私のデビュー作(役を頂いた)は、文学座研修科二年のときの、俳優座劇場プロデュース「守銭奴」でした。もちろん右も左もわからぬ自分でした。
文字通りわからない自分だから、舞台稽古暗転中、舞台から顔から落っこちて、鼻骨陥没骨折するという。手術はしたけど、顔も腫れてるし綿はつめても鼻血が出てくる。
初日は翌日。
それでもなんとか出させて頂いた。
その時のお父さん役が鈴木瑞穂さんでした。
どれだけ助けて頂いたことか。
その公演は、おかげさまで再演もあり、地方もまわらせて頂いた。色々なことを教えて下さった。役者として、人間として。
今の自分が、同じ言葉を聞いてたら、もっともっと骨にひびいていただろうと思う。
何せその頃の自分は、今よりもっと浅はかだったから。
でもその後、お会いしたり、電話で話したりさせて頂いて、
いつも「よう、息子よ、がんばってるか。また一緒に芝居したいのう!」
と声をかけてくださってた。
写真は2013年の頃。生まれたばかりのうちのちいさいひとにも会ってくれて、抱いてくれたとき。このブログにも書いていた。
この訃報を知ったのは、実はロスメルスホルムの舞台中でした。
しっかり観られてると思い、笑顔の瑞穂さんに袖から背中をおされている気持ちで、腹に力を入れながらやってました。
ああ、キリがない……………。
とても、大きくて、太くて、重みがあって、でも限りなく軽やかで、そして何よりもあたたかいお父さんでした。
本当にどうもありがとうございました。