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英国がシリア空爆に参加したが、2年前にアサドの打倒を元仏外相に打診

2015年12月11日午後9時11

英国がシリア空爆に参加したが、シリアで戦闘が始まる2年前にアサド体制の打倒を元仏外相に打診

櫻井ジャーナルさんのサイトより
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201512100000/
<転載開始>
 イギリスのデイビッド・キャメロン政権はアメリカ主導の連合軍へ参加してシリアへの軍事攻撃を始めている。この攻撃はシリア政府の要請を受けたわけでなく、侵略行為にほかならない。12月6日にはアメリカが主導する連合軍がシリア政府軍のデイル・エズルにある野営地を攻撃して4名のシリア兵を殺害、16名以上を負傷させ、同じ日にハサカーでは市民20名以上を殺害、約30名を負傷させたと伝えられている。リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制を破壊した際、イギリスとフランスは中心的な役割を果たしていたのだが、このコンビがシリアでも前面に出て来たということだ。

 イギリスがシリアで表立った動きを見せていなかった理由は議会にある。シリアへの空爆に反対していたのだが、政府は2009年、つまりシリアで戦闘が始まる2年前にバシャール・アル・アサド政権を倒す計画はできていたようだ。1988年から93年までフランスで外務大臣を務めたロランド・デュマによると、イギリスで知り合いの政府高官からシリアへの軍事侵攻を準備していることを知らされ、仲間にならないかと誘われたという。

  2009年にはフランスでも大きな出来事があった。当時はニコラ・サルコジ政権だが、その年にフランスがNATOへ完全復帰したのだ。1966年にフラン ス軍はNATOの軍事機構から離脱、その翌年にはSHAPE(欧州連合軍最高司令部)がパリを追い出していた。1962年にシャルル・ド・ゴール大統領暗 殺未遂事件があったのだが、この事件を引き起こしたOASは「NATOの秘密部隊」とつながっていたと言われている。こうした秘密部隊は全てのNATO加 盟国に存在、中でもイタリアのグラディオは有名だ。


 OASの暗殺計画を阻止する上で重要な役割を果たしたのは情報機関のSDECE。その当時は自立した組織だったが、ド・ゴールが失脚するとCIAに浸食され、下部機関になってしまう。なお、1982年からはDGSEと呼ばれている。

 もっとも、ネオコン/シオニストのポール・ウォルフォウィッツがイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしたの は国防次官だった1991年のこと。湾岸戦争でアメリカのジョージ・H・W・ブッシュ政権がイラクのサダム・フセイン体制を倒さなかったことに怒っての発 言だが、その時にソ連軍が出てこなかったことがその後のネオコン戦略に影響する。つまり、アメリカ軍に攻撃させてもソ連/ロシア軍は尻込みして静観すると 思い込んだのだ。

 1992年のはじめにアメリカの国防総省ではDPG(国防計画指針)の草案という形で世界制覇プロジェクトを書き上げた。いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」で、旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジアなどの潜在的なライバルを潰し、ライバルを生む出すのに十分な資源を抱える西南アジアを支配するとしていた。

 2006年にはフォーリン・アフェアーズ誌(CFR/外交問題評議会が発行)に興味深い論文が掲載される。キール・リーバーとダリル・プレスが書いたもので、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できると主張している。その翌年、2007年3月5日付けのニューヨーカー誌でシーモア・ハーシュはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアがシリアとイランの2カ国とレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作を開始したと書いた。この工作の手先になるのがアル・カイダ系の武装集団だ。

  リビアへの軍事侵攻を見ると、西側の好戦派はNATOの空爆とアル・カイダ系武装集団の地上戦を連携させようと考えていたのだろう。実際、それはリビアで 機能したが、シリアでは目論見通りには進んでいない。ロシアが抵抗していることもあるが、シリア軍の存在は大きい。リビアとシリアでは軍事力に大きな差が あった。

