<両軍スタメン>
- 札幌は、GK菅野が累積警告により出場停止。
- 柏は、ジエゴが前節(神戸戦、1-1)退場(警告2度)のため出場停止。
- 札幌は例によって、守備時は宮澤と青木がそれぞれ1列降りて4-4-2になる「オールコートマンツーマン」の姿勢に。(残留争いの最中では5バックで守る試合もあったようですが)
土曜日のプレーオフ三点盛りで、もうシーズン終了という気分になれなくも無いですが、あえて最後の視聴に。
柏サイドがまだ残留確定していないとはいえ、大量失点さえしなければ……という状況。
おまけに両クラブとも監督退任を発表済み(札幌=ミハイロ・ペトロヴィッチ氏、柏=井原正巳氏)という、ほぼ消化試合な一戦ですが、自分が僅かに持っている地元愛のもと取り上げる事に。
その札幌は、奮戦虚しく前節をもって降格が確定。
これで個人的に注目している降格回数レースは、単独トップとなる5度目(これまで4度で並んでいたのが湘南・京都・福岡)と、ある意味歩を進めるような1年となってしまいました。
来るべき時が来た、という感じですが終わった事は仕方無く。
説明不要ですが自分はJ2を主としたサイクルで、来年は観る機会も増えると思うので、(失礼を承知で)よろしくお願いしますと言うべきでしょうか。
J1ならびにミシャ氏最後の試合という、情緒感溢れる(放送席でもそう感じたので現場はさらに……だったのだろう)雰囲気のなかキックオフ。
お互いロングボールを蹴り合うという定番の入りななか、前半4分に三丸のロングパスを岡村がクリアミスして柏の好機に。
これを拾った木下がボールコントロールを経てミドルシュート(枠外)と、まず一発という意味合いの強い遠目からのフィニッシュ。
しかしこれが試合を動かす号砲となり。
札幌は直後の5分、こぼれ球を馬場がスライディングでボール確保して中盤からの攻撃。
右サイドでの運びで駒井縦パス→浅野ポストプレイ→鈴木スルーパスでポケットを突くと、抜け出した近藤がGKと一対一という状況に持ち込んだ末に、GK松本を右へとかわしてシュート。
鮮やかな崩しでゴールゲットと、これまでの重たい雰囲気が全て振り払われたかのように早々に先制を果たしました。
そしてその後も、憑き物が落ちたかのように最終ラインからの組み立てでペースを作る札幌。
この日初スタメンとなったGK児玉の足下の技術が抜群で、最後方で溜めを作りながら、柏のハイプレスを引き出してボールを運ぶ余地を作ります。
一方、例によって最終ラインに降りてプレーする宮澤もベテランらしい落ち着きを披露。
同じ最終ライン間に届ける真横の浮き球パスでプレッシングをいなすなど、その技術と視野でボールポゼッションを高め。
しかしフィニッシュは先制点のシーンのみと、アタッキングサードでの低調ぶりはこれまで通りという感じであり。
追い掛ける柏も、今季を象徴するようなサヴィオを軸とした攻撃を展開し始めると徐々に形成は変わり。
19分にロングボールを回収されたのちのゲーゲンプレスで、左サイド深めで三丸が奪うなど札幌のボール保持を阻みに掛かります。
25分には再び深めでゲーゲンプレスを受けながらの保持で、パクミンギュがバックパスをミスしてコーナーキックを献上と、次第に乱れてくる札幌。
柏はこの右CK、ポケットを突くショートコーナーから地上で繋ぎ、中央への展開の末にサヴィオがシュート(GK児玉キャッチ)と変化を付けてのフィニッシュ。
しかし鈴木へ当てるロングボールの割合を増やす事で、やられそうな流れを押し留め。
本来の姿とは異なるポストワーク主体の仕事(本来は裏抜けが特徴の選手であろう)も、試合をこなすにつれて様になってきたでしょうか。
一方柏も、ボール保持に見るべきものが無いチームな以上FWへ送るロングボールが多くなり。
しかしターゲットとなった木下はあまり機能せず、流れを呼び込む事はままならず。
