孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

オーストラリア  即日の党首選でギラード首相再選 過去の過ちに関する公式謝罪

2013-03-21 23:53:05 | 国際情勢
党首選実施の求めに対し、首相は即座の実施を明言
オーストラリアの政権与党である労働党では、党内支持を固める現党首・ギラード首相と、国民的人気が高い前党首・ラッド前首相の確執が続いています。
その労働党の党首選挙をギラード首相が「本日実施する」と急遽表明し、同日行われた選挙には対立するラッド前首相出馬せずギラード首相が再選されたという、オーストラリア政情に疎い人間には「どういうこと?」といった感のニュースが報じられています。

****党首選は本日!人気の前首相、不意突かれ不出馬****
オーストラリアのギラード首相(51)は21日、与党・労働党の党首選を同日中に行うと急きょ表明。
党首選は実施されたが、返り咲きを狙うケビン・ラッド前首相(55)らは出馬せず、ギラード氏が無投票で再選された。

21日の下院本会議で、労働党内でラッド氏に近い閣僚が、9月の総選挙に向け、党の支持率向上のため党首選を実施するよう求めると、首相は即座の実施を明言した。不意打ちを食らった形のラッド氏は「状況が整っていない」として不出馬を余儀なくされた。

労働党の支持率は、3月上旬のニューズポール社世論調査でも34%と低く、党内では国民の人気が高いラッド氏の復帰を求める声が根強い。ギラード政権は21日、注目が高かった報道機関への監督・規制強化のための法案を、成立のめどが立たないとして撤回する失態を演じた。首相は、これを機に再びラッド氏待望論が盛り上がる前に、先手を打って党首選に踏み切ったとみられる。【3月21日 読売】
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下記記事は今回党首選ではなく、ギラード首相がラッド前首相に圧勝した昨年2月の前回党首選に関するものですが、ギラード・ラッド両氏の間の抗争がわかります。

****豪労働党首:ギラード首相が再選 党内は結束不足露呈*****
オーストラリアの与党労働党は27日、所属国会議員による党首選を実施し、現職のギラード首相が102票のうち71票を獲得、対立候補のラッド前首相に大差をつけて勝利し、首相の座を維持した。

ただ、党首選では複数の主要閣僚が「ギラード氏では総選挙に勝てない」とラッド氏支持を打ち出すなど、党内の結束不足を国民に露呈。世論調査ではラッド氏がギラード氏を圧倒しており、来年末の総選挙前に党内で「ラッド待望論」が再燃する可能性もある。

ラッド氏は外相だった今月22日、訪問中の米ワシントンで「首相の信任が得られていない」として外相辞任を表明。一方、ギラード氏は23日、党内不和の原因だった権力闘争で「一気に決着をつける」として、党首選の実施を発表していた。

地元紙が発表した最新の世論調査では、回答者の52%が労働党党首にラッド氏を望むと答え、ギラード氏の26%の倍に上った。最大野党・保守連合との二者択一でも労働党支持は46%と5割を切った状態が続いている。豪AAP通信は「ラッド氏を党首に復帰させれば、次の選挙で十分に保守連合と戦える」との専門家の分析を紹介している。

2010年6月、副首相だったギラード氏は、当時のラッド首相に対し、支持率急落を理由に党首選の実施を要求。ラッド氏は辞任し、ギラード政権が誕生した。ギラード氏が今後、支持率上昇を実現できなければ、総選挙を前に辞任を求める党内の圧力が高まる可能性が高い。【2012年2月27日 毎日】
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今更勝ち目のない選挙に向けて陣頭に立つ理由はない?】
今回の突然の党首選実施については、“労働党の重鎮クリーン元党首は21日、党首交代論に決着をつけるべく首相に党首選を要求、ラッド氏に出馬を促した。これに対し首相は直ちに21日中の党首選で応じると表明。反主流派の足並みがそろわないうちに勝負を仕掛けた”【3月21日 時事】とのことですが、本当に突然の党首選だったのでしょうか?党内ではこういう事態も想定されていたということはないのでしょうか?
本当に突然の選挙実施だとしたら、即日で実施というのはあまりに強引で、反対派からの批判で大混乱しそうなものですが・・・・。

