朝日カルチャーセンター☆ブログ

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カルチャーの現場から #11 「質問」

2024年04月24日 20時57分23秒 | カルチャーの現場から
みなさま、こんにちは。

先日、「中原中也が詠んでいた短歌 -詩人になる前の日々をひもとく-」講座を行いました。
詩人としての基礎を作った、中也の文学黎明期の歌人としての活動を掘り下げる講座です。
中也が詠んだ全116首も、資料としてお配りしました。

中也の歌、ご存じない方もいらっしゃると思います。
2首、ご紹介しますね。

猫を抱き ややに久しく撫でやりぬ すべての自信 滅び行きし日

夏の日は 偉人のごとくはでやかに 今年もきしか 空に大地に



この講座は、山口市にある中原中也記念館から中継しました。
中也の短歌との出会い、歌集まで作った歌人としての活動、歌会での奇行、そして16歳で詩と出会って以降、短歌を発表しなかった理由ーーー。

一通り講義を行った後の質疑の時間。
短歌を発表しなくなった理由部分について、受講生の方からご質問をいただきました。

中也は、短歌から詩に軸を置き変える理由について、「繰り返し」が「容れられる余地」と説明しています。
(その表現方法を「ゆたりゆたり」と呼んでいます)
その説明は中也自身によるものなのですが、いただいたご質問は、「晩年の短歌で『ゆたりゆたり』が実現しているのでは」というものでした。

詩の「ゆたりゆたり」は、みなさんもご存じのこの詩がよくわかります。

汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる

汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の皮裘
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる
(略)

晩年の歌を見てみましょう。

小田の水 沈む夕陽にきららめく きららめきつゝ 沈みゆくなり

確かに、「繰り返し」が効果的に使われています。
そこから講座では、さまざまに意見が重なります。
30歳の中也は16歳のときより表現力が高まり、短歌でも「ゆたりゆたり」を用いることができるようになっていた。
もう少し生きていれば、短歌を発表していたかもしれない(残念ながら、その年に中也は亡くなります)ーーーーーー。

「質問は未来を切りひらく」と言いますが、講座でのご質問が、中也研究の新たな道を開いた、といえるそうです。
みなさんの意見を聞きながら、自分も興奮しながら進行していました。
講座はライブ。そう実感します。

その中也の講座を、6月に行うことが決まりました。
今度は、文学少年が詩人になっていく過程を追います。
100年前の中也。京都の中也をひもときます。
講座タイトルは「ノート1924 -100年前の中也の息吹-」です。

当時のノートとして唯一現存する「ノート1924」。
そこに少し丸みを帯びた、伸びやかな字体で記された、中也の生の言葉たち。
100年前の中也の息づかいを感じながら、詩人として羽ばたいていく中也の歩みをお楽しみください。
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