鮎川玲治の閑話休題。

趣味人と書いてオタクと読む鮎川が自分の好きな歴史や軍事やサブカルチャーなどに関してあれこれ下らない事を書き綴ります。

埋もれた軍歌・その19 阜新砿業所之歌

2014-05-21 23:41:43 | 軍歌
お久しぶりの軍歌紹介ですが、今回ご紹介するのは「阜新砿業所之歌」。前回に引き続き社歌系の歌です。題名の「之」が漢字表記なのは出典となった『週報』掲載の広告から原文をそのまま持ってきたものです。
阜新砿業所は満洲炭砿株式会社によって1936(康徳3)年10月、錦州省の阜新に設立された砿業所で、43(康徳10)年には阜新炭砿株式会社として分離独立を果たしています。この歌は「阜新砿業所之歌」という題名からも分かるとおり、分離独立以前のものですね。


阜新砿業所之歌

一、王道照らす遼西に
   楽土の栄光(ひかり)輝きて
  興亞の意気も溌剌と
   砿業都市を築きゆく
  使命は堅き「満洲」の
   われ等ぞ阜新砿業所

二、胡砂吹く丘陵(おか)も嚝原も
   無限の宝庫花ひらく
  雄大見よや露天掘
   伸びゆく事業、その成果
  産業文化の建設は
   われ等のホープ黒ダイヤ

三、新邱(しんきゅう)、阜新、海州と
   緑は萌ゆる新市街
  福祉の施設整ひて
   炭都の威容美(うる)はしき
  五族協和の理想郷
   われ等の矜持(ほこり)茲に見よ

四、「出炭報国」躍進の
   鉄腕強く協力し
  精励克己身を鍛え
   日満親和、永遠(とこしえ)に
  亞細亞の資源打建てむ
   われ等の阜新砿業所



「楽土」や「五族協和の理想郷」、「日満親和」など、当時の満洲国が掲げていたスローガンが歌詞に組み込まれているのが分かります。
また注目したいのは「砿業都市を築きゆく」や、三番の「新邱、阜新、海州と~炭都の威容美はしき」。阜新砿業所や満洲炭砿が単に鉱山開発を行うのみならず、炭鉱を中心とした都市の建設や地域の発展をも担う存在であるということが伺えます。日本の夕張や芦別などがかつて鉱山都市として発達したのと同様のものを感じますね。