阪神電鉄の経営陣は今回の株主総会で、もし現経営陣側の推薦する取締役全員が選任されなければ16名の取締役候補者全員が取締役に就任しない旨リリースされている。現阪神経営陣は阪急HDのTOBに賛同したのだから、同社に身売りしたものとみなすことができる。レブロン基準によれば身売りした企業の経営陣は株主にとって最も経済的リターンの得られる方法を考えるべきだと思うが、今回の経営陣のとった行為はそれに当たるのだろうか?株主が現経営陣の提案に否を示せば、業務執行も混乱させることは容易に想像できるのにである。
阪神電鉄の西川社長は4月28日の記者会見で「少子高齢化で鉄道輸送量が減り、今後の経営はいかにあるべきかはかねて考えていた。」と述べていた。そのように考えていたのならば、早めに何らかの行動をしていればファンドに主導権を握られることはなかったのではないか?ファンドの登場をきっかけに(あるいはファンドの登場を社内に対する言い訳にして)経営改善が加速するのであれば、むしろ喜ばしいことであろう。経営者や従業員は株主から提供された資源(時価ベース)に新たな経済的付加価値をつけるからこそ、それに対して株主から報酬が与えられると考えるべきだ。
最近、株式持合いが復活してきた。持ち合い株式は固定株と考えられ、浮動株比率を低下させ、浮動株を考慮したインデックスに影響しよう。インデックスファンドの組入比率にも負の影響を与えるのではないだろうか。今週以降、株主に3月決算企業の議決権行使書が送られてくる。資料をよく読み議決権を行使しましょう。議決権を行使しないのは選挙で投票しないのと同じだから。
阪急HDの阪神電鉄へのTOBが発表された今頃になって、村上ファンドのインサイダー疑惑が持ち上がった。公開買付け等に関することなので証券取引法第167条にあたると思われるが、堀江被告がニッポン放送買収の意向を示したときに、村上氏が(おそらくは一般論として)より高い値段であれば売却することを示したのは周知のことである。その件を阪急HDとの価格交渉で大詰めの時期に持ち出されたことは、何らかの意図があるのではないかと疑ってしまう。
(社)日本証券アナリスト協会が発行する「証券アナリスト職業倫理基準実務ハンドブック」では、公開買い付け計画を社長の独断では実行できない場合、社長の腹案段階では業務執行決定機関で決定されたとはいえず、ファンドマネージャーがその計画を聞きつけ株式を購入しても「証券取引法には抵触しないと考えられる」とされている。ニッポン放送買収事件後に連載された日本経済新聞の連載では、ライブドア社は堀江被告のワンマン経営ではなく、同氏からの案件でも拒否される案件があったようである。先の例に当てはめればたとえ堀江被告がニッポン放送買収に興味を示したとしても、機関決定に相当するとは言えず、インサイダー取引とはいえないのではないか?もしインサイダー取引に当たると判断されれば、同ハンドブックの内容の書き換えも必要になってくるであろう。
いずれにしても阪神電鉄問題が、同社の企業価値問題以外のところで決着しそうなのは残念である。
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