孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  アフガニスタン撤退、医療保険制度改革、財政赤字削減・・・難題を抱えるオバマ大統領

2011-08-14 21:22:41 | アメリカ

(8月4日で50歳を迎えたオバマ米大統領 “50歳になると、誰でもその人の人格にふさわしい顔になる”(ジョージ・オーウェル)“flickr”より By 89AKurt http://www.flickr.com/photos/53074154@N00/5938759378/

アフガニスタンの治安維持に引き続き関与
債務上限引き上げ問題では、時間切れぎりぎりまでもつれこんだものの、とりあえずはデフォルトを回避したオバマ米大統領ですが、問題は山積しており、気の休まる暇はなさそうです。

外交面での最大課題であるアフガニスタンからの撤退については、オバマ大統領は6月下旬、約10万人の駐留米軍のうち、1万人を今年末までに撤収させ、更に2万3000人を来年夏までに帰還させる撤収計画を発表しています。

その撤退計画を開始したのに合わせたように、今月6日、駐留米軍のヘリが中部マイダンワルダク州で撃墜され、搭乗していた米特殊部隊員ら30人を含む計38人が死亡しました。01年に始まったアフガニスタン戦争で、一度に犠牲になった米兵の数としては最多となっています。

アフガニスタン政府高官によると、今回の米軍ヘリ撃墜は、タリバン側の司令官が、タリバンの会合があると、うその情報を米軍に流し、米軍部隊を現地におびき出して実行した“罠”だったとのことで、また、パキスタン人4人が協力していたということです。【8月9日 AFPより】

撤退計画への影響も取り沙汰されていますが、オバマ米大統領は、アフガニスタンの治安維持に引き続き関与していく考えを強調しています。

****米大統領、アフガンへの関与継続を強調 ヘリ事故受け*****
アフガニスタンで6日に北大西洋条約機構(NATO)軍のヘリコプターが墜落し、多くの米兵らが犠牲になったことについて、オバマ米大統領は8日、「我々の兵士たちは、アフガンをテロリストの安全な隠れ家としないために働き続ける」と述べ、オバマ政権としてアフガンの治安維持に引き続き関与していく考えを強調した。

パネッタ米国防長官も同日、米フロリダ州タンパで開かれた米軍関係の式典で米兵の犠牲に触れ、「我々は彼らやその家族に、命を捧げる原因となった戦いを決して中断しないと誓わなければならない」などと述べた。(後略)【8月9日 朝日】
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なお、ヘリを襲撃したタリバン勢力の居場所を米軍がつきとめて8日に空爆し、メンバーをほぼ殺害したと発表されています。

【「憲法上の限界を超える」】
内政面での最大の成果である医療保険制度改革法についても、全米各地で26州の共和党系知事らが違憲訴訟が起こしており、ジョージア州のアトランタ連邦高等裁判所は12日、医療保険制度改革法が合衆国憲法に違反するとの判決を下しています。

****米国:医療保険改革法は違憲 アトランタ連邦高裁****
米南部ジョージア州のアトランタ連邦高等裁判所は12日、オバマ政権下で昨年成立した医療保険改革法が、国民に保険加入を義務付けているのは憲法違反との判断を下した。医療保険改革を1期目の最大の成果と位置づける大統領には大きな痛手となった。

3人の裁判官のうち2人が、14年から保険加入を義務付け、違反者に罰金を科すとした医療保険改革法の枠組みを違憲と判断した。原告は14州の共和党の知事や州司法長官。
この法律をめぐっては、オハイオ州のシンシナティ連邦高裁が合憲との判断を出しており、最終的な判断は最高裁に委ねられる。

来年11月の大統領選でも、医療保険改革は争点となるのは必至で、最高裁の判断は大統領選前の来夏にも下される可能性がある。【8月13日 毎日】
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アメリカの場合、医療保険は民間保険会社が売る商品であって、日本や欧州のような社会保障制度とは異なります。民主党が最後までこだわった新たな公的保険制度創出は、共和党の反対で断念されました。
オバマ政権の改革法は、保険加入者に補助金を支出し、保険会社への規制を強めることで、カバー範囲を広げ、保険を購入しやすくしようとするものです。

