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(コネティカット州サンディフック小学校の犠牲者を追悼する人々 個人的には、追悼慰霊するだけでは、同様の事件は今後も繰り返されるだけだと思うのですが・・・。 “flickr”より By steffiekeith http://www.flickr.com/photos/86681342@N00/8274313430/)
【新車購入者に「自動小銃AK-47」を無料でプレゼント・・・という銃社会アメリカの惨劇】
銃社会アメリカでは、銃乱射事件が頻発しています。
2007年4月には、バージニア工科大学の銃乱射事件で33名(教員5名、容疑者1名を含む学生28名)が死亡しています。
今年に入っても、5月にはワシントン州のシアトルにある喫茶店などで男が銃を乱射して5人が死亡。7月にはコロラド州のオーロラにある映画館で男が銃を乱射して12人が死亡し、58人が負傷。さらに、今月11日にもオレゴン州でクリスマスシーズンの買い物客でにぎわうショッピングセンターに入ってきた男が銃を乱射して2人が死亡しています。【12月15日 NHKより】
今度はコネティカット州の小学校で惨劇は起きました。
****米小学校銃乱射:子供20人含む26人死亡 容疑者は自殺****
米東部コネティカット州ニュータウンにあるサンディフック小学校で14日朝(日本時間同深夜)、男が校舎内に侵入し銃を乱射した。AP通信によると、乱射で5歳から10歳の子供20人を含む26人が死亡した。容疑者の男(20)も自殺したとみられ、死亡した状態で発見されたという。米国の学校で起きた乱射事件として過去最悪レベルの大惨事となった。
AP通信によると、容疑者の母親は小学校の教師で、乱射により死亡したとみられる。【12月15日 毎日】
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“容疑者の母親は小学校の教師”という点については、町の教育当局者がこれを否定しているとの記事もあります。なお、容疑者自身が事件のあった小学校に以前は通っていたとも報じられています。
母親の殺害については、“容疑者が自宅で母親を殺害後、小学校に向かった疑いが強いものの、その経緯は明らかになっていない。容疑者と母親が長年不和だったとの情報もある”【12月15日 時事】とも報じられています。
使用した銃器については、「軍用の自動小銃」とか「殺傷能力が高い半自動式ライフル」と報じられています。
****自動小銃で全犠牲者に複数発=動機解明へ「有力証拠」も―米乱射事件****
米コネティカット州ニュータウンの小学校で児童ら26人が殺害された銃乱射事件で、州当局は15日、犯行には殺傷力の強い軍用の自動小銃が使われたことを明らかにした。犠牲者は全員、複数の銃弾を受けていた。これまでは拳銃が使用されたと報じられていた。死亡した児童20人は6、7歳の1年生だったという。
州警察高官は同日の記者会見で、自動小銃の件とは別に、自殺したアダム・ランザ容疑者(20)が犯行に至った動機を解明する「極めて有力な証拠」が見つかったと述べた。ただ、詳細は明らかにしていない。【12月16日 時事】
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“ランザ容疑者の自宅付近の住民によれば、容疑者に自宅で殺害された母親は銃を集めるのが趣味だったという。犯行に使われた銃も母親が購入したものとみられている”【12月15日 産経】とのことです。
拳銃などだけでなく、自動小銃が普通に購入できること自体が日本的常識ではなかなか信じ難いところですが、09年には、アメリカ・ミシシッピ州にあるトラック販売店の、新車購入者に対して「自動小銃AK-47」を無料でプレゼントする・・・という販売促進策が話題になったこともあります。
この販売会社は元々新車購入者に対して拳銃引換券か250ドル分のガソリン引換券を提供するサービスを実施していたそうです。なお、顧客に直接自動小銃を手渡すのではなく、保持許可証を確認した後、銃砲店で利用できる引換券を提供する形だそうです。
【「今日はその日ではない」・・・・その日はいつ?】
当然ながら、今回のような銃乱射事件が起きるたびに、銃社会の弊害を訴え銃規制の促進を求める声も出ることには出ますが、それ以上にアメリカ社会に根付いた銃の存在は大きく、銃規制が大きな動きとはならないことは、これまでもたびたびブログでも取り上げたところです。
銃乱射事件が起きると、人々が自衛のために銃を購入に走る・・・というのが現実です。
