得た場、得た座を明け渡さない、これは遊牧民を除けば世界中の多くの人に共通の、どこか信仰のような感情でしょう。
とくに川の近くの眺めの良いところに、終の棲家を得た人は、景観を遮られるのは否、その場から他に移るのも否と思うでしょう。
堤防はダメよと言い続けて半世紀を無事に過ごし、それ見たことか何も起きないではないかと思っていたところに、百年に一度のことがやってきてしまい、水に浸かってしまったのは、まことにお気の毒です。
この現象は、自然が変わったのではなく、大きな変化の一部分です。
地球上の人間が寄ってたかって自然の変わり方に影響を与えてしまっていることもあるでしょう。
それに気付かなかったのですから、しかたがありません。
川の近くに住む人は、いつも気持ちのよい川風を受けていられて羨ましいと思ったこともありましたが、やはり、川も海もごく近くは危ない場所なのでした。
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