孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  米ロの対話路線の一方で、疑念と存在感誇示

2009-08-06 20:09:05 | 国際情勢

(そのうち、こんな写真を目にすることになるかも・・・。
“flickr”より By azrainman
http://www.flickr.com/photos/azrainman/1322308374/)

【「タフガイ」プーチン】
最近ロシア関連で目につくニュースというと、「タフガイ」プーチンの話題。
ロシア・プーチン首相、バイカル湖を深海潜水艇で4時間ほど潜航したかと思うと、南シベリアの草原を上半身裸の姿で乗馬したり、急流をラフティングしたり・・・と“大活躍”。
「休暇」だそうですが、ムキムキの筋肉美の写真が配信されるということは、ロシアでウケがいい「タフガイ」のイメージを強化することを狙ったものだそうです。

****プーチン露首相、今度はシベリアで「タフガイ」全開****
ロシアのウラジーミル・プーチン首相は3日、南シベリアのトゥバ地方で「タフな」休暇を過ごした。
前月31日に深海潜水艇で世界最深の湖底まで潜水したばかりのプーチン首相。
今回は辺境の地を訪れてキャンプし、急流でのラフティングを楽しんだ。また、インディアナ・ジョーンズさながらの帽子をかぶって草原をかっ歩。木によじ登って辺りを眺め回す姿は、この地方に生息する絶滅危惧(きぐ)種のユキヒョウを彷彿とさせた。
各報道機関はこれを「休暇」と表現しているが、同国でウケがいい「タフガイ」のイメージを強化することを狙ったものであることは間違いない。【8月5日 AFP】
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プーチン首相の「マッチョ写真」は、2年ほど前から定期的にメディアに公開されるようになり、女性の支持率アップに貢献しているとも。【8月6日 朝日】
よくよく自己顕示欲が強いのか、大統領の座にいないことが不安で自己アピールしたがるのか、単にヒマなのか・・・。
今回「休暇」では、現地で知り合った羊飼いの家に招待され、そのお礼として羊飼いの息子に自分が身につけていた100万円とも300万円とも言われる高価な腕時計をプレゼントしたというエピソードも伝えられているそうです。【同上】

【米ロ対話路線】
プーチン首相のマッチョぶりはともかく、ロシアとアメリカの関係は「対話」路線が継続しているようです。

アメリカ・バイデン副大統領が7月25日に米紙との会見で「ロシア人は苦しい現状に向き合わざるをえない。人口は減少し、経済は低迷し、銀行制度は今後15年間もちこたえられそうにない。世界は目の前で変化しているのに、彼らは続くはずのない過去の栄光にしがみついている。」と、驚くほど“率直な”本音を明らかにして、ロシアの怒りをかった“事件”がありました。
ロシアが第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継条約の締結に同意したことについても、財政的な問題に直面し、核兵器の維持が困難になっているからだとの見方を示したそうです。【7月29日 毎日】

上院議員時代に外交委員長を務めていたバイデン副大統領は、率直な発言で知られているそうですが、ことさらにロシア怒らせる意図があったのでなければ、アメリカ副大統領という立場を考えると、“率直”というよりは“どうしたこんなことを・・・”と思わせる発言です。

ただ、実際問題としてはバイデン副大統領の指摘はロシアの現状を言い当てているところもあります。
そうした事情もあって対話路線は継続されているようで、4日には米ロ大統領の電話会談で核軍縮交渉および再び緊張を高めているグルジア情勢などについて協議されています。

