パレスチナのガザ地区をイスラム原理主義勢力ハマスが支配するかたちになったことで、ヨルダン川西岸地域は比較的穏健なファタハ、ガザ地区はイスラエル敵視政策を堅持するハマスが抑える分断統治の様相になってきました。
反イスラエル・反米傾向が強いハマスはスンニ派ながらシーア派のイランから支援を受けているとかで、アメリカ・イスラエルはこの勢力をガザ地区に封じ込める今の事態を歓迎しているとも伝えられます。
今後はファタハのヨルダン西岸には援助を再開してこれを支援してアメリカ・イスラエルと共存できる穏健な政権を確立し、ガザ地区に関しては援助を抑え、イスラエルの検問も強化して物資の流入を止める“封じ込め”が行われることが予想されます。
ハマスが先の選挙で大勝したのは、対イスラエル姿勢だけでなく、長く実権を握ってきたファタハの腐敗、ハマスの地道な住民福祉サービス(もちろん支持拡大をにらんだものでしょうが)があったと言われています。
しかし、個人的にはやはり“原理主義的”なかたくなさには相容れないものを感じます。
イスラエル・アメリカの存在という現実と“妥協”しない限り、住民が安心して暮らせる状況はつくれないのではないかと単純に思っています。
過去どのような経緯があったにせよ、今更イスラエルという国家を地図から消してしまうことはできませんから。
(政権についたハマスは一時妥協的になったが、これを追い詰めたのはアメリカの策略だという意見もあるみたい。このあたりになってくると藪の中でよくわかりません。)
そんなことでハマスにはあまり共感するものは感じませんが、ガザ地区への援助停止、物資流入制限という封じ込め策は、それが実効をあげるものであればあるだけ、この地区で暮らす住民を苦しめることになります。
すでにガザ地区を出る住民も出始めているようですが、イスラエル軍管理下にあってはそれもままならないのではと推察します。
おそらく事態が急迫すれば、力を持つ勢力が無力な住民から物資を強奪するようなことが地区内部でおきることも想像されます。
非常に乱暴な考えですが、兵糧攻めみたいなかたちで実質的に住民に苦しみをおわせるくらいなら、いっそのこと短期的に武力で支配勢力を一掃するほうがいいのではないかと思ったりもします。
もっとも、そうしたら先月来のレバノンのスンニ派武装組織ファタハ・イスラムがろう城する難民キャンプへのレバノン国軍の攻撃のように、当然ながら住民に多数の死傷者を出すことになるわけで・・・どうしたらいいのやら・・・。
今回の事態はハマスが勝利した先の選挙(ハマスの台頭を警戒して実施を先延ばししたいファタハ政権・イスラエルに対し、アメリカが速やかな実施を要求したとも言われています。)から起因したものですが、民主化と安定が往々にして相反する事例のように思えます。
そのような混乱を経て膿(ファタハ政権の腐敗など)をださないと真の民主化は達成されないと言えばそうなのでしょうが。
イラクといい、パレスチナといい、アメリカの“民主化政策”は多大の混乱を惹起しているようにも見えます。
写真はflickr”より(By Jaume d'Urgell)