****米銃乱射:再発防止に苦慮 権利と規制の間で模索****
児童ら26人が犠牲になった14日の米東部コネティカット州ニュータウンの小学校銃乱射事件を受け、再発防止への「意義ある行動」を主張したオバマ大統領に続き、銃規制に熱心なニューヨーク市のブルームバーグ市長らも規制強化を訴えた。だが、憲法が「銃所持の権利」を認めている以上、銃暴力の根絶は難しく、実効性ある規制の模索が続きそうだ。
「意義ある行動では不十分。迅速な行動が必要だ」。全米600以上の市長らでつくる銃規制支持組織の共同議長でもあるブルームバーグ市長は、14日の声明でそう訴えた。
ブルームバーグ氏が求めるのは、銃購入希望者に犯歴や精神疾患歴がないかを調べる身元調査の強化だ。連邦法では調査が必要なのは登録業者から購入するときだけで、展示即売会では不要。法の「抜け穴」の最たる例だ。
過去には銃乱射事件を受け連邦法が強化された例もある。服部剛丈君射殺事件(92年)などを背景にクリントン政権が94年、殺傷能力の高い半自動式攻撃用銃器19種類の製造、販売、保有を禁じた。だが10年間の時限立法で、ブッシュ政権時に失効した。また、連邦最高裁は08年、市民の拳銃所持を禁じた首都ワシントンの法律を違憲判断している。
今年7月、西部コロラド州の映画館で12人が殺害される乱射事件後は、「自衛」目的の銃購入が増加。こうした「米国人気質」も規制を困難にする。国民の権利意識の強さは、銃規制の動きをことごとく阻止する全米ライフル協会(NRA)に大きな政治力を与えている。「権利」と「規制」の間で、オバマ大統領は有効な再発防止策の構築に苦慮しそうだ。【12月16日 毎日】
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事件の起きたコネティカット州は銃社会アメリカにあっては規制の厳しい州だったようです。
****4番目に銃規制厳しい州での乱射、全米に衝撃****
コネティカット州の銃乱射事件が全米に大きな衝撃を与えたのは、同州が全米屈指の厳しい銃規制を実施していた点も背景にある。
銃規制強化を訴える民間団体は11月、コネティカット州の銃規制の厳しさが全米で4位と発表していた。
同団体によると、コネティカット州の銃規制は5段階評価で2番目の「B」。銃による死亡率の割合は全米で6番目に少なかった。
コネティカット州は、銃購入者の犯罪歴などについて、連邦政府より厳しい独自調査を行い、購入者には適格証明の事前取得を義務化。16歳未満の子供の手に触れる状態で弾丸を装填した銃を保管することも禁じている。
だが、今回の乱射事件で犯行後に自殺したアダム・ランザ容疑者(20)は、銃を購入できる21歳に達しておらず、犯行に使用した銃は母親が合法的に購入したものだった。【12月16日 読売】
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この点は今後の議論にどのように影響するのでしょうか。
「多少規制を厳しくしても事件は減らない。そもそも事件を起こすのは銃ではなく人である」という話になるのでしょうか。
ただ、「事件を起こすのは銃ではなく人である」といくら言っても、身の周りに銃が溢れていなければこんなに事件が頻発することもないように思えるのですが。
「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるため、人民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない」という憲法修正第2条の規定、「全米ライフル協会(NRA)」の政治的圧力だけでなく、アメリカ市民社会に新天地移住・西部開拓以来の銃への信奉があるため、銃規制を取り上げることは政治的には非常に難しいのが実情です。
先の大統領選挙中の7月に西部コロラド州の映画館で12人が殺害される乱射事件が起きても、オバマ、ロムニー両候補とも銃規制には殆んど触れることはありませんでした。
今回も、オバマ大統領には銃規制を進める考えはないようです。
*****「今日はその日でない」と銃規制議論で米大統領*****
オバマ米大統領は14日、児童ら26人が死亡したコネティカット州での銃乱射事件を受け、再発防止策の必要性を訴えた。
だが、銃規制の是非をめぐっては国民世論が二分しているほか、銃規制反対を掲げる野党・共和党や業界団体「全米ライフル協会(NRA)」からの強硬な圧力もあり、規制強化は進みそうにないのが実情だ。
大統領は14日、ホワイトハウスで記者団を前に涙ながらに読み上げた声明で、「私たちは政治と関わりなく、このような悲劇を防ぐための意味ある行動を取らねばならない」と強調した。しかし、カーニー大統領報道官は同日の記者会見で、銃規制に関する議論は「いずれあるだろうが、今日はその日ではない」と慎重な姿勢に終始した。
大統領は7月にコロラド州の映画館で乱射事件があった後も、銃規制で踏み込んだ見解を示さなかった。11月に大統領選を控え、銃規制が選挙の争点になるのを避けたとみられる。【12月15日 読売】
