<両軍スタメン>
- 松本ホームだが、↓とは逆のコートで前半スタート。
連勝を続けて、リーグ戦を終えたクラブ同士の対戦となった4位・5位の対決。
ともに松本が5連勝・福島が3連勝により、プレーオフ権を確定させるに至りました。
しかしこの特別な一戦で、特に福島にとってはこれが初となるPO。(松本はJ2時代に経験あり)
昇格争い自体も無く(一度2021年に5位となった際はJ2ライセンス未取得)経験不足は明らかな中で、リーグ戦で貫いていたスタイルを完遂できるほど甘くはありませんでした。
かくして迎えたキックオフ、松本のロングボール攻勢に押され、前半1分に安藤が収めた所に激しくアタックする松長根。
倒れてもなおキープする安藤に対し、こぼれ球にした所で反則の笛が鳴ると、判定に納得できず感情を露わにする一幕を作ってしまい。
その後も3分に、松本の保持に対し村越へバックチャージする鈴という具合に、緊張を隠すような激しい当たりが目立つ入りとなりました。
そしてマイボールの際も、ゴールキックではロングフィードを選択・最終ラインでサイドに叩いたのち裏を狙うスルーパスと、普段の攻撃サッカーとは一線をなしたシンプルな立ち回りを繰り広げる福島。
この姿勢は、ターンオーバーで挑んだFC大阪戦(29節、2-1)での立ち回りに酷似しており。
クオリティの低下は避けられない状況で、FC大阪の強度に押されないように、セーフティな色を強めるという内容。
その時は、そんな立ち回りななか早期(前半5分)に先制点を掴み取りました。
そしてその縁起の良さが、この日も発揮されます。
10分、ここも左に叩いて鈴がシンプルに最終ライン裏へスルーパス、受けた森晃がドリブルで奥を突いてクロス。
この低いボールをニアサイドで樋口寛が足で合わせると、ループの軌道を描いて右サイドネットに突き刺さります。
想定していた形なのかはともかく、この大一番で早くもリードを奪った福島。
この状況変化によりすかさず手が打たれ、試合開始時とサイドバックの位置を入れ替え。
鈴が右・松長根が左へ変更と、リーグ終盤では逆足SBの配置を敢行していた両者に対し、(反則連発していた入りも考慮したでしょうか)本来の位置へ移し改めて臨みました。
これで追い掛けなくてはいけなくなった松本。
開始時のロングボールでの攻めに加え、ゲーゲンプレスを一層強めて(+村越のロングスロー)押し込みを図ります。
それでも福島が本来の姿勢で無い以上、ビハインドの常であるボール保持の局面は回ってくるので、何とか主体的な崩しを混ぜたい所であり。
樋口大をターゲットに、という意図を交えて両ウイングバックを高目に位置取らせるのが基本の松本のビルドアップ。
しかしこれが福島の守備陣形と相性悪く映り。
というのも4-3-3のまま守備を行う福島は、相手のSB・WBにSBが出てくるというプレッシングの体勢を取るため、それが弱点にもなる前掛かりなスタイル。
それ故に、最初から高い位置を取るWBにより福島SBも低目を保つため、彼らの裏を突けない欠陥が露わになる格好に。
そのため、好機はもっぱら樋口大へ当てるロングボールか、福島がボールを持った際のハイプレスによる奪取が主力となりました。
17分以降、本来のショートパス攻勢による中央突破を見せ始める福島。
緊張が取れ、かつリードした事で改めて自分たちのサッカーと向き合ったという感じですが、これが松本の十分に練られた対策に嵌まる事となり。
20分に安永が前に出てエリアからすぐ手前の位置で奪取、そのままエリア内に入ってシュートした(ブロック)シーンが号砲となり、ボールゲインからのショートカウンターで失ったアドバンテージを取り戻しに掛かり。
また22分には、鈴が持ち運ぶ所を後ろから菊井が倒して反則になると、転がった鈴に引っかかる形で菊井も倒れ。
これにより菊井の方がヒートアップを見せるなど、闘争心も露わにしながら福島の繋ぎに規制を掛けていきます。
システム的には、アンカーのマークに対する福島の定型の対策である、その脇に降りるシャドーに対してもボランチがマンマーク気味に付き。
ボールゲインが果たせなくとも、とにかく福島のパスコースを狭める事で容易な突破を図らせない姿勢を徹底します。
