孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

リビアの「カダフィ流危機対処モデル」とジンバブエで続く強権支配

2011-02-22 20:37:16 | 国際情勢

(反政府運動側が制圧したとされる東部ベンガジで治安部隊の戦車に乗って“勝利”を喜ぶ人々 ただ、“中東の狂犬”カダフィ大佐を相手とする以上、それ相応の覚悟は必要でしょう。 “flickr”より By giaitri59
http://www.flickr.com/photos/21862466@N06/5465912093/ )

【「カダフィ氏はムバラクやベンアリとは違う」】
盤石と思われていたカダフィ政権が大きく揺らいでいるリビア情勢について、多くのメディアが報じています。

****リビア デモ 首都に拡大 国営テレビ襲撃、国会放火*****
騒乱状態が続くリビアで20日夜(日本時間21日未明)、反体制デモが首都トリポリにも拡大し、数千人のデモ隊と治安部隊が衝突、中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、61人が死亡した。15日のデモ発生以降の死者は全土で300人を超したとみられる。フランス通信(AFP)によると、デモ隊は21日未明にかけて、国営テレビ本部を襲撃、全人民会議(国会)や警察署に放火した。反体制派は第2の都市ベンガジなど複数の都市を支配したもようで、41年にわたり同国に君臨する最高指導者カダフィ大佐(68)は最大の危機を迎えた。
                   ◇
トリポリは大混乱に陥っているもようで、カダフィ大佐が南米ベネズエラに向かったとの情報もある。
中東の衛星テレビ、アルアラビーヤによると、アブドルジャリル司法書記(法相)が21日、デモ隊への過剰な暴力行使を批判して辞任。報道によると、リビアのアラブ連盟担当大使や駐インド大使も弾圧に抗議して辞任した。
国営テレビ襲撃前の21日午前1時過ぎ、カダフィ氏の次男で、後継者として有力視されるサイフルイスラム氏(38)が同テレビを通じて演説。政治改革の必要性を認めた上で、憲法制定に向けた国民対話のため全人民会議が同日、会合を開くと明らかにした。
同氏はその一方で、「わが国は内戦の危機にある」と警告、「カダフィ氏はムバラク(エジプト前大統領)やベンアリ(チュニジア前大統領)とは違う。最後の1人となるまで戦う」と述べ、武力鎮圧を目指す方針を堅持した。

反体制派のデモ隊と当局の衝突が続いていたリビア北東部ベンガジでは20日夜、軍兵士らが任務を放棄しデモ隊に合流。住民はアルジャジーラに、「街はわれわれの支配下にある」と述べた。アルアラビーヤは、カダフィ氏の出身地である北部シルトなどでもデモ隊が治安を一時掌握したと報じた。東部最大の部族もデモ隊に加わったという。リビアでは外国メディアの取材が認められておらず、詳細は不明。(後略)【2月22日 産経】
*******************************

“ベネズエラ亡命”については、現在のところ否定的な報道がなされています。
(確かに、“中東の狂犬”カダフィを迎えてくれるのは“南米の異端児”チャベス大統領ぐらいかも・・・)
ただ、軍兵士や各国大使など政府高官から離反者が出ている状況で、カダフィ政権が追い詰められていることは事実のようです。有力な宗教指導者や主要部族の離反も報じられています。

カダフィ流危機対処モデル
チュニジア、エジプトでは民衆の抗議行動に譲歩する形で、結局政権を放棄せざるを得ないところまで行ってしまいましたが、その“教訓”を汲んでか、あるいは、最近でこそ国際的協調路線に切り替わったものの、かつては“中東の狂犬”という異名で呼ばれ、パンナム機爆破事件などテロ活動を行ったとされるカダフィ大佐の性格によるものか、抗議行動への対応も“戦闘機による攻撃”など、これまでとは異なる過激・強硬なものとなっています。

****カダフィ政権、最大の危機 武力鎮圧か退場か、各国は行方注視****
■大産油国のデモ拡大懸念
リビアの最高指導者カダフィ大佐が、過去最大の危機に直面している。政権側は反体制派デモに対し、徹底した武力鎮圧も辞さない考えを鮮明にさせた。「カダフィ流」のこうした極端な手法は、中東各国や他の地域に何をもたらすのか。

カダフィ氏はかつて数々のテロ事件を支援したほか、数々の奇行でも知られ、「中東の狂犬」とも呼ばれた。だが2003年のイラクのフセイン政権崩壊後は大量破壊兵器の放棄を宣言、長らく敵対してきた米国と関係改善に乗り出すなど、対外的にはより柔軟な姿勢を示してきた。しかし、国内のメディア活動はなおも厳しく制限され、カダフィ氏への個人崇拝に基づく徹底した強権支配が維持されてきた。
今回の一連のデモでは早い段階から実弾を使用。カダフィ氏の次男サイフルイスラム氏は21日の演説で、「最後の銃弾一発まで戦う」とまで言い切った。「(軍が中立を守った)チュニジアやエジプトとは明らかに一線を画す」(北アフリカ専門家)発想だ。

独裁者としての国際的“知名度”が抜群なだけでなく、実際に徹底した強権体制を敷き政権は盤石とみられていたカダフィ氏が、デモへの武力行使を辞さなかったにもかかわらず、それでも権力の座から追われるような事態となれば、その衝撃が及ぶ範囲は中東・北アフリカにとどまらない。
特にリビアは近年、アフリカ連合(AU)での活動を強化し、サハラ砂漠以南での存在感を高めていただけに、独裁的な政権が多いアフリカ諸国に波及する可能性がある。中国や中央アジアなどでもリビア情勢への関心が強まるのは間違いない。
一方、デモの武力鎮圧に成功した場合、カダフィ氏は、各地の独裁的な政権に一種の「危機対処モデル」を提供することになる。

