孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフガニスタン  米兵銃乱射事件で高まる相互不信 相次ぐ外国兵士殺害

2012-03-29 21:12:14 | アフガン・パキスタン

(カンダハル近郊 アフガニスタン警察と共にパトロールする米兵士 “flickr”より By The U.S. Army http://www.flickr.com/photos/soldiersmediacenter/5635245560/

相次ぐ外国兵士殺害事件
アフガニスタンで民間人16人(事件後死亡した後重症者を含めると17人)を射殺した米兵の訴追が、アメリカ国内の軍事法廷で開始されています。

****アフガンで乱射の米兵訴追へ 軍事法廷、17件の殺人で****
アフガニスタン南部で今月11日に民間人16人を射殺したとされるロバート・ベイルズ2等軍曹(38)について、米軍事法廷が17件の殺人罪などで23日にも訴追手続きを始める。AP通信が米当局者の話として報じた。軍事法廷では、4度の派兵がベイルズ2等軍曹の心身に及ぼした影響なども焦点になる。

同通信によると、軍事法廷で告げられる罪状は、子ども9人と大人8人に対する計17件の殺人や6件の殺人未遂など。米メディアは、17件の殺人罪になった理由について、16人の被害者以外に重傷者の1人がその後亡くなったためとの見方を報じている。

2等軍曹は米カンザス州の米軍基地内にある収容施設で拘束されている。弁護士は、イラク戦争に3回派遣された後アフガンに向かった2等軍曹が、戦闘時の負傷などで心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんでいたなどと主張している。【3月23日 朝日】
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これまでもアフガニスタン住民の反米感情は強いものがありましたが、この事件を契機に米兵など外国兵士の報復的殺害が頻発しています。

****外国兵士が殺害される事件相次ぐ、米英の3人死亡 アフガニスタン****
アフガニスタンで26日、国際治安支援部隊(ISAF)の兵士が地元の治安要員に殺害される事件が2件発生した。

南部ヘルマンド州ラシュカルガーの基地の入り口で、アフガニスタンの軍人が英兵2人を射殺した。軍人の男はその場で射殺された。アフガニスタンの旧支配勢力タリバンは、犯人の男はタリバンと接触があったとしている。もっとも、タリバンは誇張した主張をすることが多い。

また、東部パクティカ州では、警察官とみられる男が米兵1人を殺害した。パクティカ州当局者によると犯行には2人の警察官が関与したが、2人ともNATO軍に逮捕されたという。

このところアフガニスタンの治安要員がISAFの兵士を殺害する事件が相次いでおり、今年のこの種の事件による死者は16人になった。【3月27日 AFP】
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【「アフガンには報復を重んじる文化がある」】
上記記事にあるように、アフガニスタンの治安要員がISAFの兵士を殺害する事件の続発によって、今年のアフガニスタンにおける米兵死亡者の3分の1は地元兵士によって殺害されている結果となっています。

****アフガン軍事作戦、米兵死亡者の3分の1は地元兵士が殺害 *****
アフガニスタンに従軍する米軍兵士の犠牲者は今年これまで46人に達し、このうちの約3分の1に当たる16人がアフガン軍兵士や治安要員らの発砲などを受け死亡したことが28日までにわかった。

アフガン東部にある地方警察の検問所近くでは26日、米兵1人がアフガン人警官とみられる男に銃撃され死亡している。米兵は検問所に近付いた際、撃たれていた。また、南部ヘルマンド州でも同日、駐留英軍兵士2人がアフガン軍兵士1人の発砲で死亡した。同州ラシュカルガにある地方復興支援チームの本部前で起きた事件で、ヘルマンド州知事の報道担当者はアフガン軍兵士と英軍兵士の間の口論が原因と述べた。

アフガンの治安維持に当たる米軍主体の国際治安支援部隊(ISAF)兵士の今年の死者総数はこれで計93人となった。(中略)

26日の英兵殺害事件などを受けアレンISAF司令官はワシントンのシンクタンクでの講演で、米兵による乱射事件への報復の可能性は否定出来ないとし、「アフガンには報復を重んじる文化がある」と指摘した。アフガン軍とISAFとの間には信頼感の後退があるとも述べた。【3月28日 CNN】
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更に、アフガニスタン国防省内で、アフガニスタン兵士によるテロ計画が発覚したと報じられています。

****アフガン国防省でテロ計画=地元兵士十数人を逮捕―米紙****
米紙ニューヨーク・タイムズは27日、アフガニスタンと西側の当局者の話として、首都カブールの国防省内で自爆テロ用のベスト10着以上が見つかり、同省に対する攻撃を計画したとして、アフガン兵少なくとも十数人が逮捕されたと報じた。

計画は26日に発覚し、ベストのほとんどは国防省の駐車場付近にある警備小屋で発見された。国防省のほか、政府職員が利用する通勤バスが標的だったとみられている。27日には国防省が「ほとんど封鎖状態」に置かれた。【3月28日 時事】
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これでは、一体敵はタリバンなのか、それともアメリカ・アフガニスタン双方が水面下で闘っているのかわからない状態です。
アメリカ兵士は、前のタリバン兵士だけでなく、後ろのアフガニスタン兵士からも狙われる危険があります。
こうした極度の緊張と不信感は、ベイルズ2等軍曹が起こしたような事件を再度引き起こすことにもなります。

一方で、多くのアフガニスタン民間人がアメリカなどの外国軍による戦闘行為の犠牲になっている現実もあります。

オバマ大統領は、治安権限をアフガニスタン側に移譲して、名誉ある撤退を進めたいところでしょうが、もともと難しかった撤退計画は、こうした相互不信の状況でますます困難になりつつあると言えます。

タリバンも変わりつつあるのか・・・?】
ところで、タリバンに関して、面白い記事がありました。
タリバンが投稿者からの質問に答えるウェブサイトを開設したそうです。

****アフガニスタン タリバン勢力、ウェブサイトを開設*****
アフガニスタンのタリバン勢力は、ウェブサイト「ジハードの声」の枠内に、その活動内容に関する質問に、組織の立場を反映する回答を与えるQ&Aフォーラムを開設した。投稿者の質問には、全て同勢力内で指導的立場にあるムジャヒド報道官が答える。インターファックス通信が伝えた。

ウェブサイト「ジハードの声」は、アフガニスタンのタリバン勢力が建国を主張する「アフガニスタン・イスラム首長国」の公式サイトとして設立されている。こうしたQ&Aフォーラムの開設は、超保守的イスラム原理主義運動を掲げるタリバン勢力が、先端情報テクノロジーに対する態度を変えているという事実を表す。こうした先端情報技術の大部分は、タリバン勢力が、アフガニスタンの政権を掌握していたときには禁止されていた。【3月28日 ロシアの声】
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タリバンは携帯電話で連絡を取り合いながら戦闘をおこなってるように、先端情報技術をすべて否定している訳でもありません。都合のいいものは受け入れています。

都市文化や外国からの文化などと殆んど接触がない状態で政権を掌握した、かつてのタリバン政権時代と、多くの異質な文化とも触れ合う機会を持った今のタリバンでは差があり、イスラム原理主義かつパシュトゥン族の慣習に依拠していると言われるタリバンの考えにも柔軟性が出てきた・・・・と言えればいいのですが。
今の状況では、米軍撤退後にタリバンが政治の中心に出てきそうな雰囲気ですので。
コメント
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