 そうした中、イギリスがシリアへの軍事侵攻に参加した。当初からイギリスはイスラエルの意向が反映されていたと見られている が、そのイスラエルは現在、アサド体制を倒すためにアル・カイダ系武装集団やIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)を支援してきた。パレ スチナの子どもを平然と殺すイスラエルだが、そうした武装勢力の負傷兵は手厚く看護している。
 
 

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「テロとの戦いは失敗する運命」にあるは「テロリストを使った侵略が成功する」

2015年12月11日午前21時14分

米政府が言う「テロとの戦い」は「テロリストを使った戦い」で、「テロとの戦い」は失敗が成功

櫻井ジャーナルさんのサイトより
http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201512100001/
<転載開始>
  アメリカ政府が主張する「テロとの戦い」とは、「テロリストを使った戦い」を意味している。本ブログでは繰り返し書いていることだが、シリアで政権転覆を 目指して戦っているアル・カイダ系武装集団やそこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)を編成、訓練、支援しているのはアメ リカ、イギリス、フランス、トルコ、イスラエル、サウジアラビア、カタールといった国々だ。

 1970年代の終盤、ズビグネフ・ブレジンスキーの戦略に基づいてイスラム(スンニ派)の武装勢力は組織され、アメリカの軍やCIAが戦闘員を訓練してきた。ロビン・クック元英外相も指摘していたように、そうした訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイルがアル・カイダだ。ちなみに、アラビア語でアル・カイダとは「ベース」を意味する。「基地」とも訳せるが、「データベース」という意味でも使われる。こうした武装勢力のメンバーはサラフ主義者(ワッハーブ派)が中心で、この傾向は現在も変わっていない。

 こうした戦闘員を使い、2007年にはアメリカ、サウジアラビア、イスラエルがシリアとイランの2カ国、さらにレバノンのヒズボラをターゲットにした秘密工作をはじめているが、この「三国同盟」はブレジンスキーがアフガニスタンではじめたプロジェクトで形成された。アフガニスタン工作の一端は「イラン・コントラ事件」という形で発覚、そのときにこの3カ国の名前が出ている。

 最近ではシリアで戦うアル・カイダ系武装集団やISの主要兵站ラインがトルコからのものだと西側メディアも伝えるほど広く知られるようになり、盗掘石油がトルコへ運び込まれていることも明確になっている。

 そうした石油はイスラエルへ運ばれていると言われているが、ここにきてトルコとロシアとの関係が悪化、石油や天然ガスの供給源を確保するため、トルコはイスラエルから購入するという情報が流れている。

  ある種の人びとは「人民の反乱」という標語を見た瞬間、実態を調べることなく恍惚としてしまうようだ。「人民の反乱」というタグがついていれば、軍事侵略 でも「断固支持する」ような人がいる。「テロとの戦いは失敗する運命」にあると言う人も同類だ。この意味は「テロリストを使った侵略は成功する」というこ とであり、こうした主張は侵略者にとって好都合。タグではなく事実を見る必要があるのだが、そうしたことをすると侵略者が支配する体制では生き辛くなるだ ろう。

 
 
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ロシアのSu-24に対するトルコ攻撃のレーダー記録

2015年12月12日 (土)

ロシアのSu-24に対するトルコ攻撃のレーダー記録

Valentin Vasilescu

2015年12月5日
"Voltaire Network"


ロシア空軍幕僚長ヴィクトル・ボンダレフ大将

モスクワでの記者会見で、ロシア空軍幕僚長のヴィクトル・ボンダレフ大将が提示した内容は -  軍事協調の合意に従って、ロシアのスホイ爆撃機の飛行計画を知らされていたトルコ空軍が、攻撃位置につくよう事前に指示を受けていたことを明確にした。こ られの要素は、NATOの立場を無効にしている。

