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(22日夜のリビア首都トリポリ リビアの首都トリポリを包囲しつつある反体制派に対し、「最後の血の一滴まで戦う。必要なら武力も使う。天安門事件のようにデモ隊をたたきつぶす」と語った最高指導者カダフィ大佐は外国傭兵を使った反体制派の弾圧や情報統制を徹底して自らの存続を図っており、内戦の様相を呈しています。
“flickr”より By sawtakonline.com http://www.flickr.com/photos/58910016@N02/5468283643/ )
【カダフィ大佐:「殺し合いがしたいなら勝手にしろ」】
連日取り上げているリビア情勢ですが、最高指導者カダフィ大佐は24日、国営テレビで今週2度目の演説を行い、「(国際テロ組織)アルカイダが若者を薬物中毒にした。殺し合いがしたいなら勝手にしろ。私に公的な権力はなく、象徴的な権威しかない」などと述べ立てたてています。
“大量殺りくは、外国の差し金で勝手に争っているもので、自分には関係ないという驚くべき身勝手な理屈だ”【2月25日 毎日】ということで、内容もいささか支離滅裂な感じです。
22日の75分におよぶ演説とは異なり、今回は電話によるわずか20分の短い演説ですが、“電話を通じた音声だけで「出演」したのは、反政府勢力の攻勢を恐れて、居場所を知られたくない用心だったのかもしれない”【同上】とも。
【アフマディネジャド大統領:「どうしたら自分の国民に銃を向けられるのか」】
こうしたリビア情勢を、国内反政府行動を厳しく弾圧しているイラン・アフマディネジャド大統領が「指導者を名乗るのであれば、国民の声に耳を傾けるべきだ」と批判しているのが笑えます。
****イラン大統領:カダフィ政権の武力弾圧を批判****
イランのアフマディネジャド大統領は23日、リビアのカダフィ政権による国民への弾圧を強く非難し、「指導者を名乗るのであれば、国民の声に耳を傾けるべきだ」と最高指導者カダフィ大佐に「忠告」した。
革命防衛隊系のファルス通信によると、大統領は「どうしたら自分の国民に銃を向けられるのか」などとカダフィ大佐を批判。「(指導者が)国民に尽くし、彼らの側に立てば、反抗を受けることなどありえない」と自説を展開した。自国で反政府デモが相次ぐ現状には触れなかった。
イランの首都テヘランでは14日以降、散発的にデモが発生。イラン当局は徹底的に弾圧し、計3人が死亡している。イラン国内では反政府的な言動への締めつけが進み、インターネット規制や外国メディアの取材制限も強化している。【2月24日 毎日】
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当然のごとく、宿敵アメリカ・オバマ大統領が、アフマディネジャド大統領の発言は「皮肉的」とつっこんでいます。
****イラン大統領がリビア弾圧非難、米大統領は「皮肉的」****
・・・・これについて、オバマ米大統領は、イラン政府がこれまで平和的にデモを行ってきた自国民を武力鎮圧し、エジプトとは正反対の行動を取ってきたことを考えれば、アハマディネジャド大統領の発言は「皮肉的」だと語った。イランでは今月に入って、大統領選をめぐる2009年のデモ以来初めて、反体制派による抗議活動が行われ、2人が死亡。反政府デモが治安部隊に再び鎮圧されていた。【2月24日 ロイター】
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【「天安門事件のようにデモ隊をたたきつぶす」発言に中国不快感】
また、22日の演説でカダフィ大佐が「(中国の)天安門事件のようにデモ隊をたたきつぶす」と語ったことについて、中国外務省の馬朝旭報道局長は24日の定例会見で「(天安門事件に対し)中国政府と国民は既に明確な結論を出している」と述べ、不快感を示したとか。【2月24日 時事より】
政治的にタブーとなっている天安門事件をこんな形で取り上げられては、中国当局としては大迷惑ということでしょう。
その中国は、「中国茉莉花(ジャスミン)革命」の呼びかけを警戒してか、デモの呼びかけ場所で突然の工事をはじめたとか。
****デモ呼びかけ場所で突然工事始まる 北京市繁華街*****
中国の民主化を求める「中国茉莉花(ジャスミン)革命」のデモの呼びかけ場所である北京市中心部の繁華街、王府井で路面の補修工事が始まった。20日の呼びかけの際には見物人を含め千人以上が集まり、27日にもデモが呼びかけられている場所だ。当局による事実上の封鎖措置との見方も出ている。
連日、観光客らでにぎわう歩行者天国。その路上の中央に鉄柵が張り巡らされ、歩行者はその両側を通る形に。「路面陥没による緊急工事」との張り紙が出ているが、工事主体などは不明。作業員は「何も知らない」と語った。
中国では昨年、獄中の民主活動家、劉暁波(リウ・シャオポー)氏のノーベル平和賞受賞が決まった後にも、北京市内に住む妻の劉霞さんの自宅前で突然、工事が始まり、事実上、報道陣が排除されたことがあった。【2月25日 朝日】
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【ドイツ内相:「現時点では難民の殺到は起きていない」】
