がんは百種類以上あり放置すれば命取りになるが経過は症例によって様々だ。五十年前は癌の診断は死刑の判決同然で、私が医者になった頃は本人に告知しないことが多かった。
今は必ず直ぐ死に至るわけではないし、病気はきちんと説明するのが主流になっているので本人にも告知するようになっている。こうした流れになったのには色々な理由があるだろうが、今は患者医師共に当然のことと定着している。
癌が治る時代になったのは診断と治療の進化によるもので、五十年前とは隔世の感がある。ただ今でも進行癌は難しい。
早期発見が癌を治す一番の方法だが、今までの症候からアプローチする診断学では限界がある。というのは早期癌は症状がない(あっても微か)ので健康診断や通院中に偶然見つかるものが多い。
現在の内科診断学講義の様子を知らないが、病歴診察検査の鉄則は残っていてもその比重や内容は変わっているだろう。
幸い症状があって見つかる場合も最近は進行する手前で見つかることも多く、癌の治療後十年二十年と元気に通っておられる方も数多い。風邪や腹痛の診療中に癌が見つかることがあるのは診る方がいつも癌はないかあれば見つけてやろうと注意しているせいもあるだろう。人間野球選手でなくてもヒットを打ちたいという気持ちは共通している。