(新潟県の柏崎刈羽原子力発電所 7基の原子炉が発生する合計出力は821万2千キロワットで、世界最大規模の原子力発電所です “flickr”より By WillJL
http://www.flickr.com/photos/willjl/3767837525/)
【「原子力ルネサンス」】
近年、世界の各国で原子力発電に関する再評価が行われ、新たな建設、凍結されていた計画の再開が進んでいます。いわゆる「原子力ルネサンス」の動きです。
この背景には、地球温暖化への現実的な解法として原発の利用が選択肢に上がってきたことがあります。
また、価格高騰リスクを抱える石油エネルギーからの脱却という意向もあります。
更に、欧州などでは、ロシアの天然ガスへの依存からの脱却という面もあります。
特に、“温暖化対策”が錦の御旗になっている今日では、日本など国際社会は原子力発電を積極的に拡大しようとの方針です。
****原発は温暖化対策に有効=日本など四十数カ国合意****
多国間の原子力協力体制「国際原子力エネルギーパートナーシップ」(GNEP)の第3回執行委員会会合が23日、北京で開かれ、原発など原子力エネルギーの平和利用が地球温暖化問題で有効な対策だとの考えを確立するため、国際社会に積極的に働き掛ける方針などで一致した。
会合には日本、米国、中国、フランスなど四十数カ国と国際原子力機関(IAEA)の代表らが出席。GNEPの活動を効果的に進めるため、IAEAなど国際機関との協力関係を強化することや、原子力エネルギーを安全保障や核不拡散を損なわない形で、国際社会に幅広く普及する方策を検討することでも合意した。【10月24日 時事】
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ここ半月だけでも、ドイツ・メルケル首相の「原発延命」表明、イラクの原子力開発の意向、ベトナムでの原発建設計画決定などのニュースが相次いでいます。
****改めて原発延命を表明 独・メルケル首相所信表明*****
9月の総選挙で勝利し、11年ぶりに樹立した中道右派の連立政権を率いるドイツのメルケル首相は10日、連邦議会(下院)で就任後初の所信表明演説を行い、改めて「原発延命」を表明。脱原発からの方針転換を印象づけた。
首相は、風力など再生可能エネルギーへの転換を進める間の「つなぎ技術」として、原発の操業を延長させることを断言。野党からは厳しい批判の声を受けた。【11月11日 朝日】
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****平和的核開発の意向=フセイン政権時代の決議解除を-イラク高官****
イラクのファハミ科学技術相は16日までに、AFP通信のインタビューで、エネルギー開発のための平和的な核開発を進める意向を表明した。また、国際社会に対して、旧フセイン政権時代の1991年に採択された核関連活動を禁止した国連安保理決議の解除を求めた。
同相は「われわれの核戦略は原子力エネルギーの民生的な利用であり、こうした権利を持っていると信じる」と語った。原子力発電所の建設で政治的決定は下されていないが、実現に向け、エネルギー部門の職員を国際原子力機関(IAEA)で訓練させる計画に着手したという。【11月16日 時事】
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****ベトナム国会、原発建設を決定 東南アジア初*****
ベトナム国会は25日、原子力発電所の事前の事業化調査結果を承認し、同国での原発建設を正式に決めた。2020年に運転開始の予定で、完成すれば東南アジア初の原発となる。同政府は年末以降に事業化調査を海外企業に発注すると見られ、日本やフランスなどの企業が契約獲得競争に乗り出している。
経済発展を続けるベトナムでは、電力の確保が深刻な課題になっており、同政府の計画では、南部のニントゥアン省の2カ所に4基の原子炉を建設する。50年までに総発電量の2割を原発で賄う方針だ。東南アジアでは、インドネシアやタイなども原発建設の可能性を探っているが、建設予定地の住民などによる反対運動もあり、実現のめどはたっていない。【11月25日 朝日】
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東南アジアの動きとしては、上記記事にもあるように、タイやインドネシアも建設を急ごうとしています。
また、フィリピンは、マルコス政権時代の84年に完成しながら、安全性の問題などで凍結された商業炉の再稼働を検討しています。マレーシアも原発導入を検討するとのことで、原子力関連の技術者を育成するため日、米、韓3カ国に派遣しています。【11月22日 産経】
ミャンマーとロシアは07年、軽水炉や核廃棄物の再処理・廃棄施設の建設計画を支援することに合意しています。
【国際的管理体制再確認の必要】
通常の商業用軽水炉からでるプルトニウムは、技術的に、ストレートに核兵器製造につながるものではありませんが、核の平和利用を核兵器製造の隠れ蓑にするような北朝鮮やイランのやり方を見ていると、強権的な国家がその気になれば・・・という不安も感じます。
ミャンマーなどは、北朝鮮から核兵器開発の技術支援を受けているのでは・・・といった疑惑もあります。
1979年に起きたスリーマイル島原発事故(アメリカ)、そして1986年に起きたチェルノブイリ原発事故(旧ソ連)をあげるまでもなく、原子力発電所の稼働には厳格な安全管理が必要とされます。
“核アレルギー”と言われる日本でさえ、ときにその杜撰な管理が問題になったり、事故が起きたりもします。
「原子力ルネサンス」の波に乗って安易に原子力発電に乗り出すような風潮が、安全管理を緩めるようなことにつながらないのか・・・という不安もあります。
また、原子力利用の廃棄物処理については、技術的に完全にクリアされていないのでは・・・という疑問もあります。
原子力発電所がテロの対象となることもありえます。
自爆テロが収まらないイラクでの原子力発電所というのは、いかにも危険に思えます。
テロ組織に核物質が奪われて、いわゆる「汚い爆弾」という形で利用される危険もあります。
いろいろなレベルでの不安がありますので、原子力の平和的安全利用について、国際原子力機関(IAEA)を中心に、国際的に改めて確認していく必要があるように感じます。