それは中央のみならずWBも、本来ワイドの選手に付くべき所を、あえてそこを開けて中を絞って対応する局面が幾度も見られ。
この体制を集中力を切らさず続ける事が福島対策という、並大抵のクラブでは劣底不可能といえる守備姿勢で、終始相手のペースに持ち込ませませんでした。
それでも、福島はその極限まで狭い所を抜いて好機に持ち込む事も少なくなく。
33分、城定の左への叩きから森晃がドリブルに持ち込み、中央を伺いながら最後はポケットへのスルーパスで松長根を走らせ。
そして奥からマイナスのクロスと、ポケットを取っての最善手を取ったものの、ターゲットの選手は奥に入り過ぎており誰にも合わず。
36分には大関縦パス→城定ポストプレイ→針谷縦パスと中盤トライアングルでの中央突破を果たし、またも森晃→松長根と経由して突かれる左ポケット。
そして今度はカットインを経てシュートを狙った松長根ですが、ボールは無情にも右ポストに当たってラインアウトと、追加点は得られません。
この後福島がコーナーキック攻勢に持ち込む場面もありました(39分~)が、以降打ち止めとなり本格的に反撃に掛かる松本。
必然的にカギとなるのは自らのボール保持ですが、前述の通り相手SBを釣り出せない状態は続いており、そのため左右のセンターバックも上がる事で人数を増やす対策に舵を切り。
野々村・宮部が加わってのパスワークで崩しを図り、クロス攻勢に持っていく事で終盤に掛けられる攻勢。
そのクロスを、GK吉丸のパンチングで掻き出す場面が多く見られるなど、やはり守勢に回った際の福島は何処か苦しく映ります。
前半最後の好機(アディショナルタイム)は、左サイドでスルーパスに走り込んだ宮部が奥からクロス、合わせにいった村越の前でパンチングで防いだGK吉丸。
そして両者交錯して反則で終了と、そんな流れを象徴する絵図と化しました。
0-1のまま前半終了。
曲がりなりにも良い攻撃の流れを築けていた松本、ハーフタイムでの交代は行わずそのまま後半に挑み。
その後半の入りは、やはり流れを引き継いだ松本がアタッキングサードへ進入し、村越のロングスローも使ってこじ開けを狙うというものに。
福島は依然として追加点を狙いにいく姿勢で、普段通りの繋ぎはままならずもポケットを突く意識は一貫しており。
後半4分には速攻から右ワイドを取った城定、そのままボールキープを経てポケットへ入り込み、シュートかクロスか見分け辛いボールを送るもGK大内がキャッチ。
6分にも敵陣で奪い合いを制して塩浜が混戦から抜け出し、中央を使う姿勢ののち左ワイドへ展開してから森がカットインでポケットへ。
そしてまたもシュートかクロスかといったボールを蹴り込みますが、結果もGK大内がキャッチと同じものに。
この辺り、中央を堅くする松本ディフェンスに対しムキになっていた感もあり単調化してしまったでしょうか。
松本の攻撃は前半から若干改められ、右WB(佐相)が低目に降りて相手SB(松長根)を引き付ける場面を作り。
特に9分は、最終ラインからの右への展開でボールを持つ佐相という局面で、松長根の背面に村越が走り込む事でピン止めさせる(その後その松長根の脇を通し、村越クロス→安藤ファーでボレーにいくも撃てず)など相手を戦術で上回りに掛かります。
こうしてサイドで形を作ったのち、ボランチや左右のCBまでもがフィニッシャーとして前線に上がるなど、分厚い攻めで優位性を作り上げる松本。
しかしその片翼を存分に担っていた佐相が、17分に交代となり山本龍平を投入します。(山本龍が左に入り、樋口大が右に回る)
一方まるで好機を作れなくなった福島、それを受けてこちらもカードを切る準備。
代える直前の18分、針谷からパスワークで中央突破した末に、塩浜がミドルシュートを放つ(枠外)好機を見せ。
その直後に針谷→上畑へ交代したのは、リズムの悪さ故にアンカーを代えるという納得できる手法とはいえ、何とも間が悪いと感じました。
そしてそれが波及してしまったでしょうか。
交代後も、右に回った樋口大が後方からスルーパスを受ける事で、クロス攻勢を続ける松本。
そこから持ち込んだCK(20分)で、キッカー菊井が中央へ上げたクロスから野々村がヘディングシュート。
