(14日、インドネシア・ジャカルタの日本大使館で開かれた、日本から帰国した看護師候補らを対象にした就職説明会 【10月14ニコニコニュース】より http://news.nicovideo.jp/watch/np95206 )
【太陽光発電に、国家独立の夢も託して】
きょうはメインの国際ニュースを離れて、日本が関係している地道な国際的取り組みに関する話題2件。
最初の記事はパレスチナ・ガザ地区に関するものですが、ハマスが実効支配し、イスラエルの封鎖が続くガザ地区の公務員が日本で研修を受けている・・・というものです。
****ガザに太陽光発電を 電力不足、半日停電も パレスチナ公務員ら関西で研修****
混乱が続いた中東・パレスチナ自治区のガザ地区に自前の太陽光発電を導入したいと、自治政府エネルギー天然資源庁のナジャール・オサマさん(37)が、関西の企業や大学での約1カ月にわたる研修を終え、15日夜に帰国する。
パレスチナは国連に国家としての加盟を申請しているが、ガザの電力はイスラエル頼み。オサマさんは「自分たちのエネルギーが必要」と話し、外部に頼らない太陽光発電に、国家独立の夢も託している。
大阪市住吉区の大阪市立大学。オサマさんが、太陽光パネルにつながれた電力メーターをのぞき込んでいた。「小規模なシステムに興味を持っています。ガザでも使えそうですからね」
同庁再生可能エネルギー部長のオサマさんが参加したのは、太陽光発電導入計画を支援する国際協力機構(JICA)の研修。バングラデシュやヨルダンなど途上国12カ国の政府関係者17人と一緒だ。ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスとヨルダン川西岸を統治するパレスチナ主流派ファタハが今年5月に和解、4年半ぶりにガザからの来日研修が実現した。
高い技術が集積する関西で、メガソーラーの関西電力堺太陽光発電所のほか、パネルや蓄電池の工場、住宅メーカーなども訪れ、大小さまざまな太陽光発電について知識を深めた。
パレスチナの中でも、イスラエルによる封鎖が続くガザの電力不足は深刻だ。唯一の火力発電所は14万キロワットの発電能力があるものの、燃料不足で4万キロワットが限界。イスラエルから送電される12万キロワットにエジプトからのわずかな供給を足しても必要量にはほど遠い。
1日12時間の停電は当たり前。自家発電機を備える家庭もあるが、エジプトから地下トンネル経由で入る密輸燃料を手に入れなければ動かない。
あらゆる物資が欠乏するガザだが、自然が恵む日射量だけは豊富だ。乾燥して晴れた日が多い地中海性気候で、屋根に置いた集熱器で水を温めてシャワーに利用する家庭は多い。平和な国では太陽光は温室効果ガスを出さないクリーンエネルギーとして注目されるが、オサマさんは「私たちにはサバイバルのエネルギーです」と話す。
太陽光発電を最優先で設置したいのは、中核の医療施設だという。自家発電装置は備えるが、手術や人工透析など電気を切らすことができない病院でも密輸燃料に依存している。自前の太陽光発電なら、送電網が寸断されても影響を受けることはない。
日本政府はイスラエルとの共存を支持し、さまざまなパレスチナ支援を行ってきた。初来日したオサマさんは「ガザにいる方が日本の国旗をよく見かけるほどです」と言う。
資金など克服すべき課題は多いが「独立のシンボル的な意味もある太陽光発電の導入をぜひ実現したい」と強調した。【10月15日 産経】
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一見、毎日紙面を賑わすパレスチナ情勢とは無縁のような、地味な公務員研修の話題ですが、これもハマスとファタハの関係改善という大きな流れがあって実現したものとのことのようです。
ハマスとファタハによる自治政府暫定内閣の組閣交渉は、首相を含め人選で難航が伝えられていましたが、最近ではあまり新しいニュースは目にしていません。
ガザ地区公務員のJICA公務員研修参加が可能となっているということは、それなりに交渉も継続しているということでしょうか。少なくとも決裂はしていないということでしょう。
それはともかく、ガザ地区のようなインフラが整っていないところでは、太陽光発電というのは良い試みではないでしょうか。仮に、イスラエルの封鎖が解けても、大規模発電施設に頼らないユーザーによる小規模発電システムは非常に有益かと思います。