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大統領選挙も終わった今が「今日はその日ではない」というのであれば、「いずれあるだろうが」という銃規制の議論はいつ行われるのでしょうか。
銃規制を取り巻く環境はむしろ厳しくなっているようにも思われます。
連邦控訴裁判所は12月11日、銃の携帯を禁じるイリノイ州の法律が無効であると宣言しています。
****米連邦控訴裁判所、イリノイ州の銃規制に違憲判断****
米国民には家の外で実弾入りの銃を携帯する権利が憲法で保障されている――。連邦控訴裁判所は11日、こう判断を下し、銃の携帯を禁じるイリノイ州の法律が無効であると宣言した。最高裁が銃を携帯する権利を保障する合衆国憲法修正第2条を巡る主要ケースを次に扱う際には、今回の判決が潜在的に先例として考慮されるだろう。
第7巡回区控訴裁判所は2対1で、イリノイ州の議会が数十年前に制定した法律は違憲との判断を下した。この法律は、弾丸が込められた銃を家の外で携帯したり、弾が込められていなくとも容易に充填(じゅうてん)できる銃を携帯したりすることを、警察を除いて禁じている。
同裁判所は、弾が充填された銃を携帯する権利が修正第2条の条文からきていると述べた。この条文は「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるため、人民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない」と定めている。
リチャード・ポスナー判事は多数派の意見として、「家のなかで武器を“携帯する”という表現は、どんな時にもおかしな言い方だ」と指摘、「よって武器を携帯する権利は、家の外で弾が充填された銃を持ち運ぶことを暗示している」と書き残した。
連邦最高裁判所は2008年、ワシントンDC対ヘラー事件で、個人の拳銃携帯の権利を認める判決を下した。しかし、判事らは意見書のなかで、家の外で銃を携帯することを禁じる法律が修正第2条に違反するかどうかについては、ほとんど指針となる見解を示さなかった。
下級裁判所の中には、最高裁の決定が家の外で銃を携帯するいかなる権利をも拡大していない、と解釈するところもあった。今回の第7巡回区による影響力を持った判決は、全米の判事に銃の携帯に対する規制はますます疑わしいとの見解を喚起させる可能性がある。
第2巡回区控訴裁判所は最近、外部から見えないように隠して銃を携帯する許可証を制限するニューヨーク州の法律を擁護した。この「携帯に対する規制」を巡る法的訴訟は少なくとも他3カ所の巡回区控訴裁判所で係争中となっている。
今回のイリノイ州のケースで、州法に挑戦する住民を代表したデービッド・ジェンセン氏は「最高裁がこの問題について明確にルールを決めるまで、家の外における修正第2条の解釈を巡り、巡回区控訴裁判所のなかで見解の相違が続くことになる」と述べた。イリノイ州は家の外で弾が充填された銃を所持することを一律に禁じた唯一の州だった。【12月13日 ウォール・ストリート・ジャーナル】
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「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要である」という修正第2条制定当時(1791年)の政治・社会情勢と、犯罪への自衛のため個人が銃を求める現在の社会情勢では、前提とするものが全く違うようにも思えるのですが、アメリカ司法当局の判断はそうではないようです。
オクラホマでは、同様の事件が計画されていたことも報じられています。
コネティカットの事件が起きる前に計画・通報されていますので、事件の影響を受けた模倣犯ではないようです。
同時多発的に独立してこうした事件が計画されたり起こったりするというのは、社会の病状もそれだけ深刻であるとも言えます。
****オクラホマ州の高校で乱射計画=警察、18歳を逮捕―地元紙*****
米オクラホマ州バートルズビルの高校で乱射・爆弾事件を計画していたとして、警察当局は14日、同校に通う男子生徒(18)を逮捕した。地元紙タルサ・ワールド(電子版)が報じた。米国ではこの日、コネティカット州ニュータウンの小学校で26人が死亡する乱射事件が起きている。
警察によると、男子生徒は講堂に高校生を集めて銃を乱射し、警察が駆け付けたところで仕掛けておいた爆弾をさく裂させようと画策。12日、別の複数の生徒に実行への協力を求め、断れば殺害も辞さないと脅した。計画を知った高校側が13日、警察に通報した【12月16日 時事】
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