ゴール右を襲い、ライン寸前で樋口寛がブロックするも、眼前にこぼれた所をすかさず詰めたのは高橋。
ゴール上部へと突き刺さり、同点ならびに立場逆転という貴重な得点をベテランが齎します。
なおこの攻防のなか安藤が足を攣らせてしまうなど、得点に向けて憚らずもエネルギーの大部分を使う格好となりましたが、それが無事実り。
その後も反撃したい福島の気勢を反らすように、ボール保持による攻撃の姿勢を保ち。
守りに入っては負け、という精神を見せるのも、ホーム(サンプロアルウィン)の地では重要であり。
奪いたい福島の意識を逆手に取り、片側に寄せたのちの大きなサイドチェンジも決まるなど、ここにきて多彩な手段も取り始めます。
一方苦しくなった福島は、SBの片側を残す3枚での最終ラインから始めるビルドアップへと意識を変え始め。
ここからアンカー経由と見せかけ、残った鈴が縦パスを送る役を務めるという変節を取り入れる事で、何とか好機に繋がんとします。
26分にはベンチも動き森晃・樋口大→清水・矢島へと2枚替え。
しかし松本の攻めの姿勢は続き、27分には山本龍がブリッジ気味に鈴をかわして左サイドを突破、そして上げられたクロスをファーサイド奥で足で合わせる村越。
GK吉丸がセーブして何とか追加点は許さずも、後半は完全に攻撃面で負けてしまっているのは避けられず。
それが示す通り、以降反撃に出ようとしても、クリアボールを松本に回収されたりゲーゲンプレスで奪われたりで機運が高まりません。(松本は31分に安藤→浅川へと交代)
一方的に松本が攻め、福島の好機は34分にカウンターから(城定がエリア内へ進入も安永に奪われる)のみと、どちらが追う立場なのか判らない状態に。
勝ち抜けに向けて盤石、といった松本ですが、37分には値千金のゴールを挙げた高橋が足を痛めてしまい倒れ込み。
担架で運ばれた事で、それに併せて3枚替えを敢行します。
高橋・山本康・菊井→橋内・米原・高井へ交代し、この日の采配を終えた霜田正浩監督。
終盤を迎えた事で、性根入れて反撃に掛かる福島。
それは戦術というよりはとにかく勝ち越しへの執念といえるもので、持ち味の狭い所をひたすら抜くパスワークへと意識を全振りし。
短い縦パスありレイオフありと、極限まで狭くする松本ディフェンスとのぶつかり合いで、多少の遮断に遭っても拾い直す強引な前進も見せ。
しかし生命線であるポケットへの進入はままならず、仮に入ってもシュートコースは見当たらず。
こうなってしまえば、いくら特異な超攻撃スタイルといえど、相手の装甲を打ち破るには個の力が足りないというジレンマが降りかかり。
43分に最後の交代を敢行した(松長根・城定→粟野・吉永)寺田周平監督ですが、これでレギュラーの大部分が退いた事で万策尽きたかのような格好となります。
AT突入後は勢いはすっかり削がれ、自陣に引き籠る松本ディフェンスに対し、放り込むか否かという葛藤も伺えるような福島最終ライン。
松本は攻撃を遮断し続け、浅川・高井の前線にボールを繋げると、それを待っていたかのように躍動を見せる両者。
それにより陣地を押し戻され、反撃どころでは無くなるという福島。
反則で途切れたのち、すかさずリスタートして高井がロングシュートを狙い、ゴールに入るという一幕もありましたが残念ながらボールが止まっていなかったとして無効とされ。
それに異議を唱えた高井が警告を受けてしまったものの、大勢に影響はありませんでした。
結局最後は福島陣内で展開された末に、1-1で試合終了。
引き分けにより上位の松本が勝ち上がりと、こちらもレギュレーションによる結果となりましたが、内容は松本の方が上回っており順当なものに。
一方敗戦の福島、一発勝負故の徹底した対策の網にかかる格好となりましたが、悔しさに負けずこれを未来への第一歩としたい所でしょう。
かくして決勝は、富山vs松本のカードに。
富山ホームながら距離は近いため、大群の松本サポーターが逆転のためどう雰囲気を作りに掛かるのかも注目点となり。(この日の観衆は12,604人)
一方の富山、それをまともに受けては準決勝のような展開では苦しくなりそうですが、冷静さを保ちどう有利な立場を活かしに掛かるか。