シリア空域での、トルコF-16による、ロシアのSu-24への攻撃から二日後、ロシア空軍幕僚長ヴィクトル・ボンダレフ大将は、これまでのところトルコの主張しか発表していない欧米マスコミによる報道を完全に書き換える驚くべき発言を行った。

シリア作戦に関し、モスクワとワシントンが10月26日に調印した覚書に従って、ロシア司令部は、アメリカに、北シリアでの二機のSu-24爆撃機 の任務を12時間前に通知した。彼等は、離陸時刻 - 午前09.40 - 高度 - 5,600から6,000メートル - 爆撃標的 トルコの辺境ハタイ県に接する、北シリアのチェフィル、モルトロウと、ザヒア地域のものを含め、任務のあらゆる詳細を送っていた。Su-24戦 術爆撃機は、それぞれ4発のOFAB-250爆弾を装備し、フメイミム空軍基地を、所定の時刻、午前09.40に離陸した。午前09.51から10.11 まで、ロシア爆撃機は保持領域を、それぞれ高度 5,650メートルと、5,800メートルで、シリア南部の都市イドリブまで飛行した。午前10.11、二機のロシア爆撃機は、標的のGPS座標を受け取 り、午前10.16に標的上空を最初の垂直通過し、爆弾を投下した。第二次攻撃のための位置につくのに必要な操縦を行った後、午前10.24、Su-24 爆撃機の一機に、トルコのF-16によって発射された空対空ミサイルが命中した。

シリア空域を監視しているレーダーネットワークによって裏付けられる的中結果の制御解析で、午前09.08から午前10.29の間に、シリア国境に あるトルコのハタイ県上空を、 4,200メートルの高度で飛行していた二機のトルコF-16の存在が明らかになった。トルコ戦闘機は、午前08.40に離陸し、午前11.00に着陸し た。

ジェット機が、エンジンを起動し、ディヤルバクル空軍基地を離陸し、基地から410キロにある軍務地域に到達するために必要な時間からして、2機の トルコF-16は、ロシア爆撃機が離陸する一時間前に命令を受けていたことを示している。これはまた、二人のトルコ人パイロットは、ロシアのSu-24と 交戦することがわかっていて、行動に備え、ロシアがトルコ空域に侵入したように見えるようにロシア機を撃墜する位置につけられるよう爆撃機の任務詳細を 知っていたことも証明している。彼等は、つまりトルコも調印している国際条約協定に規定されている手順を適用しないようにという命令を受けていたのだ。言 い換えれば、迎撃、そして視認、警告砲撃、そしてもし必要とあらば破壊という手順だ。

ヴィクトル・ボンダレフ大将によれば, Su-24爆撃機は、トルコF-16が、Su-24の方向にほぼ直角に飛行した、熱線追尾式空対空ミサイルを発射可能な地域に入るまでは、全飛行航程中、 トルコ-シリア国境から5キロ以上の距離を維持していた。トルコ機は、ロシア爆撃機に対しミサイルを発射し後部に命中させるため、1分40秒もかけて、 110度旋回した。この旋回のため、トルコF-16は、シリア空域内に2キロ侵入し、Su-24がトルコ空域を17秒しか侵犯しなかったのに対し、40秒 留まった。この時間は、攻撃後のF-16を、フメイミム空軍基地のレーダー画面で補足するのに十分だったが、戦闘機は2,500メートル以下に急降下して いた。

旋回操縦によって、F-16はミサイルを発射できる接近速度で、ロシアSu-24爆撃機の一機の背後5から7キロにつけた。攻撃後、協調行動のための連絡用の特別チャンネルを含め、パイロットからも、トルコ司令部からも、記録された無線交信はない。

ボンダレフの結論は、トルコのパイロットが、トルコ・シリア国境でロシア爆撃機撃墜をするため数週間訓練を行い、待ち伏せ攻撃の最終的な詳細は、離 陸前にロシアが送った情報が届いた後の12時間に、- 恐らくNATO同盟諸国とともに -トルコによって入念に精緻化されたということだ。