ただ、与党労働党は支持率で野党保守党に大きくリードされており、9月にも行われる総選挙では敗北することが予想されています。ラッド前首相が“今更勝ち目のない選挙に向けて陣頭に立つ意思はない”という話であれば、ラッド前首相が出馬しなかったのも、ギラード首相が“党首に立つ意思がないなら、党内で足をひっぱるようなまねはしないで!”という趣旨で党首選を強行したのも分かる気がします。

****連邦労働党支持率再び下がる****
党首もアボットがギラード上回る

3月18日付フェアファクス系紙は最新のニールセン世論調査を掲載した。その結果によると、連邦労働党は失地回復がならず、再び野党保守連合に水をあけられ、「首相適任者」でもトニー・アボット野党保守連合リーダーが、ジュリア・ギラード連邦首相を上回っている。

2010年の総選挙で労働党が、無所属議員、緑の党議員の支持で少数派内閣を樹立して以来、ギラード、アボット両党首は「不人気」レースを突っ走ってきたが、最近まで常にアボット氏が不人気でリードしてきた。
最近になってギラード氏の不人気ぶりがアボット氏を上回り始めている。ギラード政権はその実績ではかなり優れているが、内輪の目配りをもっぱらとする官僚的政治家や裏工作ばかりが得意な労組出身政治家揃いで、バラク・オバマ米大統領のように一般国民に顔を向け、政策を国民に納得させられる「雄弁家」がいないとの指摘も常にある。

調査は、有権者1,400人を対象に電話で実施したもので、政党支持率では労働党がわずかに1%上昇して31%に、対する保守連合は47%と大きく先行している。また、プレファレンス票集計後に相当する二党択一の質問でも労働党44%に対して保守連合56%と大きく隔たっている。党首同士の対決では、ギラード首相支持率が38%に対して不支持率が58%となっており、アボット保守連合リーダーは支持率43%に対して不支持率53%となっている。

また、ケビン・ラッド前首相を労働党党首として期待する率が62%あるのに対してギラード現労働党党首支持率は31%とちょうど2対1の比率になっている。しかし、9月の選挙前の党首交代の可能性についてギラード首相は、「あり得ない。憶測ばかりが広まっているがあり得ない」と否定している。

また、ラッド氏も今更勝ち目のない選挙に向けて陣頭に立つ理由はなく、「党首に返り咲く気は毛頭ない」と否定している。ただし、労働党支持者の間ではラッド支持、ギラード支持がほぼ均衡しており、前者が51%、後者が48%となっている。また、党首候補と見なされているビル・ショーテン、グレッグ・コンベー、ボブ・カー3氏についてはほとんど誰も見向きもしていない。【3月18日 日豪プレス】
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なお、即日の党首選が異例なら、ギラード首相は総選挙については今年1月、異例の長期事前公表を行っています。

“1月30日、ギラード首相がキャンベラのナショナル・プレス・クラブで講演を行っている。講演では選挙の年を迎えたギラード労働党政府が、いかなる政策課題、優先課題を掲げるのか、あるいは既に青写真が提示された、社会保障分野や教育分野における重要改革に関して、どの程度詳細な内容を公表するのかなどが注目されていた。ところがギラードは講演の中で、今年の8月12日に連邦総督に対して下院の解散を進言し、そして次期連邦下院解散および上院半数改選の同日選挙を9月14日に実施するという、「爆弾発言」を行っている”【3月2日 日豪プレス】

当然、保守党対策、党内対策など、いろんな思惑があっての「爆弾発言」だった訳ですが、そのあたりについては、【3月2日 日豪プレス】http://nichigopress.jp/nichigo_news/tenbo/47154/ に詳述されています。