リビアでもみられた交流サイト「フェイスブック」や簡易ブログ「ツイッター」などによる大衆動員はどの国でも起こり得る現象だ。今後、同様のデモに直面した国々が、武力使用に対する心理的抵抗感が少なくなるのではないかとの懸念はぬぐえない。
エジプト政府系シンクタンク、アハラム戦略研究所のジヤード・アクル氏は、武力使用に偏ったカダフィ氏的な手法は「人々の怒りを増幅させて対立を煽(あお)り、妥協を難しくするだけだ」と指摘している。【2月22日 産経】
*******************************

まだリビア情勢がどういう結末を迎えるのかはわかりませんが、どんなに強固な支配に見える権力も内部が空洞化していると、動き始めた現実に対応できずにもろくも崩壊してしまう・・・そんな思いを抱かせる状況です。

ジンバブエでの“民主化”余波
中東・北アフリカ各国での「民主化ドミノ」の影響は報道のとおり、リビアやバーレーンを頂点に多くの国々に広がっています。
その他の地域でも、ムガベ大統領による強権支配が続く南アフリカ・ジンバブエからもそうした影響が報じられています。

****エジプト反政府デモ研究会に参加した47人を拘束、ジンバブエ****
ジンバブエ警察当局は19日、エジプトの反政府デモを研究する会合に参加していた47人を拘束した。弁護人が21日明らかにした。
弁護人のローズ・ハンジ(Rose Hanzi)氏によると、47人は、ホスニ・ムバラク大統領を退陣に追い込んだエジプトの反政府デモおよびデモが他国に波及する可能性に関し、会合で議論していたところ、警察に拘束された。
47人の中には、モーガン・ツァンギライ首相率いる野党・民主変革運動(MDC)の元国会議員で大学講師のMunyaradzi Gwisai氏も含まれていた。だが、たまたま会場を通りかかった人なども拘束されたという。
(中略)
なお、47人は首都ハラレ(Harare)の警察に身柄を拘束されているが、まだ1人も正式に起訴されていない。警察は、非合法な手段で政府の転覆を図った罪で起訴される可能性を示唆しているという。【2月22日 AFP】
*******************************

ジンバブエ経済を崩壊させたムガベ大統領は、大統領選挙結果を強権で捻じ曲げ、かつての野党指導者ツァンギライ首相と権力を分担する形式を一応はとりつつも、強権支配をなお続けています。
野党勢力を暴力的に徹底弾圧した“実績”があるだけに、エジプトのような反政府デモには「カダフィ流」の「危機対処モデル」で対応すると思われ、抵抗の難しさが予測されます。

そのジンバブエを訪問した楊潔チ中国外相は、ジンバブエを「良き友人、良き兄弟、良きパートナー」と評したとか。
****中国の楊外相がジンバブエを訪問、「ジンバブエは良き兄弟*****
中東・アフリカを歴訪中の楊潔チ(Yang Jiechi)中国外相は10日、ジンバブエに到着した。
首都ハラレの空港でジンバブエのシンバラシェ・ムンベンゲグウィ外相に出迎えられた楊外相は、「中国はジンバブエとの政治的相互信頼を高め、互恵的協力関係を拡大して、友好と協力関係を進展させる準備がある」と演説した。また、ジンバブエを「良き友人、良き兄弟、良きパートナー」と評した。(後略)【2月11日 AFP】
**************************
「良き兄弟」と言うか、「似たもの同士の兄弟」と言うか・・・・。

強権支配者周囲の腐臭
昨年末には、ウィキリークス絡みでこんなニュースもありました。
****ジンバブエ大統領夫人、ウィキリークス電文報じた新聞社を提訴****
ジンバブエのグレース・ムガベ大統領夫人は15日、内部告発ウェブサイト「ウィキリークス」か公開した米外交電文をもとに夫人が違法ダイヤモンド取引で利益を得たと報じた新聞社を、名誉毀損で訴えた。要求額は1500万ドル(約13億円)。同国の政府系日刊紙ヘラルド(Herald)が16日報じた。

同国日曜紙スタンダードは前週、ウィキリークスが公開した米国大使の2008年の本国向け電文を引用し、大統領夫人が違法なダイヤモンド採掘によって数百万ドルの利益を得たと報じた。
電文で米国大使は、ジンバブエの政府高官らが私的に人を雇ってダイヤモンドを採掘し、数百万ドルを手にしたと報告していた。
夫人の代理人の弁護士は、「原告はジンバブエの著名人であり、何と言っても大統領夫人だ。国民の母とも言える重要人物にこのような汚名を着せるなど、正しい考えを持つ国民が原告に抱く尊敬の念を無におとしめるものだ」と非難した。
同弁護士は、問題の記事で「国が深刻な外貨不足にあえぐ中、夫人が自身の大統領夫人としての立場を利用して密かにダイヤモンドを入手して私腹を肥やした」と伝えられたのは誤りだと主張している。【10年12月17日 AFP】
****************************

“「私腹を肥やした」と伝えられたのは誤り”・・・・でしょうか?これまでの言動を見ると、「そんなこともあるだろうな・・・」と思えますが。
強権支配の権力者周囲からは腐臭が漂います。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする