アトリエ 籠れ美

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平成27(2015)年5月4日より

谷口キリコとロジャー・ムーア

2017-01-20 06:22:24 | 昔のアニメ、ゲーム、実写、音楽、本、雑誌
 「装甲騎兵ボトムズ」というアニメでは、今では考えられないことだが、作画の統一を図らなかったため、登場人物の顔が違っているときが結構ある。これは何も脇役に限った話ではなく、主人公やヒロイン、ライバルまで顔が違うのだから、驚きと言えば驚きだが、昔のアニメなので、それが許された時代でもあった。

 このアニメのキャラクターデザインは塩山紀生で彼自身も作画監督を務めるが、他に数名いる作画監督の一人、谷口守泰がこのアニメに思い入れするあまり、登場人物の顔を変えてしまった。だから彼が担当する回やカットは登場人物の顔が違っており、特に主人公キリコ・キュービィ―の顔は全く違う。これは「谷口キリコ」と呼ばれている。

 「装甲騎兵ボトムズ」の主人公、キリコ・キュービィーの設定は、根は素直な好青年だが、長年の戦争の影響で、ゆがんだ性格になってしまった、というものだから、塩山紀生はその通りに描いたのだが、これに谷口守泰は泥臭さや傷めつけられた体験をつけ加えた。確かにこの主人公にはこうした要素があり、結果的に塩山、谷口の両氏によって、キリコというキャラクターは完璧に創造されたと言っていい。谷口守泰は塩山紀生によって生み出されたキリコ・キュービィ―というキャラクターを見事に補完し、より完璧にしたわけだ。

 実はこれは映画「007シリーズ」にも言えないだろうか。何と言ってもジェームズ・ボンドといえばショーン・コネリーなのだが、彼だけを見ていると、寡黙に任務をこなすスパイ、という姿は浮かびづらい。そこを補完してくれたのがロジャー・ムーアではなかったか。ロジャー・ムーアの演じるジェームズ・ボンドはどこか真面目なところがある。

 ショーン・コネリーの演じるジェームズ・ボンドは、常に余裕があり、どんな相手に対峙しても負けん気を発揮する。これはロジャー・ムーアも同じだが、ロジャー・ムーアはそこに真面目さをつけ加えてくれた。これによりジェームズ・ボンド像はより完璧になったのではないか。

 言ってしまえばショーン・コネリーの演じるジェームズ・ボンドには余裕がありすぎた。別にそれはそれで悪くないけれど、見る側には、ちょっとどこか違うという感じもあったのではなかろうか。もちろんどっちを取るかと言われれば、それはショーン・コネリーだが、ロジャー・ムーアも悪くないと思えるのには、そんな理由があったのではなかろうか。

 谷口キリコとロジャー・ムーア、どちらも作品で果たした役割は同じで、しかも非常に重要だった。ふとそんなことを思って記事にしてみました。


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