チュニジアの政変ですでに多くの難民が押し寄せているイタリアは、中東情勢の更なる混乱で難民・移民の流入に対する警戒を強めていますが、ドイツなどは今のところつれない対応です。
****中東混乱:ボートピープル続々 「100万人流入」イタリア警戒*****
チュニジア、エジプトからリビアへの民衆蜂起の飛び火を受け、地中海を挟み「対岸」に位置する南欧諸国が難民・移民の流入に対する警戒を強めている。イタリアはリビアから「100万~150万人」(マローニ内相)が押し寄せかねないとして欧州連合(EU、加盟27カ国)に支援を求めている。だが、北欧・中欧諸国の反応は鈍く、中東激震でEUの「連帯」が揺らいでいる。
地中海に浮かぶイタリア領ランペドゥーサ島には13日以降、チュニジアから8000人以上が漁船や船外機付きボートで漂着した。政変で国を追われた政治難民と、欧州に職を求める不法移民だ。イタリア政府は約6500人を本土などの施設に移し、EUも聞き取り調査にあたる専門家などを派遣した。
ランペドゥーサ島などイタリア沿岸部への漂着者は07年まで年間2万人強で推移していたが、08年に約3万7000人に増えた。ベルルスコーニ政権が09年に同島の収容施設を閉じて漂着船を追い返す措置を取った結果、09年に約9600人となり、10年には3000人台にまで減ったところだった。
チュニジア政変に続きリビア情勢が悪化すれば、イタリアを目指して地中海を渡る難民や不法移民が急増し、社会不安を招きかねない。懸念を見透かしたようにリビアの最高指導者、カダフィ大佐は「反政府デモを支持すれば移民対策の協力をやめる」とEUに脅迫状を突き付けている。
グテーレス国連難民高等弁務官は欧州諸国に対して、リビアの内戦突入時などに発生が想定される難民の保護を要請している。イタリアなど南欧6カ国は24日、ブリュッセルで開かれたEU内相会議で「欧州全体の問題だ」(マローニ内相)と主張、「難民受け入れ基金」を新設して、他加盟国も負担を分担するよう提案した。
だが、内相会議では負担増を嫌う他加盟国から「現時点では難民の殺到は起きていない」(デメジエール独内相)、「イタリアから他国への難民の振り分けには反対だ」(フェクター・オーストリア内相)など南欧諸国に冷淡な発言が相次ぎ、EUとしての「一枚岩」の対応は打ち出せなかった。【2月25日 毎日】
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【プーチン首相:「市民には自分たちで運命や将来を選ぶ機会を与えなくてはならない」】
ロシア・プーチン首相は、中東での市民デモへの西側諸国の干渉を牽制しています。
****プーチン首相が中東デモで西側けん制、「干渉は要らない」****
ベルギー訪問中のロシアのプーチン首相は24日、西側諸国に対し、中東や北アフリカで拡大する民衆蜂起に干渉しようとする試みは、過激派を政権に就かせることになりかねないと警告した。
プーチン首相は、バローゾ欧州委員長との共同記者会見で「市民には自分たちで運命や将来を選ぶ機会を与えなくてはならない」とし、いかなる外部からの干渉も必要ないとの見解を示した。
また、過去の「民主主義の押し付け」が、イランでイスラム革命をもたらしたほか、パレスチナではイスラム原理主義組織ハマスが立法評議会選挙で勝利するなど、西側諸国が現在対応に苦労する状況を自ら生み出したと批判。「素晴らしい。よくやった。ハマスが(選挙で)勝ったが、あなた方はその人たちを今度はテロ組織と呼び、戦いを始めている」と痛烈に皮肉った。【2月25日 ロイター】
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「市民には自分たちで運命や将来を選ぶ機会を与えなくてはならない」と言うプーチン首相ですが、ロシアの現状について、ゴルバチョフ元ソ連大統領が「われわれには議会も法廷もあり、大統領も首相もいるが、すべては真似事にすぎない」と痛烈に批判しています。
****ゴルバチョフ氏、プーチン露首相を「恥知らず」と痛烈批判*****
ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領は21日、プーチン首相がロシアで権力を独占し、有権者から民主的な選択の自由を奪っているとして非難した。
プーチン首相は2000年から08年までロシアの大統領を務め、同国では今でも最高権力者とみなされている。ゴルバチョフ氏は、プーチン首相と同首相が3年前に大統領へと導いたメドベージェフ大統領が2人で、来年3月に行われる大統領選挙の候補者を決めるだろうと指摘した。
ゴルバチョフ氏はさらにプーチン首相について、ロシアの選挙を自らが決められると考えるとは「恥知らず」で、そのような「うぬぼれ」は信じがたいと主張。「われわれには議会も法廷もあり、大統領も首相もいるが、すべては真似事にすぎない」とこき下ろした。また、ソ連崩壊から20年たった今でもロシアは民主化への道半ばであると語った。
1991年にソ連を崩壊させる大胆な改革を行ったゴルバチョフ氏は先週、エジプトやチュニジアの民衆デモについて、独裁政治が永遠に続かないことへの警告だと、新聞に寄稿していた。【2月22日 ロイター】
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