21分に岡村との空中戦で、腕を岡村の頭部に入れてしまい反則・警告と、京都時代を彷彿とさせるラフプレーへの傾倒も見せてしまいます。
柏がリズムを作れないため、30分を過ぎると再び札幌が最終ラインでの保持で試合をコントロールする流れに。
35分にはGK児玉→岡村→馬場の繋ぎで、岡村が持ち運びでプレスを剥がしたのち右ワイドの馬場へパスという、心憎いプレス回避の末に馬場は一気にエリア内へロングパス。
これを鈴木が収めてのキープを経て、バックパスから浅野がシュート(古賀がブロックしてCKに)と、地上での繋ぎとロングボールを巧みに組み合わせ。
ここまでは盤石といった札幌ですが、38分には自陣でのスローインの際、スロワーの近藤は前方に送ると見せかけ中央のスペースへ投げ入れ。
しかし山田に読まれてカットされ、すかさずミドルシュート(パクミンギュがブロック)と、下手に変節を見せようとして裏目に出てしまい。
これでリズムが狂ったか、40分に柏がGK松本から組み立てるという絵図になると、手塚が裏へロングパス。
走り込んだ細谷が、岡村とのデュエルを制する格好でボール確保するとフリーの大チャンスが生まれ、そのままエリア内へ進入してシュート。
これがゴール右へと突き刺さり、一本のロングパスであっさり……という失点かと思われた所でVARが介入します。
そうで無くても細谷と競り合った岡村が倒れて動けずという、どう見ても反則チャージを受けたような絵図が生まれており。
そしてOFRに持ち込まれ、改めて細谷のチャージを後方からモロに岡村の映像が流されたのを経て、判定が覆りノーゴールの運びとなります。
命拾いした札幌ですが、頭を地面に打った岡村は脳震盪の疑いもあり治療が入ったのでピッチ外→復帰の流れに。
岡村が復帰したのは44分と既に終了間際でしたが、VARその他によりアディショナルタイムの目安は7分に。
しかし長いブレイクもあり、お互い組み立てを考える余裕が失われたかのようなその後の流れに。
その中で札幌が、近藤のラフなロビングを受けた浅野から、その2人によるパス交換で前進していき右ポケットを突く攻め。
近藤のマイナスのクロスがクリアされるも右CKとなり、キッカー青木ニアにクロス→馬場フリックでファーに浮き球→浅野落としからエリア内での空中戦に。
そして右へこぼれた所を宮澤がボレーシュート(ブロック)と、勢いで勝りゴールに迫ったものの追加点は奪えず。
1-0のまま前半終了となり、迎えた今季最後となる残り45分。
このまま勝利のムードを持ちながらも、気分は既に哀愁漂うといった札幌サイドだったでしょうか。
後半2分、右サイドでのボール確保から、浅野縦パス→鈴木ポストプレイと定番の流れでボール運び。
そして逆サイドへ展開ののち菅が持ち運んでミドルシュート(GK松本セーブ)と、前半の良い流れをそのまま持ち込んだような札幌。
といっても、柏サイドがこれまでの相手より温い所為か、ないしは「大量失点しなければ良い」思惑に囚われていたという要素も予想出来ましたが。
13分、岡村のクリアを鈴木が敵陣で収めてから好機と、相変わらず光るこの日の鈴木のポストワーク。
右への展開ののち近藤が奥へ持ち込み、尚も切り込むと見せかけてポケットへのパスで駒井に託し。
そして入れられたマイナスのクロスを浅野スルー→菅シュートと、流れるようにフィニッシュに持ち込むも関根のブロックに阻まれ決められず。
好機の数は変わらないながらも、明らかに札幌の有効打が増えてきた後半。
自力で残留確定させないと様にならない柏は、どうにかしようと攻撃で頼りにするのはやはりサヴィオの存在感であり。
14分、左サイドで持ち運びに入ったサヴィオ、そのままポケットを取ってクロスを入れる局面に。
しかしこのクロスはミスキックになると、あろう事か足を攣らせてしまったサヴィオ。
得点どころか窮地といった状況ですが、一本柱な存在に相応しくその後もサヴィオはプレーを続けます。
直後に両チームベンチが動き、札幌は宮澤→大﨑に交代。