【「生涯心に残る傷と苦しみを生み出した」と謝罪】
オーストラリア関連で、もうひとつ記事がありました。

****オーストラリア政府、強制的な養子縁組みで初めて正式に謝罪****
オーストラリアで戦後から20数年間にわたって未婚女性が出産した子どもが強制的に養子に出されていた問題について、オーストラリア政府は21日、初めて正式に謝罪した。

1951~75年にかけて、オーストラリアでは未婚女性など社会的に望まれない妊娠をした女性が出産した子どもが強制的に養子に出されていたことが上院の調査で確認されたことから、ジュリア・ギラード首相は21日の声明のなかで、「生涯心に残る傷と苦しみを生み出した」と謝罪の言葉を述べた。

上院が調査を行った当時の母親や子どもたちの証言から、およそ22万5000人の新生児が強制的に母親から引き離され養子となっていたことが明らかになった。

当時のオーストラリアは国民の大多数が保守的なキリスト教徒で、妊娠した未婚女性は親戚の元に送られるか、教会など宗教団体が運営する施設に入所させられていた。女性たちは出産前から生まれてくる子どもを養子に出すことを承諾する署名をしていたが、上院の調査から、女性たちは子どもを養子にだすことは避けられないとして強制的に署名させられたり、承諾書の署名が偽造されていたりしたことが分かった。 

養子に出された子どもたちの出生証明書は、全当事者の幸福のためには事実を「消し去る」ことが望ましいとの理由で里親となった両親の名で発行されていた。

このため女性たちが、後になって引き離された子どもたちを取り戻すことは困難となっていた。【3月21日 AFP】
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過去の誤った施策に関する謝罪ということでは、白人の入植に伴い2世紀にわたりオーストラリア先住民のアボリジニに対して行われた不当な行為について、2008年2月にラッド前首相が議会で謝罪した件が思い起こされますが、そのほかにも09年11月には「忘れられたオーストラリア人」に関する謝罪も行っています。

****孤児虐待の歴史に謝罪 英国から豪州へ 養護施設で強制労働*****
オーストラリアのラッド首相は16日、1930~60年代に、同国内の養護施設や孤児院で、同国だけでなく英国から連れて来られた孤児らが、強制的に働かされるなど精神的、肉体的虐待を受けていたことを認め、政府として公式に謝罪した。
ただ、豪州と同様に英国から送られた孤児を安い労働力として使っていたニュージーランド政府は、同国内の被害者にはすでに十分な補償は行ったとして、政府として謝罪する必要はないとしている。

ラッド首相は16日、キャンベラの国会で、被害者代表を前に演説し、「政府として謝罪する。皆さんは子供のときに説明もなく家族と引き離された。施設に入れられて、虐待を受けた。申し訳ない」と述べた。

豪州の調査によると、20世紀中に英国やマルタから送られてきた子供は6000人から3万人に上る。彼らはほとんど孤児とされたが、実際は家庭が貧しかったために親に捨てられたり、「より良い生活があるから」などと誘われたりしたほか、中には「旅行させるから」と言ってだまされて連れてこられたケースもあったという。

これら英国からの子供だけでなく、豪州国内で、家庭崩壊や母子家庭であることを理由に養護施設や孤児院に送られた子供も同様に強制的に働かされ、虐待を受けた。これらの子供たちは、特に「忘れられたオーストラリア人」と呼ばれ、約50万人に上るという。

豪政府は先住民のアボリジニと白人の間に生まれた子供に対しても、19世紀後半から1世紀にわたり、アボリジニの親から引き離して育てる「隔離政策」をとった。アボリジニを白人社会に同化させるためだ。ラッド首相は昨年2月、これについても公式に謝罪している。対象とされた子供は約10万人に上り、こちらは「盗まれた世代」と呼ばれている。【2009年11月17日 産経】
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過ちを素直に認め謝罪する勇気は称えられるべきものでしょうが、オーストラリアという国家は過去に相当のことをやってきている・・・という印象もあります。
ただ、それはオーストラリアだけの問題ではなく、どこの国も過去の歴史を振り返れば“負の遺産”というべき過ちは多々あります。やはりオーストラリア政府の謝罪する勇気を称えるべきでしょう。
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