(カンボジアの象徴、と言うより、世界有数の文化遺産 アンコールワット “flickr”より By fedeil
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【外国企業の農地囲い込み】
昨年は世界的食糧価格高騰が多くの国々に深刻な影響・不安を与えましたが、将来的に食糧確保が各国の重要な国家戦略となってきています。
そうしたなかで、貧しい途上国の土地を日本を含む先進国・新興国企業が先を争って大規模に借り上げ、自国向けなどの農業生産を行う、農地・食糧の囲い込みの動きも顕著になっています。
****貧困国から奪われてゆく土地、背景に食糧危機や景気後退など****
資源の乏しい国々が、アジアの貧困国の広大な農地をわれ先に買っていく。活動家らはこれを「土地の収奪」と呼び、貧困と栄養不良がさらに悪化しかねないと注意深く見守っている。
食糧を輸入に頼っている国々は、原油・食糧価格の高騰、バイオ燃料ブーム、そして急激な景気減速の中、自国民の食糧を確保するための対策に追われている。中でも、耕作地が不足している中国と韓国、オイルマネーで懐が豊かな中東諸国が、アジア・アフリカの農地の権利取得に向けた動きをけん引している。
スペインに本部を置く農業権利団体「Grain」は、最近の報告書で、「今日の食糧および金融の危機が世界規模の新しい土地収奪を招いている」と指摘した。
同団体によると、こうして確保された農地の目的は、主に「本国の食糧安全保障を念頭に、本国で消費するための作物を栽培するため」と「ヤシ油やゴムなど、経済的利益を得るためのプランテーションを設立するため」の2つに分かれるという。
「こうした傾向により、世界で最も厳しい貧困と飢餓に見舞われている国々の肥沃な農地が急速に外国企業により統合・私物化されている」と、同団体は警鐘を鳴らしている。
韓国の物流企業・大宇ロジスティクスは前年11月、マダガスカルに、約60億ドル(約5400億円)を投資してベルギーの国土の約半分に相当する130万ヘクタールの農地を開発すると発表した。トウモロコシを年間400万トン、パーム油を年間50万トン生産し、その大半を輸出する計画だ。マダガスカルは現在でも世界食糧計画(WFP)から食糧援助を受けている。
■腐敗政府との契約で農民を苦況に
タイ・バンコクに本部を置くNGO、フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウスのウォルデン・ベロ氏は、昨今の世界的な経済危機にあっても、土地を持たない農民を一層の苦境に陥れる可能性のある、1つの「傾向」は脈々と続いていると指摘する。
その傾向とは、腐敗した政府と土地に飢えた先進国が、農地契約の名のもとで私腹を肥やしているという事実だ。実際、契約の多くは、汚職が横行、または政府が機能不全に陥っているような国々で結ばれている。
クウェートは前年8月、カンボジアに対し、穀物生産の見返りとして、5億4600万ドル(約500億円)の借款供与に合意した。カンボジア政府はカタール、韓国、フィリピン、インドネシアとも同様の契約を結ぶ準備を進めているという。
だが、カンボジアのある野党議員は、クウェートのような裕福な国が、コメを輸入するのではなく、わざわざ他国の土地で栽培するという選択肢をとっていることに疑問を呈する。
この議員は、「カンボジアの農民たちは土地を必要としている」と主張。政府に対し、外国に貸与する土地に制限を設けるべきだと訴えている。【1月11日 AFP】
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外国資本による農業生産が、食糧不足に苦しむ現地途上国の食糧事情緩和、技術移転、雇用創出などに貢献するのであれば意義のあることですが、上記記事の指摘するような「土地の収奪」にすぎないのであれば、形を変えた植民地支配とも言えるでしょう。
進出する側は、食糧確保・食糧安全保障という視点だけではない、広い視野が求まれます。
【日本 特別法廷に追加拠出】
上記記事で目にとまったのは、“腐敗した政府と土地に飢えた先進国が、農地契約の名のもとで私腹を肥やしている”という例として、カンボジアがあげられていることでした。
カンボジアが“腐敗した政府”かどうかはさておき、もうひとつカンボジアがらみのお金の話題を目にしました。
カンボジア特別法廷への日本からの資金提供の件です。
****ポト派法廷に24億円拠出 中曽根外相が表明*****
中曽根弘文外相は11日、カンボジアの首都プノンペンでフン・セン首相と会談し、予算不足が深刻化しているポル・ポト政権元幹部を裁く国連支援の特別法廷に、約23億8000万円を追加拠出することを表明した。中曽根外相は「(容疑者の)高齢化などの問題があり、迅速な裁判を期待する」と述べた。フン・セン首相は「支援に感謝する。国民和解のために特別法廷は重要だ」と応じた。【1月11日 共同】
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知識人の殺害や強制労働で170万人とも200万人とも言われる自国カンボジア国民を死亡させたポル・ポト政権の元幹部を裁く特別法廷は、99年のアナン国連事務総長(当時)の勧告を受け、カンボジア政府と国連の交渉で03年に設置が合意されました。
その後、法廷運営費や裁判規則を巡る調整に手間取りましたが、06年5月に日本の野口元郎元東京地検検事を含む国際司法官12人とカンボジア人判事17人が選出され、7月に捜査を開始し、元幹部5名を拘束しました。
特別法廷は国連が運営予算の4分の3にあたる4300万ドルを拠出し、日本は国連負担の半額を支援しています。
しかし、その後の審議ははかどらず、老齢化し健康悪化が心配される元幹部を実際に法廷で裁くことができるのか危ぶまれる事態となっています。
カンボジア側が法廷の長期化に伴う資金不足を訴えており、昨年2月には、日本など支援国に対し、約1億1400万ドル(約123億円)の追加予算拠出を要請しています。
審議の方は、昨年秋にも開始する予定でしたが、再び遅延し、2月開廷を提案する方向で最終調整がされています。
初公判の日程を決める会議が今年1月中旬までに開かれることになっていると昨年段階では報じられていましたが・・・。
【国際政治の闇】
ポル・ポト政権の崩壊から7日で30年がたった今月7日には、首都プノンペンの国立競技場では記念式典が開かれ、フン・セン首相ら政府関係者や一般国民ら約5万人が出席しました。
“最大与党カンボジア人民党党首のチア・シム上院議長は「ポト派の犯罪などで国は消滅しかけた。30年たった今も後遺症に苦しむ国民は多い」と語った。会場には、ポト派幹部らの戦争犯罪を裁くために国連と共同で06年に設置した特別法廷への国民支持を訴える段幕も掲げられた。”【1月7日 朝日】
しかし、以前もこのブログで触れたように、フン・セン首相自身がかつてはポル・ポト率いるクメール・ルージュに身をおいていましたから、自身の古傷を暴くような法廷には消極的だとも言われています。
先の総選挙で圧倒的勝利を得て、国内に敵なしのフン・セン首相が今後どこまで本気で法廷を運営するのか・・・若干疑問もあるところです。
日本など資金提供国から金を引き出す手段に使われているのでは・・・との疑念も感じます。
もっとも、金を出すほうもそれは承知のうえで、なにがしらかのメリットを期待して出すのでしょう。
そのあたりになると、部外者には窺い知れぬ闇の世界です。