写真は“flickr”より(By pingnews.com)
今月17日、アフガニスタンの首都カブールで警察官の乗ったバスをねらった自爆テロがあり、日本人2名もこの巻き添えで負傷したと報道されています。
アフガニスタンではイスラム原理主義のタリバン政権が崩壊して5年半、世界の関心がイラクに向いている中で、昨年からタリバンが復活して南部を中心に戦闘が激しさを増していると言われていましたが、首都カブールでもこのような事件が起きるようになっているようです。
タリバン復活の背景には、隣国パキスタン国内で支援を受けて態勢を立て直していることや、アメリカの意向を受けてケシ栽培撲滅を進めるカルザイ政権が有効な補償策を実施できないため農民が困窮し、この農民をタリバンが支援することで支持を広げていることなどがあげられています。
また、カルザイ政権になってなかなか暮らしが改善しないことへの国民の不満・苛立ちが根底にあると思われます。
更に、戦闘が激化するなかで、米軍・NATOの爆撃などで民間人被害が拡大していることも、民心の離反を招いているようです。
今年3月には軍の車列が自爆テロ攻撃を受けたあと、アメリカ軍の兵士が16kmにわたって道路沿いの車や歩行者を無差別に銃撃し、市民19人が死亡するという事件なども起きているそうです。
“戦争”で極限状態におかれている訳ですから、ときに“無茶苦茶”なことも起きるようです。
(アメリカは謝罪して弔慰金を払ったとか。アフガニスタンやイラクから帰還したアメリカ退役軍人のうち、4分の1が精神的障害と診断されたとの報道もあります。 )
今回のバス自爆テロの中継で、警察当局責任者がTVインタヴューで開口一番「被害者は警察官で、民間人は含まれていません」といったようなことをコメントしていたのに若干奇異な感じを持ったのですが、その背景にはこのような民間人被害の増大、それへの市民の怨嗟ということがあるのかも。
イラクが“泥沼化”しつつあるアメリカ軍は一昨年12月にアフガニスタンでの兵力大幅削減を発表し、カナダ・英国・オランダ、さらにNATOが指揮する国際治安支援部隊ISAF(International Security Assistance Force)が増強されていますが、タリバンとの戦闘は苦戦の様相を呈しているようです。
NATOとはいっても、イラク以来アメリカとは一線を画するフランス・ドイツは比較的穏やかな北部で復興支援にあたるということで、南部での戦闘には極力関わりたくない姿勢を見せています。
そんな南部戦闘地域で苦戦するイギリスでは、国防省が12か月以内にイラク駐留英軍を完全撤退させアフガニスタンへの増派を検討していると伝えられます。
“戦闘的にも苦しく国民の批判も強いイラクはあきらめ、まだ勝ち目のあるアフガニスタンに集中しよう”とのことでしょうか。
アメリカとの共同作戦の“つけ”は重いものがあるようです。
将来日本も気をつけないと。
ただ、イギリスが増派しても事態が改善するかは疑問です。
民心を失いつつあるカルザイ政権、アメリカ・NATO軍の将来は厳しいものに思えます。
かつてのタリバン政権の勧善懲悪省によるイスラム原理主義的・狂信的な締め付けにはどうしても馴染めないものを感じますので、タリバンの復活を喜んでいる訳ではないですが・・・。
戦火のなかで苦しい生活を余儀なくされる国民にとって少しでもよい方向に政情が向かってほしいのですが。
写真は“flickr”より(By pingnews.com)
そう言えば、オマル師は今どうしているのでしょうか。
パキスタン国境付近で活動しているとの説、パキスタン国内で軍に保護されているとの説などがあるようです。
タリバン復活にしても、オマル師の所在にしてもパキスタンが深く関与しているようです。
タリバンはもともとパキスタンが送り込んだ勢力ですから。
そのパキスタンとの国境付近で、5月にアフガニスタン政府軍とパキスタン国軍の間で迫撃砲などを使用した戦闘があったと伝えられています。
パキスタンのムシャラフ大統領は一応アメリカに同調する形で国境付近の過激武装組織を取り締まるとはしていますが、国軍内にはタリバン支援勢力も強く、実効ある手がうてないようです。
アフガニスタンでの戦闘が更に拡大・激化して、反米的な風潮が国内で強まるとムシャラフ政権自体の命運にもかかわってくるかもしれません。
イラクは泥沼化し、アフガニスタンでは戦闘が拡大・・・アメリカの9.11以降の軍事政策は手詰まり感が強くなっています。