
(ルワンダの首都キガリの児童 手にしているのはOLPC(One Laptop per Child)の“100ドルパソコン” “flickr”より By One Laptop per Child
http://www.flickr.com/photos/olpc/2946278209/in/set-72157608077722142/)
【トンネルの向こうに光が・・・しかし世界不況の大波が】
まだ金融危機が表面化していなかった今年5月、横浜にアフリカの首脳を招いて第4回アフリカ開発会議(TICAD)が開催されました。
会議で、エチオピアのゼナウィ首相が「いまトンネルの向こうに光が見えたところ。あと十数年、この成長が続けば、アフリカは成功したといえる」と語ったそうです。
****金融危機とアフリカ 光を消してはならない=西川恵****
ここ数年、アフリカは平均経済成長率が6%を記録し、一部の例外はあるものの、全般的には平和構築とグッド・ガバナンス(よき統治)の努力が徐々に実を結びつつあった。エチオピア、タンザニアなどはその模範で、ゼナウィ首相の発言もそうした実績を踏まえてのことだ。(中略)
しかしその後勃発(ぼっぱつ)した世界的な経済・金融危機は、アフリカにもボディーブローのように効いている。資源価格が急落し、輸出が落ち込み始めた。海外からの送金が細くなった。欧米企業の工場建設が延期された。欧州で働くための労働ビザが出なくなった。資金調達コストが急騰している--など、アフリカのニュースが目に付く。
特にアフリカの場合は米欧の金融機関と密接な取引関係にある。アジアの金融機関に危機が直接は及ばなかったのと異なり、大きく傷ついた米欧の金融機関にアフリカを顧みる余裕はない。危機は、離陸に向けて助走を始めたアフリカの国々の努力を中折れさせ兼ねないのだ。(後略)【12月20日 毎日】
********************
アフリカ関連のニュースはどうしても内戦・飢餓・貧困・災害などに関するものが多く、“グッド・ガバナンス(よき統治)の努力が徐々に実を結びつつあった”というのは少し意外な感じもします。
いずれにせよ、今回の世界的不況が弱い立場にあるアフリカの途上国に深刻な打撃をあたえるであろうことは非常に懸念されます。
【ルワンダ “グッド・ガバナンス”】
そんなアフリカでも最悪のジェノサイドを経験したルワンダについて、“グッド・ガバナンス”を思わせる記事がありました。
少し長い記事ですが、非常に印象的なのでそのまま引用します。
****ルワンダのきらめき:虐殺を超えて/上 「心を一つに」 大統領も清掃活動****
◇国の再生誓い
朝もやに煙る緑の丘が美しい。空気がきらめいているようだ。このすがすがしさは、車の排ガスや騒音がないせいでもある。
毎月末土曜日の午前、アフリカ中部ルワンダ全土で車が路上から姿を消す。「ウムガンダ」と呼ばれる政府主導の清掃などの奉仕活動が実施されるためだ。「大統領も掃除をする。今、ルワンダは心を一つにしなければならない」。首都キガリの石畳の道で、溝を丹念に掃除するボナバンチュール・ムバウェヨさん(30)は言う。
94年の大虐殺直後、街は遺体であふれた。野良犬がうろつき、異常な数の鳥が空を覆った。「虐殺の記憶を清算すると同時に、決して忘れないとのメッセージが奉仕活動に込められている」
キガリではビルの建設ラッシュが続く。03年に当選したカガメ大統領の指導下、年5%以上の経済成長を達成してきた。コーヒーや紅茶の輸出が主要産業だが、情報産業立国を目指す。実用的な電子政府を導入。小国を逆手にとり、周辺国の中継地としての可能性を見いだしつつある。04年以降、海外からの投資促進にも力を注ぐ。
「即」「15分」「30分」。政府の許認可書類には、役人が順守すべき「対応スピード」が記されている。営業免許や会社登録などは無料。官僚主義がはびこるアフリカでは異例だ。外務協力省幹部は「知恵を絞り、再建を模索してきた。それを農業生産で培われた勤勉な国民性が支えている」と胸を張る。
「大統領自ら車を運転する姿も珍しいことではない」とキガリのタクシー運転手は話す。清廉さもルワンダをきらめかせる。閣僚、次官級を除き公用車を原則廃止。援助国の車の供与も停止した。エレベーターのない省庁もあるが「(その整備より)他に優先すべき課題は山のようだ」と職員は階段を駆け上がった。07年には世銀が「世界ガバナンス指標」の汚職対策分野で中・東部アフリカでトップの評価をした。