Valentin Vasilescu -

英語への翻訳
Pete Kimberley

記事原文のurl:http://www.voltairenet.org/article189543.html
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属国大本営広報部、宗主国・属国傀儡に不利な情報は報道管制する。爆撃機撃墜の話題のみならず。

反鉱害を訴え、持続可能な経済・農業を主張し、徹底的反戦を主張した田中正造、天皇直訴で有名だが、直訴は、1901年(明治34年)12月10日、東京市日比谷。114年前の昨日。

IWJで、【IWJ検証レポート】113年の時を超えて届いた田中正造の「直訴状」 ~「足尾鉱毒事件」の跡をたどった天皇陛下の胸中を探る旅(記者:原佑介)が読める。

報道管制で徹底しているのが、TPP。ヨイショ記事・報道以外は許さない。「検証TPP 全国フォーラム」の報道、大本営広報部では全く見聞きしたことがない。

TPP 隠された危険を検証 調印・批准阻止へフォーラムとして、「赤旗」に載っているのが読める。日本農業新聞にも掲載されているようだ。

記事にはないが、フォーラム資料に収録された鈴木宣弘東京大学教授の下記文章を一読すれば、TPPの御利益なるものの実態、それを推進する異常な連中の本性、即わかる。 

隠され続けるTPP合意の真実と今後の対応策

東京大学教授 鈴木宣弘

どこまで国民を欺くのか~TPP合意の政府説明の異常

 米国では、TPP(環太平洋連携協定)の影響試算を出し、それに基づいて議会で議論する手続きと日程が明示されているのに、我が国では、TPP協 定の日本語版も国民に示さず、影響試算もいつ出すか曖昧にされたまま、国会決議を守ったと強弁するための国内対策だけが先に示され、しかも、関連団体から 要望を聞いたふりをしただけで、対策も半年以上前に決まっていた。政府が考えている以上のセーフティネット政策の必要性を要請項目に挙げた団体には、政権 党の幹部が激怒し、役所を通じて、政府が考えている以上のことを要請するなと事前に要請事項の削除を迫るという、信じられない「暴挙」が行われた。
  6,000ページに及ぶ協定の日本語版がそのうち出されたとしても、その条文の背景説明を求めると、交渉過程は4年間秘密なので説明できないとの回答が 返ってくるだろう。そして、どさくさに紛れて批准してしまうという、こんな異常な手続きが「民主主義国家」で進められている。

米国の「草刈り場」日本

 TPP(環太平洋連携協定)が合意に達したとされたアトランタ会合で、日本は、決着することを目的化し、合意のためには何でもする「草刈り場」と化して、他の国が「よくそこまで譲れるね」というほどに譲歩を一手に引き受けた。
他 の国が医薬品の特許の保護期間などで最後までもめたら、どちらともとれる表現を提案し、火種を残したままでも、とにかく合意した形を作ろうとした(現に、 豪州政府の「成果:バイオ医薬品」によると、『重要なことは、この規定は、豪州の現在のバイオ医薬品に関する5年間のデータ保護又は我々の健康に関する制 度の他の部分は、一切変更しない、従って医薬品のコストは増大させない」と発表し、米国が反発している(JC総研木下寛之顧問による))。
 日本 政府は、自動車での利益確保に、ハワイ会合を決裂させるほどにこだわった(ハワイ会合の「戦犯」は本当は日本だった)のに、アトランタでは、それさえ差し 出した。TPP域内での部品調達率が55%以上でないとTPPの関税撤廃の対象とならないとする厳しい原産地規則を受け入れたが、TPP域外の中国やタイ などでの部品調達が多い日本車はこの条件のクリアが難しくなっている。また、米国の普通自動車の2.5%の関税は15年後から削減を開始して25年後に撤 廃、さらには、メディアも意図的に報道しなかったが、大型車の25%の関税は29年間現状のままで、30年後に撤廃するという気の遠くなるような内容であ る。
「農林水産業への影響は軽微のウソ

