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さくら茶屋など国文化財 奈良市

2024年11月30日 | 事   件

2024/11/30 読売新聞オンライン

奈良市の旧布江田家住宅(はる家ならまち)の主屋

上田家住宅の主屋

国の文化審議会が22日に文部科学相に行った登録有形文化財(建造物)の答申で、県内からは、奈良市の「旧布江田家住宅(はる家ならまち)」、御所市の「さくら茶屋(山本家住宅長屋)」、吉野町の「上田家住宅」の3か所(9件)が選ばれた。県内の登録有形文化財は92か所(339件)となる。長屋の登録はさくら茶屋が県内初。

さくら茶屋は、江戸時代の町並みが残る旧市街「御所まち」の南西角にある。3軒が横並びとなった幅約21メートルの棟割り長屋で、風情漂う町並みの入り口に位置し、地域の歴史的景観を形成していると評価された。

明治時代、鉄道(現在のJR和歌山線)敷設のために江戸時代の 環濠かんごう が一部埋められた跡に建てられた。建築時の姿を保っていたり、昭和初期の改装で当時の洋風デザインが取り入れられたりと、3軒それぞれに個性がある。間口幅や部屋の広さなど、1戸ごとにプランを変えた長屋は珍しいという。

旧布江田家住宅(奈良市南袋町)は旧市街・奈良町にある実業家の旧邸。1940年頃に主屋を取り囲むように蔵、表門と塀が整えられ、当時の屋敷構えがよく残っている点が評価された。主屋と土蔵は宿泊施設として活用。座敷は良材でしつらえた昭和初期の風情が残り、客室などとして生かされている。

上田家住宅は、吉野町山口の農村に立ち、江戸時代は大庄屋を務めた旧家。1773年建築の 茅葺かやぶ きの主屋、敷地を守る石垣、江戸後期の表門や蔵など5件が登録される。特に石垣は延長51メートルにわたり、当時の有力者ならではの風格を現している。 

父故郷に移住 貸家を改修

3軒長屋の「さくら茶屋」。山本さん夫妻は「ここから眺めるサクラは最高」と笑顔で話す

飲食スペースの「さくら茶屋」中央棟。天井は御所まち特有の丸太で支える構造(御所市で)

さくら茶屋の所有者は、東京で生まれ育ち、2020年に父の実家がある御所市に移住した山本智彦さん(55)。代々、貸家として所有していたという。

移住のきっかけは、長女さくらちゃん(4)の誕生だった。「子どもと過ごす時間を優先したい」と会社を早期退職し、同市で起業することを決めた。

3軒長屋の存在は、移住後に知った。長い期間、住人はなく廃虚状態。「どうしようもない」と感じたが、町並み保存に取り組む市職員から「御所まちの入り口の一つなので残してほしい」と頼まれた。文化財を所有する近くの住民に「登録文化財にできるのでは」と助言を受け、「文化財としての価値が加われば長屋を活用できそうだ」とひらめいた。さっそく市教育委員会に相談し、登録を申請した。

飲食店にしようと考え、友人とともに21年9月からDIY(日曜大工)で長屋の改修を進めた。そして、さくらちゃんの2歳の誕生日に合わせて22年春、2棟分を使って「さくら茶屋」を開店した。

 

 茶屋では、妻の詩織さん(35)とランチを提供。詩織さんの実家がある宮崎県から直送したブランド豚の角煮などが人気メニューで、昨年10月からは残りの1棟で民泊も始めた。修学旅行生を受け入れるなど、収益の柱になりつつある。

県内の登録有形文化財には邸宅の門扉に付随する門長屋があるが、棟割りの住居として建てられた長屋は初めて。長屋は貸家が多く、文化財となることはまれだが、2003年に長屋として全国初の登録文化財になった大阪市の4軒長屋「寺西家阿倍野長屋」は飲食店に活用され、維持費を上回る収益を生んでいるという。

山本さんは「ほかの建物とも連携して『文化財巡り』ができるようにするなど、地域を盛り上げる活動にも生かしたい」と長屋の魅力を活用しようと模索する。  

 

 

 

 

 

 

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