今年2月、ブッシュ米大統領はアフリカ訪問国5カ国の一つにルワンダを選び、投資を進める2国間協定を締結した。ベルギーの信託統治領だった経緯から仏語圏諸国の影響が強かったが、キガリでは、米資本の飲食店なども目立ち始めた。
奉仕の日、郊外では植林も実施されていた。カラリサさん(40)は軽やかに語る。「この国には『規律』という美徳がある。大虐殺ではそれが間違った方向に働いた」
◇
ジェノサイドから来年で15年を迎えるルワンダの今を報告する。【キガリで高尾具成】【12月26日 毎日】
**********************
ルワンダの悲劇について書かれた「ジェノサイドの丘」(フィリップ・ゴーリヴィッチ著)を以前読んだことがあります。
その本に記された、当時の反政府組織のリーダー、現在の大統領カガメの人物像はとても傑出したものです。
公正で、規律を重んじ、理性的で、決断力に富み・・・まさに“理想のリーダー”を思わせるものでした。
あまりに理想的すぎて、相当に著者の思い入れが入り込んでいるのだろう・・・とは感じましたが、話半分にしても、日本にもこんな政治家が欲しいものだと思ったことがあります。
上記の記事を読むと、あながち“思い入れ”だけでもないようです。
“「即」「15分」「30分」。政府の許認可書類には、役人が順守すべき「対応スピード」が記されている。”・・・信じられないことです。あのアフリカで・・・・。
時間とか効率という面では世界でもトップクラスではないかと自負する日本ですが、それでも“お役所仕事”にはうんざりすることもあります。
やはり、カガメ大統領はすごい人物なのかも。
【シエラレオネ 相変わらずのTIA】
一方で、“ああ、やっぱりアフリカは・・・”と思わせる記事もあります。
シエラレオネはかつて内戦に苦しみ、産出するダイヤモンドがその資金として利用され“ブラッド・ダイヤモンド”(紛争ダイヤモンド、血塗られたダイヤモンド)とも呼ばれていました。
(参照 08年6月26日ブログ http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080626
07年8月15日ブログ http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20070815)
そんな内戦も終わって平和が訪れたはずですが・・・
****学費を稼ぐためにダイヤモンド鉱山で働く子どもたち、シエラレオネ****
シエラレオネ東部コイドゥの違法なダイヤモンド鉱山で、ガードマンたちが目を光らせるなか、子どもたちが自分の学費や家族の食費を稼ぐために働いている。
子どもたちは毎日、数キロ離れた学校に通い、学校が終わると、焼け付く太陽のもとで採掘に励む。10歳足らずの子どもの姿もある。鉱山のセネガル人オーナーは、「俺たちはあの子たちに賃金を払い、子どもたちは生活のために働く。フェアな取り引きだろ?」と悪びれる様子もない。(中略)
政府は、こうした鉱山で働く未成年者を600人程度と見積もっているが、実際はその3倍にのぼるとの指摘もある。(中略)
鉱山では、子どもたちがダイヤを隠したり飲み込んだりすることのないよう、ガードマンたちが見張っている。子どもが見つけたダイヤは、ガードマンたちがただちに回収するという。
同国では児童労働は違法だが、法律は整備されておらず、取り締まる側の警察もわいろを受け取っているケースが多い。(後略)【12月26日 AFP】
*******************
ここにはまだ“グッド・ガバナンス”の恩恵が及んでいないようです。
08年6月26日ブログでも取り上げたディカプリオ主演の映画“ブラッド・ダイヤモンド”に関して、シエラレオネ政府が国内での上映禁止を望んでいるとの記事がありました。
“シエラレオネ投資輸出振興庁のアデヨルミ・サンディー長官は8月21日AFPに対し、「この映画はシエラレオネの悪いイメージを世界に発信している」との見方を示し、同庁は政府と関連機関にブラッド・ダイヤモンドの即時禁止措置を取るよう求めていることを明らかにした。”【8月24日 AFP】
実態とは異なる“悪いイメージ”ということであれば、長官の思いもわからないではありませんが、どうも実態が未だ“悪いイメージ”とさほど変わっていないのでは・・・とも思われます。
ルワンダもシエラレオネも、TIA(This is Africa)でしょうか。