ラジオCMの作曲をする時には、ピアノもギターも使いません。
全て「鼻歌」のような作曲法です。
ですから、Tさんの言葉を借りれば、私のラジオCMの作品は「クズカゴに捨てるような曲」という事になると思います。



技巧的で売れない曲とクズカゴに捨てるような曲・・・。
ひょんなことから、数十年前のこの二つの言葉の意味を今頃になって理解して、自己発見をするとはおかしなものです。
この二つの言葉には、とても大切な深い意味があるように思います。

私としましては、技巧的で売れない曲もクズカゴに捨てるような曲も、どちらも好きですから、今後も懲りずに作るつもりです。
こればかりは性分ですから止められません。
では売れない曲をどうぞ・・・

「リディアンクロマチックによる作品・その2」

ついでに前回UPした作品も・・・

「リディアンクロマチックによる作品・その1」

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