****核軍縮交渉加速で一致=グルジア情勢も協議-米ロ大統領****
ロシア大統領府によると、メドベージェフ大統領は4日、オバマ米大統領と電話会談し、12月に期限が切れる第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継条約の交渉を加速するよう担当者に指示することで一致した。
両大統領はまた、7月のオバマ大統領訪ロの際に設置に合意した大統領委員会について、早期開催の必要性を確認した。
同委員会は米ロの幅広い協力関係を深めるのが目的。ラブロフ・ロシア外相とともに調整役を務めるクリントン米国務長官が今秋訪ロする予定になっている。
ホワイトハウスによれば、両首脳はグルジアにおける緊張緩和の必要性についても協議。オバマ大統領は、国際監視団の駐留が重要だとの考えを伝えたという。【8月5日 時事】
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【ロシアの疑念】
一応米ロの「対話」ムードは継続していますが、ロシアには不安・疑念もあるとか。
“ロシアは防衛兵器や長距離通常兵器の分野で米国に大きく先を越された。核兵器の削減だけが進めば、米国との戦力の均衡が大きく崩れると警戒する。核だけが「戦略兵器」だった時代は終わろうとしている。「核兵器のない世界」になれば、結局は米国の軍事的優位が確立するだけではないのか。今は世界的な「オバマ熱」に逆らえないが、その裏にある米国の新戦略は何なのか。ロシアの疑念はそこにある。
北朝鮮、イランの核開発など「核兵器のない世界」へ向け克服すべき課題は多いが、大きな障害の一つはロシアの対米感情ではないだろうか。極めて良好に見えても条件次第で一気に冷却化する。それは米露が繰り返してきた歴史でもある。1年前の紛争から米露の対立が解けていないグルジア情勢などが新たな導火線になる可能性もある。”【7月13日 毎日】

特にロシアがこだわっているのが、東欧へのミサイル防衛(MD)システム配備の問題です。
先月サミットでも、ロシアのメドベージェフ大統領は、「核兵器のない世界」を目指す方針が盛り込まれたことについて「良いアイデアであり、ロシアも含めすべての参加国が支持した」と評価する一方、前進のためにはアメリカが東欧へのミサイル防衛(MD)システム配備を見直す必要があることを改めて強調しています。

“メドベージェフ大統領は、MD問題について「ロシアの立場は以前と変わらない」と表明。東欧へのMD配備がイランからの脅威を防ぐ保障がないこと、ポーランドに配備される予定のMD関連施設が「(米国が)問題にしている国以上に、ロシアの領域をコントロールすることになる」ことを指摘した。そのうえで、米国が計画を見直さなければ「その結果は明らかだ」と述べ、対抗手段を取る可能性を示唆した。ただ、米国による見直しの期限は「わからない」と述べるにとどめた。”【7月10日 毎日】

MD問題に関しては、アメリカが進めるミサイル防衛(MD)計画への有効な対抗手段と位置づけられている最新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「ブラバ」の発射実験を7月15日ロシア海軍が行いましたが、失敗に終わっています。
これにより、目指していた年内の生産開始と配備は絶望的となったと報じられています。

【「強いロシア」】
一方で、こんなニュースも。
****アメリカ東海岸沖にロシア原潜…遠征能力回復か******
米国防総省高官は5日、CNNテレビなど複数の米メディアに対し、ロシアのアクラ級攻撃型原子力潜水艦2隻が約10年ぶりに、米東海岸沖の公海上を航行していることを明らかにした。
ロシア海軍は冷戦終結後、予算不足などから作戦行動能力が極端に低下し、艦船を米東海岸まで接近させることが長らく困難になっていた。今回の動きは遠征能力の回復を示すものとして注目される。
国防総省のモレル報道官は5日の記者会見で、原潜航行の事実を認めた上で、「公海での活動で懸念はない」と強調した。ただ、ロシア空軍は2007年から北極海などで戦略爆撃機による常時警戒飛行を15年ぶりに再開させるなど、冷戦時代を想起させる行動を繰り返している。【8月6日 読売】
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米中新時代、「G2」・・・といった国際情勢で、やや影が薄くなった感もあるロシアですが、プーチン首相のタフガイぶり同様、アメリカに次ぐ「核クラブ」メンバーとしての「強いロシア」の存在を世界を誇示したい思いも強いようです。

コメント
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