この際キャプテンマークを駒井に託してピッチを出た宮澤により、スタジアム(大和ハウスプレミストドーム)はさらに情緒感が高まる事となります。
一方の柏は、三丸・白井永→片山・熊坂へと2枚替え。
宮澤の後を受けた大﨑も役どころは変わらず、最高峰でボール保持を支え。
GK児玉とパス交換を繰り返しながら、良質なロングパスを送る事で組み立てに掛かり。
サヴィオにあまり頼れなくなった柏は、投入された熊坂が高い位置を取る事で彼からパスを引き出しに掛かり。
ドリブルのみならずスルーパスもリーグ上位というサヴィオを活かす立ち回りですが、大きな効果は挙げられず時間は進んでいきます。
23分さらに柏ベンチは動き、山田・木下→小屋松・垣田へと2枚替え。
結局先制点が重くのしかかる形の柏、主体的な攻撃には見るべきものが無いためこうなるのも道理であり。
ビルドアップ的には、右サイドで山田が内(ハーフレーン)をとり、サイドバックがワイドで上がるという形を前半から何度か見せ。
しかしそれを見て「オールコートマンマーク」的に付いてくる札幌は、(山田に付く)パクミンギュが内側に入り(SBに付く)菅が下がってくるので、疑似的に5バックのような格好になる事により一層崩しが難しくなるという全体の印象でした。
それでも基本攻撃への意識が強い札幌故に、28分にカウンターに持ち込む(垣田がドリブルで持ち運ぶも、パクミンギュに蓋をされて反則)など一定の隙はあり。
31分、左サイドからで当然サヴィオが絡み、スルーパスで奥を取るとともに自身もパス&ゴー。
そして細谷からのリターンをポケットで受けると、中央へ浮き球の横パスを送った所にこちらもパス&ゴーしていた細谷が入り込んでボレーシュート。
これがゴールバーを直撃し、さらに垣田が追撃してシュートするもパクミンギュがブロックで防ぎ。
痛む身体(足)に鞭打つ……といったサヴィオの動きが無ければ厳しいのは変わらずで、この日の全体の出来からして一度あるかどうかという決定機を逃してしまいます。
その後、例によって最終ラインで小屋松にボールを奪われる(33分、その後熊坂がシュートもGK児玉キャッチ)という事態も招きながら、何とか保持により落ち着きを取り戻す札幌。
35分にパクミンギュ・浅野→中村・荒野へ2枚替えと、それを補うべく順次交代カードも使っていきます。
一方柏はめげずに攻め込むものの、サイド奥からのクロスが精一杯という流れに。
そんな中、39分には立田も足を攣らせてしまう事態が発生し。
ベンチもたまらず交代要員(土屋)を準備させましたが、残り1枠のみという状況で、一度ピッチ外に出たのち復帰という手段を選ぶ立田。
根性を見せるものの、やはりサヴィオ同様老骨に鞭打ち……といった域を出ず。
そして42分、そのサヴィオがミドルシュートを放った(枠外)という所で、とうとう倒れ込み限界を迎えてしまいます。
ここで残していた交代カードを使う(鵜木を投入)運びとなり、立田のその姿勢は報われたものの、結果に繋がらないのがもどかしく。
一方同時に札幌も最後の交代、近藤・鈴木→高尾・白井陽斗へと2枚替え。
そして今季の残りも、ATを残すのみとなり。
後はリードを守るのみという札幌ですが、左サイドで浮き球が上手く繋がり奥まで攻め上がるシーンも何度か作り。
その度に、執拗に上がりシュート・クロスに絡まんとする中村のプレーは、ある意味ミシャ氏の札幌を象徴するような存在だったでしょうか。
結局柏はフィニッシュを撃てないまま、1-0で試合終了の笛が鳴り。
最終戦を制した札幌のその陰で、敗戦した柏は(磐田が敗戦したため)無事に残留が決定。
札幌が残り2試合で目論んでいた(と思われる)「直接対決で大逆転残留」というシナリオは実現せず、終わり良ければ……と開き直るには降格という現実はあまりに重く。
しかし来季は全く別のチームになる事が必然な以上、この場の情緒・ファミリー感を味わうべき試合後の一時となったでしょうか。