鮎川玲治の閑話休題。

趣味人と書いてオタクと読む鮎川が自分の好きな歴史や軍事やサブカルチャーなどに関してあれこれ下らない事を書き綴ります。

蒐集品を晒してみる・その15 日本・韓国暴徒討伐紀念軍杯

2018-06-03 13:30:04 | 蒐集品
 

実に一年近くのブログ放置となってしまいました。
普段Twitterであれこれやっていますが、それでも記事の保管性はあきらかにこちらの方が優れています。まとめたいことはこちらに載せるのがいいとはわかってはいるんですが……

そんなわけで、今回ご紹介するのはこちらの「韓國暴徒討伐紀念」軍杯です。
昨今ヘイトスピーチだのなんだのピリピリしてるところに穏やかじゃねえなぁ!? と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、韓国は韓国でもこちらは「大韓帝国」の方ですのでご安心ください(?)。

大韓帝国は日本が日清戦争で勝利した結果、朝鮮(李氏朝鮮)が冊封体制から離脱したことを受けて1897年に成立した国号です。それまで清の皇帝から朝鮮国王に封じられていたのが自主独立の帝国となったわけですが、日韓議定書や三度にわたる日韓協約締結などによって国家としての実権は次第に日本の手に委ねられていき、ついには1910年の韓国併合条約により大韓帝国はその短い生涯を終えました。ここから1945年まで、朝鮮半島は日本統治時代、いわゆる「日帝強占期」に入ります。

大韓帝国の実態や日本の政治介入についての議論は措くとして、この軍杯は1907年に結ばれた第三次日韓協約に関わるものです。
第三次日韓協約では日本人である韓国統監が大韓帝国の高級官吏の任免に関し一部の権限を有すること、大韓帝国政府の一部官吏に日本人を登用できることなどを定めた他、非公開の取り決めとして一部の陸軍部隊を除いて大韓帝国軍を解体することが盛り込まれました。
これにより大韓帝国各地の軍部隊に解散命令が発令されますが、無論素直に解散する部隊ばかりではありません。様々な地方で命令に従わない大韓帝国軍部隊の蜂起が相次ぎ、いわゆる「義兵闘争」(それ以前のものと区別して後期義兵闘争とも)が発生しました。
(帝国、民国含め)韓国側から見ればそれは確かに「義兵闘争」だったのでしょうが、日本側からすれば軍の暴徒化に他なりません。日本側はこれら「暴徒」の鎮圧を図るために軍を動員し、1907年から1909年にかけて各地で「討伐作戦」が繰り広げられることとなります。

さて、この軍杯には杯面上部に「韓國暴徒討伐紀念」、下部に「歩兵第廿七聯隊」と金文字が書かれています。
歩兵第二十七連隊は北海道旭川に所在した部隊で、1908年5月に大韓帝国での「暴徒鎮圧」のために派遣されています。ですから、この軍杯はその当時に連隊にいた板垣さん(底の部分にある名前なので多分軍杯の発注者でしょう)が、帰還後に関係者に配るかなにかするために作らせたものだと考えられます。

決していい歴史ではないのでしょうが、しかしこんなわずか直径十数センチ程度の杯に日本と朝鮮半島、更には中国までをも結ぶ歴史が詰まっているのだと思うと、なかなか感慨深いものがありますね。

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2 コメント

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Unknown (こちらのツイートについて)
2019-05-30 19:31:15
https://twitter.com/ayukawa_reiji/status/1133743817666916352
あなたはこのツイート内で「申し訳ない、お話の趣旨はわかるがこれだけ言わせてほしい。バットは煙草銘柄のなかでは有名な方では…?」と言っていますが、タバコ吸わない人、ましてや不良でもない高校生は銘柄なんて知りませんよ普通
例えばこのホモビデオの表紙見てこれは何かと問われれば、趣味者でなければホモビデオとかスカトロビデオって答えるでしょう?
ビデオのタイトルだとか、なんて名前の男優だとか言われても知らない人は知らないでしょ?そういうことです。
https://encrypted-tbn0.gstatic.com/images?q=tbn%3AANd9GcTBn4zPhVoegu6ba4zmf-cRSvm7_Vfe3L-pAJRKtnk99dg4UprH
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Unknown (鮎川)
2019-06-02 17:27:26
DMでも承りましたが、一応こちらでも返信させていただくことといたしましょう。
ご意見ありがとうございます。しかしながら、今回の件については「タバコを吸わない人はゴールデンバットを知らない」という論に私はあまり説得力を感じません。
というのは、ゴールデンバットは1906年の発売以来多くの著名人に関わる逸話などがあり、また文芸作品等にも一定以上の頻度で登場していることから、非喫煙者であってもその存在を覚知する機会はあると考えられたためです。
実際のところ、ゴールデンバットの認知度が低いのは、現代の人々がそうしたゴールデンバットの登場するような文芸や逸話に触れる機会が私が期待していたほどには無いという一種の世代間格差、またはカルチャーギャップに由来するものだといえるでしょう。
蛇足ではありますが、セブンスターについては「昔青い鳥文庫でみた」という形で覚知しておられる方がいらっしゃいました。小説を通じて煙草の銘柄を知る、というきっかけが現代においてもあり得ることを示す傍証といえるかもしれません。
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