 農林水産物で「重要品目は除外」と国会決議しながら、重要5品目に含まれる関税分類上の細目586品目のうち174品目の関税を撤廃し、残りは関 税削減してしまい、自動車ではほとんど恩恵がないという合意内容で、日本の経済的利益を内閣府と同じGTAPモデルで暫定的に試算してみると、控えめに推 定しても、農林水産物で1兆円、食品加工で1.5兆円の生産額の減少が生じる一方、自動車でも、むしろ生産額の減少が生じ、全体で日本のGDP(国内総生 産)は、わずか007%しか増加しない可能性がある。

表1TPP「大筋合意」の日本経済への影響の暫定試算

                   「大筋合意」    全面関税撤廃
GDP増加率               0.069%    0.184%
GDP増加額               0.5兆円    1.3兆円
農林水産生産増加額    ▲1.0兆円    ▲2.1兆円
食品加工生産増加額    ▲1.5兆円    ▲2.1兆円
自動車生産増加額        ▲0.4兆円    2.8兆円

資料:GTAPモデルによる東大鈴木研究室試算。

注 関税、輸入制度、原産地規則等の変更に伴う影響を試算したもの。内閣府が算入した「生産性向上効果」(価格下落と同率で生産性が向上)及び「資本蓄積効 果」(GDP増加と同率で貯蓄が増加)は未考慮(GTAPモデルは国産品に対する輸入品の代替性を低く仮定しているため、関税撤廃の影響は過小評価傾向に なることに留意「大筋合意」内容を暫定的に組み込んだ試算で確定値ではないことに留意。

政府は農林水産業への影響は軽微であるとし、国内対策を少し行えば、国会決議は守られたと言えると主張しているが、内閣府のモデルでも少なくとも1 兆円の損失が見込まれるのを軽微とは言えない。そもそも、政府は、前回、関税撤廃された場合の生産減少額として、鶏肉990億円、鶏卵1,100億円、落 花生100億円、合板・水産物で3,000

億円と示し、これだけでも5000億円を超えていた。今回は、同じ品目が全面的関税撤廃という同じ条件なのに、「影響は軽微」という説明は、まった く説明がつかない。またV現在の輸入先がTPP域外だから関係ないというのは間違いで、関税撤廃で有利になったTPP域内国からの輸入に置き換わる可能性 (貿易転換)があることこそがFIA(自由貿易協定)なのである。
 すべては、「TPPはバラ色」との政府見解に合わせて「影響は軽微」だから、 この程度の国内対策で十分に国会決議は守られた」というための無理やりの説明である。コメについては備蓄での調整のみ(しかも5→3年と短縮)、牛豚肉の 差額補填の法制化と豚肉の政府拠出の牛肉並みへの増加、生クリームを補給金対象にする、などの対策は、牛豚肉の赤字の8割補填から9割に引き上げる点を除 いて、TPP大筋合意のはるか半年以上前に決まっていた。TPPの農産物の日米合意と「再生産可能」と言い張るための国内対策はとっくの昔に準備されてい て、あとは「猿芝居」だったのである。

