孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

混乱のチュニジアからイタリアへ不法移民急増  “民主化”で転換を迫られる欧州と北アフリカ・中東の関係

2011-02-16 20:30:38 | 国際情勢

(与党・立憲民主連合(RCD)支配体制の根本的変革を求めるチュニジア女性 “”より By Pan-African News Wire File Photos  http://www.flickr.com/photos/53911892@N00/5422503135/# )

混乱が続くチュニジア
エジプトなど一連の“中東民主化ドミノ”の発端となったチュニジアでは、ベンアリ前大統領追放後もガンヌーシ首相ら与党・立憲民主連合(RCD)系閣僚の総退陣を求めるデモが連日続いましたが、こうした抗議行動を受けて1月27日、暫定連立政権のガンヌーシ首相は、外務、内務、国防の主要ポストからベンアリ前政権時代の与党・RCD系の閣僚を更迭する内閣改造を発表しました。

その後の動きについてはあまり報道がありませんが、混乱は続いているようで、2月6日には与党・RCDの政治活動を停止させる旨の発表がありました。

****前政権与党の活動停止=南部で衝突、1人死亡―チュニジア*****
チュニジアからの報道によると、同国内務省は6日、ベンアリ前大統領の与党だった立憲民主連合(RCD)の政治活動を停止させると発表した。集会も禁止され、各地の党事務所は閉鎖される。
同国では、ベンアリ政権崩壊後に、暴力事件が多発。背後には、混乱に乗じて権力を取り戻そうとするベンアリ派の存在があるとみられていた。暫定政府は、RCDの活動停止によって、同派を弱体化させる狙いがある。
内務省は「解党を裁判所に公式申請する前の措置」としており、将来的にはRCDは解党される見通しだ。
AFP通信によると、同国南部の町ケビリで5日から6日にかけて、デモ隊と治安部隊の衝突があり、催涙弾が頭に当たった男性1人が死亡した。【2月7日 時事】
*************************

5日には、チュニジア北西部ケフで、警察署に抗議に押し掛けた数百人の市民が暴徒化、警官が発砲し、市民ら少なくとも2人が死亡、17人が負傷し、ケフの警察幹部が逮捕されるという事態も報じられています。

悪夢のシナリオ
そんなチュニジアから対岸のイタリアへの不法移民急増が問題となっています。
****チュニジア不法移民がイタリアに大挙流入*****
反政府デモによるチュニジアの強権体制崩壊から14日で1か月を迎えるなか、同国からイタリアに流入する不法移民の急増が問題となっている。欧州連合(EU)からの圧力が高まる一方、13日にはアハメド・ウナイエス外相が就任からわずか3週間で辞任に追い込まれ、暫定政権は困難に直面している。

イタリアのランペドゥーサ島には、この5日間だけで約5000人がチュニジアから押し寄せた。政府筋によると、内務省は治安部隊を沿岸部に派遣し国民の流出を食い止めようとしているという。
不法移民らは、貧困と政変による治安の悪化を国外脱出の理由として主張している。

イタリアは流入阻止のためEUに緊急支援を要請。イタリアの反移民政党・北部同盟所属のロベルト・マローニ内相は、テレビの取材に「チュニジアのシステムは崩壊し始めている」と述べ、イタリア警察をチュニジアに派遣して不法移民の流出防止にあたらせてもよいと発言した。
これに対し、暫定政府側は衛星テレビ局アルアラビアに「容認できない」と強く拒否した。(後略)【2月14日 AFP】
******************************

チュニジア側も沿岸都市2カ所に軍部隊を投入し、不法移民流失防止をはかっています。
*****チュニジア政府、イタリアへの不法移民阻止に軍を投入*****
反政府デモによって政権が崩壊したチュニジアからイタリア南部に不法移民が押し寄せている問題で、チュニジア政府は流出を防ぐため沿岸都市2カ所に軍部隊を投入した。関係筋が14日明らかにした。
チュニジアでは23年余り続いたベンアリ政権が1月14日に崩壊して以来、政情不安が続いており、先週には4000人以上がイタリア南部のランペドゥーザ島に到着している。

チュニジア軍の関係筋は、移民の流出拠点となっているガベスとザルジスに軍部隊を派遣し、沿岸警備隊とともに監視活動を行っていると述べた。国際移住機関によると、ザルジスでは、不法移民は密入国業者に1800ドル(約15万円)を支払い、イタリア側に渡っている。

イタリアのフラティニ外相は不法移民について協議するため、14日にチュニジアの首都チュニスに向かった。また、イタリアのベルルスコーニ首相はファンロンパイ欧州連合(EU)大統領と会談し、チュニジアの移民問題は「危機的状態」にあり、EU全体に影響を与えると指摘した。
複数のアナリストによると、チュニジアやエジプトで起こった反政府活動は周辺諸国に飛び火する懸念があり、移民増加を抑えるためこれまで北アフリカ諸国の独裁政権に頼っていた欧州諸国にとっては悪夢のシナリオとなる可能性もあるという。【2月15日 ロイター】
*******************************

