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(4日に帰国して、国民にバルコニーから挨拶するチャベス大統領 両脇の女性はお嬢さんです。“flickr”より By SerieAdict@ http://www.flickr.com/photos/33376694@N06/5904598342/ )
【「まだ死ぬときではない、生き続ける」】
その反米的な言動でなにかと話題となることも多いベネズエラのチャベス大統領は、友好国キューバで骨盤膿瘍が見つかり6月10日に手術を受けましたが、その際、悪性腫瘍が見つかり、20日にがん摘出手術を受けました。
腫瘍は「野球のボールほど大きかった」とのことで、100キロ以上だった体重は85キロに減ったそうです。
普段能弁なチャベス大統領の動静がわからなくなったことで、一時いろんな憶測がなされましたが、本人ががん治療を告白、今月4日にはベネズエラに帰国、騒動は一段落したようにも見えました。
しかし、16日には手術後の化学療法を受けるため、再びキューバへ出発、健康不安と政治的思惑が再燃しています。
****チャベス大統領、がん治療でキューバ再訪****
キューバでがん摘出手術を受けたベネズエラのウゴ・チャベス大統領(56)が16日、手術後の化学療法を受けるため、再びキューバへ出発した。治療にかかる日数は明らかになっていない。
AFP記者によると、チャベス大統領は出発前、「この新たなステップを終えなければならない」と語り、「数日間(キューバを)訪問する予定だが、別れのあいさつをするつもりはない。もっと元気になって戻ってくる」と述べたという。チャベス氏は「まだ死ぬときではない、生き続ける」と強調した。
またチャベス大統領は、首都カラカスを出発前にテレビ演説を行い、「私は楽観的であると言っておこう。いま、私は人生を、これまでなかったように愛している」と語った。
出発に先立ち、ベネズエラ国会は、大統領が5日以上国を離れるときに必要な渡航要請を全会一致で承認した。大統領のキューバ訪問中は、エリアス・ハウア副大統領とホルヘ・ジョルダニ財務相が大統領の一部行政権限を執行する。
だが野党指導者らは、チャベス氏がキューバから大統領の行政権限を行使することは憲法違反であり、外国訪問中は副大統領に全権限を委任するべきだと要求。チャベス大統領は「自分の能力が損なわれたと感じたら」、ハウア副大統領に全権限を委譲するとしている。【7月17日 AFP】
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「まだ死ぬときではない、生き続ける」と言われると、逆に「大丈夫だろうか・・・」とも思ってしまいます。
一時、ブラジルのルセフ大統領が、ブラジルでの治療を勧め、チャベス氏も受け入れたと伝えられていました。“地元メディアは、結局、病状など秘密が保持できるキューバで治療を続けた方がいいと判断したのだろうと評している”【7月16日 朝日 朝日】 とのことです。
【「ベネズエラとキューバは同じ国だ」】
独裁者チャベス大統領の動静がベネズエラ国内政治に大きな影響を与えるのは当然のことですが、治療先であるキューバにとっても、チャベス大統領の健康は国の方向を左右しかねない重大事だそうです。
もし、チャベス大統領が病に倒れれば、同じ左派政権としてこれまで優遇を受けていたベネズエラからの原油供給が滞り、キューバは社会不安に直結する恐れがある・・・というものです。
****チャベスの癌で絶体絶命のキューバ*****
キューバで癌の手術を受けたベネズエラのウゴ・チャベス大統領が7月4日、約1カ月ぶりに母国へ戻った。キューバの首都ハバナを発つ際には、空港の滑走路でラウル・カストロ国家評議会議長に向けて「ベネズエラとキューバは同じ国だ」という言葉を贈り、友情を確かめ合った。
その言葉通り、キューバの命運は、癌と戦うチャベスの健康状態にかかっている。ベネズエラからキューバ(と中南米諸国の左派政権)に流れる巨額の支援が今後も続くかどうかは、チャベスの体調次第なのだ。
ソ連崩壊によって、キューバが慢性的な停電と経済停滞に苦しめられた時代から20年。キューバは今もベネズエラという寛大な友好国に依存して国家経済を維持している。石油需要の3分の2以上はベネズエラが格安で提供してくれる原油でまかなっているし、昨年の対ベネズエラ貿易は推定35億ドルに上った。
56歳のチャベスは、キューバで骨盤膿瘍の手術を受けた際に「癌性細胞」が発見されたと語っているが、癌の具体的な部位や予後の見通しについては公表していない。
スペインからの独立200周年を機にベネズエラに帰国したチャベスは、陽気でエネルギッシュだった。食事を「ガツガツ食べている」とテレビカメラの前で請け合い、ツイッターの170万人のフォロワーに向けて「神に感謝!これは復活の始まりだ」とツイートした。
停電解消はベネズエラの原油のおかげ
一方、キューバにとっては不安の始まりだ。キューバでは革命の英雄フィデル・カストロの弟である80歳のラウルが国家財政の健全化に悪戦苦闘しつつ、自由経済への段階的移行を進めている。だがチャベスの健康不安は、キューバ経済の脆弱さをあらためて浮き彫りにした。
キューバの共産党政権は今後数年間で何万人もの国営企業の従業員を解雇し、小規模な営利企業の増加を認めようとしている。キューバがこうした改革をマイペースで進められるのは、ベネズエラから様々な形で支援を受けられるおかげだ。
病気のため、あるいは来年12月の大統領選に敗れてチャベスの時代が終わりを迎え、医療従事者中心にベネズエラで出稼ぎ労働者として働く4万人のキューバ人が帰国する事態になれば、財政は一段と厳しさを増すだろう。
さらに深刻なのは、エネルギー供給の問題だ。ベネズエラから安定的に原油を入手できるおかげで、キューバでは90年代前半のような慢性的な停電と暴動はほとんどなくなった。キューバ人が大挙して、ボートでアメリカを目指すこともなくなった。
当時、まだ政治権力の頂点に君臨していたフィデルは毎日のようにテレビに出演し、意志の力だけで国民を危機から救い出そうとしていた。しかし彼は今、85歳。再び国を救うには弱りすぎている。
キューバの社会情勢は、灼熱の夏季の電力供給と密接に結びついている。キューバは過去10年間、比較的小規模な火力発電所を設置することで電力供給を安定化させてきた。燃料の一部はベネズエラ産の石油で、ここ数カ月原油価格が1バレル=100ドルを超えたときでも、キューバはベネズエラのお陰で電力の安定供給を続けることができた。
すぐにベネズエラの原油の代わりを見つけることも難しい。キューバは既に国内油田で1日5万バレルの石油を生産し、そのほとんどを発電に使っている。スペインの石油大手レプソルは近くキューバ北部の沖合で石油採掘を始めようと計画している。だが専門家によれば、大規模な原油を掘り当てても原油を市場で流通させるまでには何年もかかる。【7月7日 Newsweek】
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“絶体絶命”かどうかはともかく、チャベス政権の存続がキューバ経済に大きな影響を持っているようです。
キューバをはじめとする中南米左派政権諸国は、チャベス大統領の健康状態に、重大な関心を寄せている状況のようです。