「踏みとどまった感」を演出した「演技」

 牛肉関税の9%に象徴されるように、今回の主な合意内容は、すでに、昨年4月のオバマ大統領の訪日時に、一部メディアが「秘密合意」として報道 し、一度は合意されたとみられる内容と、ほぼ同じだ。つまり、安倍総理とオバマ大統領は、昨年4月に、実は、寿司屋で「にぎっていた」のである。
  そのわずか2週間前に日豪の合意で、冷凍牛肉関税を38.5%→19.5%と下げて、国会決議違反との批判に対して、19.5%をTPPの日米交渉のレッ ドラインとして踏ん張るからと国民に言い訳しておきながら、舌の根も乾かぬうちに9%にしてしまっていたのであるから、恐れ入る。
 その後は、双 方が熾烈な交渉を展開し、必死に頑張っている演技をして、いよいよ出すべきタイミングを計っていただけの「猿芝居」だったのだ。フロマンさんと甘利さんの 徹夜でフラフラになった演技はすごい。「これだけ厳しい交渉を続けて、ここで踏みとどまったのだから許してくれ」と言い訳するための「猿芝居」を知らずに 将来不安で悩み、廃業も増えた現場の農家の苦しみは、彼らにとってはどうでもいいこと。いかに米国や官邸の指令に従って、国民を騙し、事を成し遂げること で自身の地位を守るのがすべてなのである。
そもそも、3.11の大震災の2週間後に「これでTPPが水面下で進められる」と喜び、「原発の責任回 避に「TPP」と言い、「TPPと似ている韓米FTAを国民に知らせるな」と箝口令をしいた人達の責任は重大だ、このような背信行為に良心の呵責を感じる どころか、首尾よく国民を欺いて事を成し得た達成感に浸っている。すべてがウソとゴマカシで塗り固められている。

「TPPがビジネス・チャンス」のウソ

 日本が、ここまでして合意を装いたかったのはなぜか。アベノミクスの成果が各地の一般国民の生活には実感されないのを覆い隠すため、TPP合意発 表で明るい未来があるかのように見せかけようとした側面もある。しかし、ビジネス拡大のバラ色の世界が広がるかのように喧伝されているが、TPPがチャン スだというのはグローバル企業の経営陣にとっての話で、TPPで国民の仕事を増やし賃金を引き上げることは困難である。冷静に考えれば、ベトナムの賃金が 日本の1/36という下での投資や人の移動の自由化は、日本人の雇用を減らし、賃金を引き下げる。端的に言うと、グローバル企業の利益拡大にはプラスで、 中小企業、人々の雇用、健康、環境にはマイナスなのがTPPだ。

「健康と環境は訴えられない」のウソ

 特許の保護期間の長期化を米国製薬会社が執拗に求めて難航したことに、「人の命よりも巨大企業の経営陣の利益を増やすためのルールを押し付ける」 TPPの本質が露呈している。グローバル企業による健康・環境被害を規制しようとしても損害賠償させられるというISDS条項で「濫訴防止」が担保された というのも疑問だ。タバコ規制は対象外に(カーブアウト)できるが、その他は異議申し立てしても、国際法廷が棄却すればそれまでである。健康や環境よりも 企業利益が優先されるのがTPPだ。

「消費者は利益」のウソ

 消費者の価格低下のメリットが強調されているが、輸入価格低下の多くが流通部門で吸収されて小売価格はあまり下がらない。さらには、日本の税収 40兆円のうち1割程度を占める関税収入の大半を失うことは、その分だけ消費税を上げるなどして税負担を増やす必要があることになり、相殺されてしまうの である。
 さらには、米国などの牛肉・豚肉・乳製品には、日本では認可されていない成長ホルモンなどが使用されており、それが心配だと言っても、国内で生産農家がいなくなってしまったら、選ぶことさえできなくなる。

「食の安全基準は守られる」のウソ

 食品の安全性については、国際的な安全基準(SPS)の順守を規定しているだけだから、日本の安全基準が影響を受けないという政府見解も間違いで ある。米国は日本が科学的根拠に基づかない国際基準以上の厳しい措置を採用しているのを国際基準(SPS)に合わさせると言っている。例えば、「遺伝子組 み換え(GM)でない」という表示が消費者を「誤認」させるとして、「GMが安全でない」という科学的根拠が示せないならやめろと求められ、最終的には、 ISDS条項で提訴され、損害賠償で撤廃に追い込まれることも想定しなくてはならない。
 それらを隠して、「TPPはバラ色」と見せかけ、自身の政治的地位を少しでも長く維持するために、国民を犠牲にしてでも米国政府(その背後のグローバル企業)の意向に沿おうとする行為は容認できない。