長期独裁国家支援のツケをいかに支払うか
強権支配崩壊で、それまで封じ込められていた動きが表面化しているとも見られます。
エジプトでは強権支配崩壊で「ムスリム同胞団」などのイスラム主義台頭が懸念されていますが、“民主化”は様々な変化を誘発します。

なお、フランスでは、アリヨマリ仏外相がバカンスでベンアリ前大統領一族に近い人物からの便宜供与を受けたことが問題となっています。
更に、今朝のTVでは父親のビジネスでもチュニジアからの便宜供与があったのではということも取り上げられているようです。

****独裁国家との怪しい関係*****
「何百万人のフランス人同様、私もチュニジアで休暇を過ごしただけ」-。
先の「ジャスミン革命」でサウジアラビアに亡命したチュニジアのベンアリ前大統領一族に近い人物所有のジェット機をクリスマス休暇中に2度も使用し、辞任を迫られているアリヨマリ仏外相が、いみじくも弁解したように、フランス人にとって旧植民地のチュニジアやモロッコは仏語も通じ、治安も比較的良いとあって休暇先として人気がある。
外相はジェット機には所有者と同乗しただけと“無実”を主張しているが、この休暇の約2週間後にはベンアリ独裁政権が崩壊した。事態を予測できなかった駐チュニジア仏大使はサルコジ仏大統領の逆鱗に触れて更迭された。

欧州連合(EU)は4日の首脳会議でベンアリ夫妻に次いで近親者46人の資産凍結を決めたが、フランスには一族の資産が多い。
仏ルモンド紙によると高級住宅地のパリ16区には5階建てのビルをはじめマンション4棟、14区のモンパルナス周辺にもマンション2棟を所有。7区の大使館兼大使公邸の公邸部分(600平方メートル)は夫妻が常時利用できるようにと2006年春以来、大改装工事中だ。
仏当局は否定しているがベンアリ政権が崩壊した1月14日夜、パリ郊外ルブルジェ空港に到着したジェット機には夫妻が搭乗していたという情報がある。搭乗者らは機内から一歩も出ることなくジェット機とともに数時間後には去った。
一族の数人がその数日前からパリ郊外のホテルに滞在していたが、国外退去を命じられて姿を消した。
夫妻らが亡命先にフランスを選んでも決して不思議ではないように両国の関係は極めて良好だった。仏メディアも仏外務省が一族の亡命拒否を正式に発表したとき、「対チュニジアの政策の転換」と大々的に報じた。

騒乱が続くエジプトのムバラク政権とフランスとの関係も深い。サルコジ氏はEUとエジプトを核にした地中海沿岸諸国との地中海連合を外交の目玉にしており、08年7月にはパリで第1回首脳会議を開催した。サルコジ氏は一時、主要8カ国(G8)首脳会議にエジプトを加えた拡大サミットを盛んに提唱していた。
仏野党は、「独裁者は独裁者と呼べ」とサルコジ政権の対エジプト外交の欺瞞(ぎまん)を批判しているが、歴代の仏大統領もムバラク政権とは良好な関係を保持してきた。
社会党出身の故ミッテラン元大統領は1996年1月に亡くなる前の休暇を隠し子一家とカイロで過ごしたが、個人的にも親しかったムバラク大統領の招待による、とされている。

こうした長期独裁国家をフランスをはじめ米欧が支持してきたのはイラン革命の後遺症もあり、ひとえにこれらの国のイスラム原理主義化を回避するためだった。特に地理的にも歴史的にも近い関係の欧州にとってこのツケをいかに支払うかは大きな課題だ。【2月9日 産経】
*******************************

“地理的にも歴史的にも近い関係の欧州”と北アフリカ・中東は、“独裁政権”“民主化”といった言葉だけでは表現できない複雑・微妙な関係があるようです。

こうした中、アシュトン外務・安全保障政策上級代表(外相)は14日、チュニジアを訪れEUによる経済支援を発表しています。
****チュニジア:暫定政権に290億円支援へ EU****
欧州連合(EU)のアシュトン外務・安全保障政策上級代表(外相)は14日、民衆蜂起でベンアリ前大統領が追放されたチュニジアを訪れ、暫定政権に対して3年間で2億5800万ユーロ(約290億円)の支援を表明した。
EUはベンアリ政権時代、11~13年に2億4000万ユーロの支援を予定しており、チュニジア政変を受けて支援額を上積みした。アシュトン氏は人権活動家や女性団体とも会談、非政府組織(NGO)への支援を強化する姿勢を示した。

アシュトン氏は15日、イスラエルとパレスチナ自治区を訪問。その後、レバノン、ヨルダンを歴訪し、地域の安定と民主化を望むEUの立場を伝達する。
EUはチュニジアからエジプトに波及した独裁政権の崩壊を受け、北アフリカ・中東外交の見直しに着手しており、アシュトン氏の歴訪はその一環。ムバラク政権が崩壊したエジプトも訪れたい意向で、全権を掌握したエジプト軍最高評議会と日程などを調整している。【2月15日 毎日】
*******************************

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする