孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

台湾台風被害支援、金大中元大統領死去弔問に見る東アジア情勢の“変化”

2009-08-19 22:28:54 | 国際情勢

(韓国・光州KDJセンターの展示写真のようです。 金大中元大統領は00年6月、韓国大統領として初めて訪朝し、平壌で金正日総書記と会談して南北共同宣言に署名。00年12月には民主化運動と南北和解への貢献が評価され、韓国人として初のノーベル賞(平和賞)を受賞しています。
それにしても、ふたりとも元気そうです。“flickr”より By jeroen020
http://www.flickr.com/photos/jeroen020/1934615173/in/set-72157602802301670/ )

【「ウエルカム・トゥ・タイワン」】
自然災害や人の死は不幸な悲劇ですが、ときにそれは格好の外交の場ともなります。
台湾の台風被害をめぐるアメリカと中国の援助・復興支援、韓国元大統領の金大中氏死去への北朝鮮の弔問団派遣などはその例でしょう。
中台関係、朝鮮半島情勢がともに東アジア情勢の核になるだけに、その影響が注目されます。

****台湾台風被害救援・復興支援が本格化 競う米中、遅れる日本*****
台湾史上最大の台風災害を機に、米中の救援・復興支援が本格化している。米国が1979年の米台断交以来初の軍用機による救援に踏み切った16日、中国も遅れまいとばかりに軍用ヘリコプター派遣を含む全面支援の意向を表明した。台湾の将来をめぐる米中の勢力争いを反映した動きといえるが、10年前の台湾中部大地震で先行した日本の出遅れが目立つのが気がかりだ。
 
「ウエルカム・トゥ・タイワン 米軍が支援にやってきた」(台湾紙「蘋果日報」)。17日付の台湾各紙は一斉に1面トップで米軍輸送機C130の到来を大々的に報じた。
同機は16日午後3時(日本時間同4時)前、沖縄県米軍普天間飛行場から台南の台湾空軍基地に防水用プラスチックシートなどの救援物資を携え到着。40分前後かけ物資を降ろした後、帰還した。
米国は99年9月21日の台湾中部大地震の際に民用機による支援を行ったことがある。しかし軍用機を使ったのは断交後初めてで、17日には第二陣が到着した。さらに船で運ばれた重量物輸送ヘリコプターCH53と多目的ヘリコプターSH60(各2機)も近海に到着、18日から山間部を中心に救援活動に入る。

台風の救援・復興支援とはいえ、米軍が台湾本土で活動することに中国が心穏やかであるはずもない。
中国国務院(中央政府)台湾弁公室の楊毅・新聞(報道)局長は16日、台湾メディアに対し「重量物輸送ヘリコプターを含め、台湾が必要とするあらゆる支援をする用意がある」と言明。17日には仮設住宅(1千戸分)の資、機材を深セン市塩田港から送り出した。台湾政府が中国の軍用機による支援を受け入れる可能性は低いが、10年前の台湾中部大地震では中国のすべての援助を断っただけに大きな変化だ。

台湾外交部によると、イスラエル(浄水機)、シンガポール(救援医療品)、オーストラリア(水消毒剤)などの援助が決まった。諸外国の支援が台風通過(9日)後1週間もして本格化したのは、台湾側の内部混乱で支援要請が遅れたためだ。
日本はすでに交流協会が1千万円の緊急支援を発表した後、17日に急遽、支援の上限を1億円に拡大したものの、出遅れ感は否めない。台湾中部大地震で日本は、世界に先駆け救援隊の派遣や仮設住宅(1500戸)提供などの支援を行っている。【8月18日 産経】
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中台衝突のような事態になった場合、アメリカがどこまで台湾支援を行うのかは、中国との関係もあって表立っては意図的に曖昧にされていますが、米台断交後も武器輸出などでアメリカが台湾を支援している現実からすると、米軍機の台湾上陸が断交後ははじめてというのは意外でした。

【「世界各地で人道支援は行われている」】
台湾メディアによると、「米国が事前に打診し、中国も人道支援のため反対しなかった」とのことです。
中国の国防部(国防省)は、米軍の台湾入りに「世界各地で人道支援は行われている」と述べ、特別視していない旨を表しているとか。【8月17日 毎日】
内心はともかく、少なくとも表面上はこうした対応がとられるというのは、米中関係の変化のひとつに思えます。

中台接近という形で、米中関係以上に変化しているのが中台関係です。
当然、中国はこの機会にその存在をアピールしたいところでしょう。
さすがに中国からの軍用へリコプターの提供申し出については、台湾側は防衛面なども考慮して断ったそうですが、仮設住宅100戸のほか、毛布1万枚、寝袋1万個など支援第1弾がすでに到着しています。

【「今や台湾の敵は海峡の対岸ではない」】
台湾が中国の支援物資を受け入れたのは初めてで、“中国は1999年の台湾中部地震の際にも支援を申し入れたが、当時の李登輝政権はすべての支援を断った経緯がある。対照的に馬英九総統は18日の記者会見で「今や台湾の敵は自然災害であり、必ずしも海峡の対岸(中国)ではない」と踏み込んだ。”【8月18日 時事】とのこと。
中台関係、米中関係の変化で、日本がその中に位置する東アジアの構図は大きく変化しつつあります。

【哀悼の意 弔問団】
一方、北朝鮮の金正日総書記は、金大中韓国元大統領の遺族に哀悼の意を表明したことを明らかにし、元大統領の葬儀に弔問団を派遣することが発表されています。

****北朝鮮総書記が元韓国大統領遺族に哀悼の意、関係改善への兆候か*****
北朝鮮は19日、金正日総書記が18日死去した金大中元韓国大統領の遺族に哀悼の意を表明したことを明らかにした。両国間の関係改善に向けた兆候とみられている。(中略)
KCNAの報道によると、メッセージの中で金総書記は「残念ながら金大中元大統領は亡くなったが、国民の和解や再統一への希望実現に向けて彼が成し遂げた功績は国民の中に長く生き続けるだろう」と述べた。
アナリストは、元大統領の死は、李明博政権誕生以来悪化している南北関係の改善に寄与する可能性があるとみている。(中略)
北朝鮮は今週始まった米韓共同軍事演習を非難したが、好戦的なトーンは以前ほど強くなかった。【8月19日 ロイター】
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****北朝鮮が弔問団派遣、金大中氏死去で******
北朝鮮は19日、韓国の金大中元大統領の葬儀に弔問団を派遣すると発表した。過去数か月にわたって敵対的な対応をしていた北朝鮮が融和的なアプローチをみせた。
韓国統一省は、北朝鮮弔問団の訪問に向けて調整を進めると述べた。北朝鮮からの訪問団は2007年以来初めて。
弔問団の派遣は、北朝鮮の金正日総書記が提案したという。金総書記と金大中氏は、2000年に初めての南北会談を実現した。(中略)
北朝鮮側は、弔問団の滞在期間について1日間を予定しているが、必要であれば滞在を延長すると述べた。また、特別機で韓国に直接向かうという。【8月19日 AFP】
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朝鮮半島情勢も、先のクリントン元大統領の訪朝と合わせて、米朝関係、南北関係に変化があるのでしょうか。

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