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(台湾有数の観光地、阿里山森林鉄道 中国人団体観光客同士の座席の奪い合いで乱闘騒ぎが多発しているとか。 まあ、日本人もかつては農協団体観光客の海外でのマナーがいろいろ言われた時代もありましたから、中国だけの話ではないのでしょうが。それにしても・・・といったところでしょうか。“flickr”より By akrobat77
http://www.flickr.com/photos/akrobat77/4406332314/ )
【中台接近で台湾経済は高成長記録】
中国と台湾の間には、“ひとつの中国”あるいは“独立”といった微妙な関係が存在することは今更言うまでもないことですが、現実問題としては、経済的中台接近を進める馬英九・国民党政権のもとで、台湾経済は高成長を実現しています。
****台湾の2010年GDP推計値、10.47%の高成長****
台湾・行政院(内閣)主計処が31日夜に発表した台湾の2010年の実質域内総生産(GDP、推計値)は、前年比10.47%の高成長となった。1987年以来23年ぶりの伸び率だ。
シティバンク台湾のエコノミスト、鄭貞茂氏は、「2010年の台湾の貿易成長に大きく寄与したのは中国だった。中台経済は緊密に関連している」と述べた。
これに先だって台湾財務省は2010年の貿易統計を発表。2010年の輸出額は前年比34.8%増の2746億4000万ドル(約22兆5000億円)となった。中でも、中国・香港向けの輸出は過去最高を記録し、輸出総額の41.8%を占める1147億5000万ドル(約9兆4000億円)となった。
GDP確定値は2月中に発表される。【2月1日 AFP】
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台湾経済好調の原因は中国との関係強化にありますが、それにしても10.47%というのは、日本からすると溜息のでるような数字です。
もちろん中国は、経済的な関係強化の先に、政治的な関係強化、将来的には“統合”といったものも視野に入れていますが、台湾側は今のところは経済関係に限定したい姿勢です。
【「台湾と中国間の問題で、我が国は関係ない」】
中台双方の思惑を背景にした経済面での関係強化の一方で、政治的な面での緊張関係・対立は相変わらずです。
****台湾:フィリピンとの関係悪化 詐欺容疑者の中国移送で*****
フィリピンが、詐欺容疑で身柄拘束していた台湾人容疑者を中国に移送したことを巡り、台湾とフィリピンの間で外交問題に発展している。台湾側は、フィリピン側に抗議するとともに、大使にあたる駐フィリピン台北経済文化事務処の代表を週内にも召喚することを決めた。
在台北経済文化事務処によると、再三の身柄引き渡し要求にもかかわらず、フィリピン側は、詐欺容疑で逮捕していた台湾人14人を共犯の中国人10人と共に今月2日、中国に移送した。台湾とフィリピンの間に外交関係はなく、犯罪者引き渡しに関する取り決めはない。
台湾側は、パスポートや入国記録で台湾人であることが証明されており、国際法に反すると、強く抗議。事務処代表の召還を決めたほか、台湾で就労を希望するフィリピン人労働者の受け入れを事実上、4カ月間凍結する措置を打ち出した。
台湾は約10万人のフィリピン人の出稼ぎ労働者を受け入れており、フィリピンの貴重な外貨獲得先となっている。フィリピン大統領府の報道官は「台湾と中国間の問題で、我が国は関係ない。経済問題に発展しないことを望む」と話し、責任を回避する姿勢を見せている。
台湾人と中国人は、中国や台湾の金持ちを狙った振り込み詐欺事件にかかわったとして昨年12月、マニラ首都圏で中国・フィリピン両捜査当局の合同捜査で逮捕されていた。【2月9日 毎日】
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フィリピンに限らず、周辺国は中台の微妙な関係には頭を悩ますところです。
特に、中国との経済関係が多くの国でウェイトを増し、中国の存在感が強まるにつれ、中国の意向を念頭に置いた対応になりがちなのもやむを得ないところがあります。
【熾烈な中国のスパイ工作】
中台間での直接のスパイ事件も話題になっています。
****中国に台湾軍少将が機密漏らす 指揮用の情報システムか*****
台湾軍の現役陸軍少将が機密情報を中国に漏らしていたとして、軍検察が勾留、取り調べていることが明らかになった。少将は通信関連を担当する要職に就いており、安全保障の根幹を揺るがすとの懸念が広がっている。将官級による機密漏洩(ろうえい)の発覚は、国民党政権が台湾に移った直後の1950年ごろ以来という。
