丸三証券の2006年3月期の配当が特別配当50円を含めて計110円になった。2007年3月期も特別配当50円を予定している。ちなみに2006年3月期の1株当り当期純利益(単独)は105.00円、連結では95.22円と、それに比べて2006年末の1株当り配当は高くなっている。増配の理由として「1990年代の証券不況において良好な財務内容を維持でき、昨今事業環境が好転してきたので、株主の支援に感謝するため」と発表されている。
配当と株価の関係について考えてみたい。最も簡単な形で定率成長配当割引モデルでは、
理論株価=1株当り配当金/(株主の要求収益率-配当成長率)
とされている。ここで、配当成長率=利益成長率=サステイナブル成長率(増資によらず内部留保のみで成長できる理論成長率)=ROE(株主資本利益率)×内部留保率=ROE×(1-配当性向)とすると(役員賞与は考慮せず)、上記の式は、
理論株価(1)=1株当り配当金/{株主の要求収益率-ROE×(1-配当性向)}
=1株当り当期純利益×配当性向/{株主の要求収益率-ROE×(1-配当性向)}
となる。一方、当期純利益をすべて配当にまわすと、
理論株価(2)=1株当り配当/株主の要求収益率=1株当り当期純利益/株主の要求収益率
となる。そして、理論株価(2)と理論株価(1)の差をPVGO(成長機会の現在価値)というが、両者の値が等しくなるのは、
1株当り当期純利益/株主の要求収益率=1株当り当期純利益×配当性向/{株主の要求収益率-ROE×(1-配当性向)}
この式を展開すると株主の要求収益率=ROEのときである。
そして株主の要求収益率<ROEの投資案件に投資するとき株価は全額配当するときより上昇し、逆に株主の要求収益率>ROEの投資案件に投資するとき株価は全額配当するときより低下する。したがって、丸三証券が今後株主の要求収益率より低いROEの事業にしか投資できないのなら配当の形で出資者に資金を還元するのは筋が通っている。つまり、今回の配当政策は同社の経営陣がそれほど高い収益機会がないといっているようなもので、もし高い収益性の見込める投資案件があるのなら内部留保して再投資すべきであり、1株当り純利益を上回るような配当を出すべきではない。その点今回の決定は合理的なものだろうか?
P.S.
日興コーディアルグループが特別目的会社を2006年3月期から、SPC(特別目的会社)を連結対象とした。ライブドア騒動で投資事業の会計問題について話題となった。このように会計が保守的に見積もられるようになれば、今回の騒動がプラスに働いたといえよう。
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