ガザだけでなく、電力事情に恵まれない地域は世界中に存在しています。
国家プロジェクトによる発電所建設・送電網整備を待つよりは、援助団体などによる太陽光発電の普及は現実性がありそうです。
【ジャカルタの日本大使館で就職説明会】
もうひとつは、日本で看護師を目指したものの国家試験に合格できずに帰国したインドネシアの看護師候補に関する話題。インドネシア国内での身の振り方について、日本大使館で就職説明会が開かれたそうです。
****日本から帰国の看護師候補らに就職説明会 インドネシア****
日本で看護師を目指したものの国家試験に合格できずに帰国したインドネシアの看護師候補らを対象に、初めての就職説明会が14日、ジャカルタの日本大使館で開かれた。日本での経験や日本語力を生かして母国で就職できるよう、後押しするのが目的だ。
経済連携協定(EPA)に基づいて2008年に第一陣として訪日した104人のうち、約6割がすでに帰国。説明会にはこのうち数十人が参加した。日本語がある程度話せるうえ看護の知識もあるということで、インドネシアにある日系企業や診療所など28社の担当者が、雇用条件などを説明した。
参加者によると、日本の国家試験の勉強で一番難しかったのは「医療用語や専門的な日本語を漢字で読み書きすること」だったという。「日本に行くまで、日本語に漢字が何百もあるなんて知らなかった」「患者のお年寄りの話す言葉がわからなかった」という声もあった。【10月15日 朝日】
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看護師研修制度は限られた時間内での国家試験合格を条件にしており、その厳しいハードルがこれまでも話題になっていました。そうした研修制度の在り方については今後の検討の余地があるでしょう。
それはともかく、帰国を余儀なくされた者がどんな思いで日本を去るのか気になっていました。
本人のためだけでなく、せっかく日本で研修した参加者を“日本嫌い”にせず、今後の両国間の架け橋になってもらうという日本のためにも、大使館が就職の後押しに乗り出すのは非常によい試みに思われます。
単に“後押し”にとどまらず、日本政府としてのより積極的な斡旋活動があってしかるべきかと思います。
【「漢字が日本語をほろぼす」】
日本の国家試験の勉強で一番難しかったのは“漢字”だったとのことですが、これは容易に想像できることです。
たまたま、きょうTVで、「漢字が日本語をほろぼす」(角川SSC新書)の著者、田中克彦氏の話を聞きました。
漢字の存在は、日本語の表現を豊かににする“長所”とみなされることが多いかと思いますが、田中氏は「日本人には「ひらがな」というすばらしい発明品があるにもかかわらず、明治の開国期に多くの書生たちが西洋のことばを漢文で翻訳して輸入したため、せっかく江戸時代までに庶民によって培われてきたカナとかなを使った日本語の文章が、漢字ばかりの文章になってしまったのだ。
そして、世界中見回しても、漢字にしがみついているのは日本だけという事実を知るべきである。ヴェトナムも韓国も漢字を捨て、中国までも簡易体(略した漢字)を書くことが一般的なのだ。
日本語が21世紀のグローバル時代を生き抜くために、いまこそ漢字地獄から脱出して、漢字から日本語を解放しよう!!」【Amazonの内容紹介より】と主張しています。
漢字が難しいのは外国人にとってだけではなく、日本人にとっても同様です。
現実には、コンピュータによる文章作成の一般化によって、自分では書けない難しい漢字を使って文章を書くことが多くなっており、漢字の使用は増える傾向にあります。
読めるけど、ワープロソフトで変換はできるけど、自分では書けない・・・・そんな文字を使用するといううのも、確かに奇妙な現象です。漢字は、コンピュータ依存の文字という世界でも稀有の存在になりつつあります。
ある程度馴れてしまうと、漢字はビジュアルで意味が把握しやすく、文章スタイルとしても“格好がつく”ような感じ(錯覚?)もするため、なかなか手放し難いものがありますが、コンピュータに頼ったいたずらに難しい漢字使用は“品がない”と慎むべきでしょう。
12日にはジャカルタで、看護師・介護福祉士候補者としての来日を目指す200人の日本語研修の開講式も行われています。