“国民皆保険制度がない米国では国民の4千万人超が無保険状態で、2019年には5400万人に達する。保険会社の支払い拒否や医療に伴う破産も社会問題化。法案は中低所得層に税額控除や補助を付与した上で、国民の保険加入を事実上義務化。保険料高騰を抑制し、既往症による加入拒否などを禁ずるため保険業界への規制を強める。”【10年3月22日 毎日】

しかし、判決は保険の商品としての側面を重視し、「民間会社から保険を購入するかしないかの個人の決定」を立法措置で縛ることは「憲法上の限界を超える」と判断しています。

オバマ政権が内政の最大成果として誇示する医療保険制度改革法に高裁が違憲判断を下したことで、同法に反対する野党・共和党が、大統領選挙の争点として、法律撤廃に向けた攻勢をさらに強めるのは確実と見られています。

紛糾必至の米財政特別委員会 失敗すれば「トリガー条項」発動
先日、なんとかかんとかデフォルトを回避した財政問題についても、決着した訳ではありません。
今後は、超党派の特別委員会で11月下旬までに財政赤字削減の具体案を策定する段取りになっています。
しかし、増税を阻みたい共和党と、社会保障関連費削減を最小限に抑えたい民主党との新たな攻防の舞台となることが予想されています。

****米財政特別委12人 増税めぐり紛糾必至 茶会系議員も選出*****
米議会は11日、財政赤字削減を協議する超党派の特別委員会のメンバー12人を決定した。一度は撤回した増税案の復活を狙う与党民主党に対し、野党共和党は保守系草の根運動「ティーパーティー(茶会)」系の議員も送り込み、増税阻止の構え。財政不安と米国債格下げが世界経済に波紋を広げる中、激しい攻防は必至の顔ぶれとなった。

新人議員ながら、特別委のメンバーで最も注目が集まりそうなのが共和党上院のツーミィ氏だ。
ツーミィ氏は昨年の中間選挙で茶会の強力な後押しを受けて議席を獲得。「ワシントン(米政府と議会)が努力すべきなのは、徹底した歳出削減だ」と訴える。
「小さな政府」を掲げ増税に猛反対する茶会系議員は、連邦債務上限引き上げ交渉でも「歳出を削れ」と主張し党指導部を突き上げた。
特別委に選出された他の共和党議員も民主党が重視する社会保障制度の見直しを含む大幅な歳出カットを求めている。

民主党は米景気の減速で歳出削減には慎重だ。
とくに下院ナンバー3のクライバーン氏を特別委に送り込んだペロシ下院院内総務は「赤字を減らす一方で、社会保障も強化すべきだ」と安易な野党への妥協にくぎを刺す。
オバマ大統領も11日にミシガン州で行った演説で、「億万長者のための税制の抜け穴をふさぎ、大企業にも適切な税負担を求める」との持論を強調し、特別委にプレッシャーをかけた。

紛糾必至の論議の調整役は、共同委員長を務める民主党上院のマリー氏と共和党下院のヘンサーリング氏に委ねられそうだ。ともに指導部の一員で両党に太いパイプをもつが、委員長としての権限を分け合ったため、かえって論議をまとめきれない懸念も残る。
大統領選に向けた動きも加速するなか、特別委には市場や同僚議員など“外野”からの牽制(けんせい)も強まりそうだ。(中略)【8月13日 産経】
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特別委員会は11月に赤字削減策を報告し、議会が12月23日までに採決することになっています。
もし、特別委が削減策をまとめられなかったり、議会で否決された場合は、「トリガー(拳銃の引き金)条項」に基づき13年1月から10年間にわたり、高齢者向け医療保険などから計1.2兆ドルの歳出カットが強制的に始まるため、先日のデフォルト騒ぎのような緊張が今後再度高まることが予想されます。
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