米国の要求に応え続ける「底なし沼」

 農産物関税のみならず、政権公約や国会決議で、TPP交渉において守るべき国益とされた食の安全、医療、自動車などの非関税措置についても、軽自 動車の税金15倍、自由診療の拡大、薬価の公定制の見直し、かんぽ生命のがん保険非参入、全国2万戸の郵便局窓口でA社の保険販売、BSE(牛海綿状脳 症)、ポストハーベスト農薬(防かび剤)など食品の安全基準の緩和、ISDSへの賛成など、日本のTPP参加を認めてもらうための米国に対する「入場料」 交渉や参加後の日米平行協議の場で「自主的に」対応し、米国の要求が満たされ、国民に守ると約束した国益の決議は早くから全面的に破綻していた。
  しかも、『TPPとも米国とも関係なく自主的にやったこと」とうそぶきながら、結局、TPP合意の付属文書に、例えば、「両国政府は、①日本郵政の販売網 へのアクセス、②かんぽ生命に対する規制上の監督及び取扱い、③かんぽ生命の透明性等に関してとる措置等につき認識の一致をみた。」などの形で前言がうそ だったこと、国会決議違反を犯したことを平然と認めているのが、なんとも厚顔無恥である。国民を馬鹿にしているとしか言いようがない。
 さらには、米国投資家の追加要求に日本の規制改革会議を通じて対処することも約束されており、TPPの条文でなく、際限なく続く日米2国間協議で、日米巨大企業の経営陣の利益のために国民生活が犠牲になる「アリ地獄」にはまった。

説明責任を果たさずしての批准はあり得ない

 米国では批准が容易でない状況にある。米国議会がTPA(オバマ大統領への交渉権限付与)の承認にあたり、TPPで米国が獲得すべき条件が明記さ れたが、通商政策を統括する上院財政委員会のハッチ委員長(共和党)がTPP合意は「残念ながら嘆かわしいほど不十分だ」と表明し、このままでは議会承認 が難しいことを示唆し、再交渉も匂わせている。
ハッチ氏は巨大製薬会社などから巨額の献金を受け、特に、間、ISDSからタバコ規制が除外できる ことなどを問題視している。次期米国大統領の最有力候補のヒラリー・クリントンさんはじめ、労働者、市民、環境を守る立場から与党民主党はそもそも反対で ある。「巨大企業の経営陣の利益VS市民生活」の構造だが、双方から不満が出ている。米国議会批准のために水面下で日本がさらに譲歩することが懸念される (もうしている模様)。
 農業について、政府は「規模拡大してコストダウンで輸出産業に」との空論をメディアも総動員して展開しているが、その意 味は「既存の農林漁家はつぶれても、全国のごく一部の優良農地だけでいいから、大手企業が自由に参入して儲けられる農業をやればよい」ということだ。しか し、それでは、国民の食料は守れない。食料を守ることは国民一人ひとりの命と環境と国境を守る国家安全保障の要である。米国では農家の「収入―コスト」に 最低限必要な水準を設定し、それを下回ったときには政府による補填が発動される。農林漁家が所得の最低限の目安が持てるような予見可能なシステムを導入 し、農家の投資と増産を促し輸出を振興している。我が国も、農家保護という認識でなく、安全保障費用として国民が応分の負担をする食料戦略を確立すべきで ある。
 TPPに反対してきた人や組織の中にも、目先の自身の保身や組織防衛に傾き、条件闘争に陥る人もいるだろう。しかし、それでは国民は守れ ないし、現場で頑張っている地域の人々や農家に示しがつかない。結局、組織も見放される。現場の人々ともに、強い覚悟を持ち、食と農と暮らしの未来を切り 開いていくために主張し続ける人たちが必要である。
食料のみならず、守るべき国益を規定した政権公約と国会決議と整合するとの根拠を国民に示せない限り、批准手続きを進めることは許されない。

 
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