鳥海山近郷夜話

最近、ちっとも登らなくなった鳥海山。そこでの出来事、出会った人々について書き残しておこうと思います。

古い登山案内

2021年12月08日 | 鳥海山

 仙台鉄道局発行の、おそらく戦前のもの。発行年が書いてありません。東北活版 殿野納 と書いてありますが東北活版は沿革不明です。
 中身は磐梯山、吾妻山、蔵王山、岩手山、恐山、八甲田山、朝日連峰、出羽三山、鳥海山、駒ケ嶽、岩木山の東北の十一の登山案内が書いてあります。

  表を開くと初めに登山に就いての注意として次のようなことが書いてあります。


  登山安内
輕裝を要すること勿論であるが、防寒、防濕の用意を忘れぬこと
健康上疑あるときは一應診疹を受けること
次のやうな攜帶品を忘れぬこと
 イ、普通食糧の外砂糖、キャラメル等醫渴品
 ロ、地圖、手袋、磁石、マッチ、蝋燭、救急藥、替草鞋
水はなるべく飮まぬやうにし、口漱ぎに止めおくこと
飢餓を覺えるときは帶で腹部を締めること
初めから緩步して休息の度を少なくし、元氣に任せて急步しないこと
險惡な天候に遭遇したときは岩陰や樹林中に避難するか、引返すことにし、行動を續けないこと


 いつ頃まででしょうか、運動中はなるべく水を飲まないようにといったのは。また、空腹のときはベルトで腹を締めるとは、なるほど今度からそうしましょうか。

鳥海山についての案内も面白いです。

 蕨岡から駒止、横堂、河原宿、七高山、新山となっています。今は通行禁止となっている行者嶽から新山へ向かう道はいつごろ造られたのでしょうか。この地図の上に書いてある文章を見てみましょう。


鳥海山

俗に出羽富士と呼ばれる格好のい〻山で、山形、秋田の二縣に跨がり、周圍三十餘里、海祓七〇〇〇尺餘に及び、絶頂は噴火口で七髙山と、新山と相對した盆地に、國幣中社大物忌神社が祀られ、山麓の蕨岡と吹浦に口の宮がある。
山は二重式の層狀火山で、金、銀、鐵、マンガン等の金屬鑛物と石油、アスファル卜の非金屬鑛物に富む外、蕨岡口の河原宿には日木唯一の髙山植物園が設けてある。
登山口としては蕨岡口、吹浦口、矢島口と小瀧口の四途あるが、道路もよく、設備も整つてゐるのは蕨岡口と吹浦口で、登山者の多くは 往路を蕨岡口により、吹浦口に下ることにしてゐる。
山開きは五月十二日で、九月二十日には山を閉じるが、好期は八月一杯である。
 □宿 舎
  遊佐、蕨岡 項上、吹浦  象潟、矢島何れも一泊貮圓五拾錢內外。
 □体憩所
  蕨岡口 途中要所々々に笹小屋がある。
  吹浦口には休憩所がない。
  小瀧口には休憩所がないが、飲料水の便がある。
 □案内と強力
  蕨岡口 案内も强力も一日貮圓位(蕨岡で傭ふ)
  吹浦口 同 (吹浦で傭ふ)
 □その他の費用
  頂上本社で初穗料五拾錢を徵される。


 鳥海山に金があったとは知らなかった、石油は湯ノ台で太平洋戦争のころまで採掘されていました。
 高山植物園の話は橋本賢助の鳥海登山案内にも出てきますが、当時の絵葉書にも高山植物園と書いてあるものがあります。また、「登山者の多くは 往路を蕨岡口により、吹浦口に下ることにしてゐる。」となっていますが、明治末の太田宜賢「鳥海山登山案内記」では蕨岡口を登ったものは蕨岡口に下山する、吹浦口に下るものは稀である、となっていますのでいつごろから吹浦口へ降るようになったのか、或は太田宜賢氏の蕨岡ひいきのせいかはわかりません。
 案内、強力、宿泊料とも一日貮圓位となっています。現在宿泊料金は食事込みで一万円ほど。ガイド料は独り一日12,000円くらいでしょうか。相場は変わりないようです。蕨岡口の笹小屋はここでも紹介されています。
 山役料の話半以前も書きましたが、頂上本社でも初穂料は徴収されたようです。お気持ちではいけなかったのでしょうか。登山者が鳥海山の神社で「おいくらでしょうか」ッと尋ねると「お気持ちで結構です」とは以前応えていました。

 ついでながら、ある町のあるお寺、お布施を封筒に入れて住職に差し出すと、住職中身をチラッとみてそのまま畳の上を押し戻してよこすのだそうです。大きいお寺で今はきれいに新築なっています。人呼んで強欲寺。別の寺では○○で儲けて高級外車をを乗り回していますし、その態度も傲岸不遜で有名です。お寺は神社と比べてお金儲けが上手。腕時計を見れば海外製高級腕時計、車は高級車、ただし檀家に行くときは国産の普通車と乗り分けています。おまけにあるお寺ではクリスマスケーキまで買うのですから。
 と、話は脱線しました。

※原本はスキャナーで取り込み、photoshopで加工してから見やすいPDFに変換します。その方がOCRの精度が上がります。OCRは以前「おまかせ読み取りOCR」を使ってみましたが値段なり、精度はあまり宜しくありません。Adobeを使いたいところですが月額で払い続けるのも嫌なので今はWondershare PDFelementなるものを使っています。「おまかせ読み取りOCR」よりはだいぶ正確です。


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