勾留されているのは陸軍司令部所属の羅賢哲少将。9日に記者会見した台湾国防部総政治作戦局の王明我・局長代行によると、タイ駐在時の2004年に中国側と関係が生じた。05年に台湾に戻ったが、その後も海外出張の機会は多く、そのたびに中国側の人物と接触し、情報を渡していたとみられている。
台湾各紙によると羅少将は、米クリントン政権時に売却が決まった、陸海空を統合した作戦指揮のための高度情報通信システム「博勝」にかかわっていた。有事には米軍側と接続可能とされるこのシステムの情報が漏れた可能性があり、台湾各紙は米国との信頼関係にかかわると指摘している。
これに対し王局長代行は「羅少将は管理職で技術関連の機密資料には触れておらず、知っていることには限りがある」と火消しを図っている。一方で国防部は、機密漏れの損害がどの程度に及ぶのか専門チームを設けて調査を進めている。
08年には米国で、中国系米国人が国防総省関係者から台湾への武器売却情報を得て中国側に流していた事件が発覚しており、このときも「博勝」関連情報が漏れたのではないかと言われている。【2月9日 朝日】
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羅少将が中国側から受け取った報酬は数十万米ドル(数千万円)に上るとみられています。
経済的な蜜月ぶりとは別の、台湾海峡有事とも関連する事件です。
【中国からの観光団同士で乱闘騒ぎ】
経済的な中台接近を反映して、中国からの台湾への旅行者は急増しています。
昨年、台南を旅行した際も、中国人観光客と思われる団体を多く目にしました。
****台湾への中国人旅行客67%増、日本人抜く*****
2010年に中国から観光やビジネスで台湾を訪れた旅行客が激増、1967年から09年まで43年間最も多かった日本人客を大幅に上回ってトップとなったことが、台湾交通部観光局が11日に発表した統計で明らかになった。
08年の馬英九政権発足後の中台関係改善を反映した形だ。
同観光局によると、08年7月、中国人の台湾での団体観光が解禁されて以降、中国人旅行客が急増。10年は前年比67・8%増で163万735人を記録。日本人旅行客は同7・9%伸びて108万153人となったが、中国に大きく引き離されての2位だった。
台湾当局は、中国人の個人観光を4月にも解禁する方向で検討を進めている。台湾で「国父」と慕われる孫文らが清朝を倒した辛亥革命(1911年)から100周年にあたる今年、台湾では様々な慶祝イベントが開催されることもあり、今年の中国人旅行客数は200万人を超えると予想している。【1月12日 読売】
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しかしながら、双方の社会慣習の違いもあって、こんな話題も報じられています。
****大陸からの観光団、「列車の座席取りあい」で乱闘続出=台湾*****
台湾の有名観光地、阿里山国家風景区の森林鉄道で、大陸からの観光団が列車の座席を取りあって乱闘する騒ぎが続出している。分かっているだけでも6日に1回、7日には2回発生した。苹果日報などが報じた。
6日午後に発生した乱闘では、ミネラルウオーターのペットボトルも飛びかった。現場を目撃した台湾人観光客はインターネットで写真を公開し「あまりにもレベルが低い。双方ともそもそも、並ぼうともしなかった」とあきれた。
7日の「乱闘」は、神木駅と阿里山駅で発生した。神木駅で乱闘に巻き込まれたという福建省からの観光客は「私たちは列に並んでいた。列車が駅に到着したとたん、山西省からの旅行団が割り込んできて、争いになった」と主張した。
山西省から来た観光客は、左手の指をかみ切られた。同観光客は「台湾人のガイドの腰にしがみついたら、かみつかれた」、「旅行客同士が殴りあうのは、まだ理解できるだろう。何でガイドが手をだすのだ」と主張した。
嘉義林区管理所の楊宏志所長は、「大陸からの観光客はなるべく分散させ、(鉄道施設などで)出会わないようするよう、旅行会社にはお願いしたい」と述べた。似たような事態が再発した場合、列車の乗車方法を再検討せざるをえないという。【2月9日 Searchina】
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中国人が列に並ばない・・・というのは、昔の中国旅行でいやというほど経験していますし、中国を旅行した日本人が“中国嫌い”になる大きな原因でもありました。
北京五輪などもあって、最近は改善されてきたとも聞いていたのですが、指を噛み切るような乱闘騒ぎというのも“やれやれ・・・”といったところです。
台湾の人々の中国人観光客への視線も複雑なものがあるでしょう。