鮎川玲治の閑話休題。

趣味人と書いてオタクと読む鮎川が自分の好きな歴史や軍事やサブカルチャーなどに関してあれこれ下らない事を書き綴ります。

10式戦車はいらない子なんかじゃありません!

2011-11-19 09:24:35 | 軍事
鮎川が後期に受講している「法学B」の水島朝穂教授のサイトを久々にのぞいてみましたら、『戦車で「動的防衛力」?――北海道から』という記事が追加されていました。内容はリンクからご覧ください。

この記事の中で散々90式戦車は『誕生の瞬間から時代からずれた存在』『時代錯誤の代物』とけちょんけちょんに言われていますが、純軍事的に見れば90式は決して時代錯誤ではないんですね。むしろ90式になって初めて世界標準に追いついたと言ってもいいんです。
というのは、戦後初の国産戦車であり、戦後第一世代(米のM48や英のセンチュリオンなど)に属する61式戦車が就役した当時、世界的には既に戦後第二世代(米のM60や英のチーフテンなど)の戦車が開発され、もしくは配備されはじめていました。
その後日本で戦後第二世代に当たる74式戦車が開発された時期も第二世代としては最も遅い時期にあたります。
で、現在でもこの74式戦車が陸上自衛隊の主力戦車なんですね。一方、米国の主力戦車は結構前から第三世代のM1A1/A2エイブラムスとなっています。
要するに、これまでの戦後日本における戦車開発は常に世界標準から半歩遅れをとっていたわけなんですね。これまでのタイミングの遅れによる溝を一気に埋めたのが、世界最強クラスとも目される90式戦車なんです。

で、さらに水島教授の記事は現在の最新国産戦車である10式戦車にも言及。
なんとここで、水島教授は10式戦車の調達を『直ちに中止すべきである』とのたまうんですね。
理由は「予算がもったいない」「冷戦構造崩壊以降、戦車は抑止力の意味を持たない」から。

………バカジャネーノ?

戦車に限らず、あらゆる兵器というものはその時代の技術と工業力の結晶な訳ですよ。一度調達を打ち切って技術が損なわれてしまえば、それを元の水準にまで戻すと言うのは殆ど不可能と言っていい。
いい例が国産戦闘機の問題です。戦前~戦中は中島飛行機や三菱重工業が一式戦闘機「隼」や零式艦上戦闘機などの主力戦闘機を開発していましたが、敗戦後GHQは日本における航空産業を凍結。それ以降、現在に至るまで日本では純国産の主力戦闘機は作られていません。米国から横槍が入ることもありますが、技術的な断絶も見逃せない問題です。
ことこの手の問題に関して「予算がもったいない」という議論は通用しません。
「法学部出身の人間はたくさんいるから、次に必要になるときまで法学部を廃止します☆」って訳にはいかないでしょう?
研究しなければ技術は錆付くし、作らなければ工業力も錆付くんです。

それに、「今いらないから」といって「将来もいらない」とは誰もいえないんじゃないですか?
それは「今日潰れなかったから明日も潰れないだろう」といってる会社の社長と一緒です。事実認識として、世界平和なんてものへの道は進んでいない。国家間で経済的にであれ政治的にであれ摩擦があれば、それは将来的に軍事的衝突の切欠となり得るんです。
確かに国土防衛のスリム化は必要です。でもそれは平和憲法とか「大根派」論とかそういうどうでもいい見地からではなく、純軍事的な視点から討論されるべき話題ではないでしょうか。

ついでに言うとこの記事に載っている在東独ソ連軍の写真、別にこれ『ヨーロッパにおける国家間の戦車戦の終わりを象徴するもの』でもなんでもないと思いますよ。例えこれが中東戦争後の撤兵でも同じことをやったでしょうし、アフガンやイラクからの撤退でも同じことをやるでしょう。
キャップは取り外せるものだ…ということを、水島教授はもう少し考えてみるべきですな。

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