Transition盤、”IN PARIS ”が「幻の名盤」に、また”FUEGO”の「名定盤」扱いによりバードの知名度、人気度はコレクター及び一般ジャズファンの間で高い。でも、ディープなバード・ファンにお目にかかったことがない。つまり「広く浅く好かれる」がバードの絶妙な立ち位置なんだろう。
BNの諸作の中では、そろそろ怪しくなり掛け、一部の毒舌家から「トタンペット」と揶揄され始めた頃のあまり目立たない”ROYAL FLUSH”が意外に自分の好みに合っているかな。恐らくバード自身もトランペッターとしての限界に薄々気付いていたのだろう、アルバム全体の印象により腐心している様子が窺われ、自分なりに満足できる作品になったことをタイトルが示している。
それから僅か3ヶ月後に録音されたのがこの”FREE FORM”、メンバーはP・アダムス(bs)の代わりにW・ショーター(ts)が入っただけだが、タイトルとショーターの名に、ひょつとして・・・・・・・と危惧する向きも。
でも、TOPの”Pentecostal Feeling”に針を落すと、ほとんどの人が「あれ、まぁ~、なに、これ・・・」と肩すかしを覚えるに違いない。ウォターメロン・マン、サイドワインダーも顔負けの立派なジャズ・ロック。しかもウォターメロン・マンに先行すること半年。
ところが、”Pentecostal Feeling”がヒットし、”FREE FORM”が話題に上った形跡は全くない。
半年後に録音された”TAKIN' OFF”のNo.は4109に対し本作は4118、つまりレコードNo.順にリリースされたとしたらウォターメロン・マンが1stで、”Pentecostal Feeling”は二番煎じとなり妙に辻褄が合いますね。本当の所はどうなんだろう。
”ROYAL FLUSH”との間隔を取るために”FREE FORM” のリリースを遅らせたと考えるのが妥当ですが、ひょっとして人柄の良いバードが弟子のハンコックの初リーダー作を優先させたかもしれませんね。
で、本作の内容ですが曲構成、曲順等、十分に練られている。2曲目のハンコックがバード用に?書いたと思われるバラード”Night Flower”ではバード流リリシズムが聴けます。ただ、もっと毒があったほうが、と思わせるほどクソ真面目ですね(笑)。
フリーの香りを微かに漂わせたタイトル曲をラストに据える等、思わせぶりな演出も効果的です。
ショーター、ハンコックは後年のような新主流派スタイルをそれほど見せていませんが、バードのスタンスとの違いは歴然としている。
頭の良いバードは「違い」をハッキリ自覚したのだろう、その後の作風を大きく転換していった。
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