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(「殺人」ではなく、運搬用の「LS3」と名づけられたアメリカの犬型軍用ロボット 4本の足があり、直立歩行できるほか、180キログラム以上の物を背負って約32キロメートル移動できるそうです。 人の指示に従って黙々と荷物を運ぶ様子は可愛げもあります。ただ、これにマシンガンがついて、更に自動化されると「殺人ロボット兵器」にも発展します。【2012年9月15日 チャイナネット】
これまでも何度か取り上げたように、最近の戦闘では無人機が非常に重要な役割を担うようになっており、その是非については多くの議論があるところです。
無人機はそれでも一応人間がコントロールしていますが、高度な人工知能などを備え、敵の識別、状況判断、殺傷まで全自動で実行する自己完結型の殺傷機能を持つ機械「殺人ロボット兵器」の出現が懸念されています。
“米国を中心に先駆的な兵器開発が進んでおり、部分的に自己完結型の殺傷機能を持つ機械が実現。韓国は北朝鮮との軍事境界線がある非武装地帯(DMZ)に歩哨ロボットを試験配備した。”【5月26日 日刊スポーツ】
体制側の「殺人ロボット兵器」と反政府「人間組織」が戦うという、ハリウッドSF映画のような事態も、そう遠くない将来のことかも・・・。
そこで、そうした「殺人ロボット兵器」の開発を禁止しようとする動きもあります。
****殺人ロボット兵器:国連理事会に報告書「開発一時停止を」*****
米国などが研究開発する「殺人ロボット兵器」について国連人権理事会(ジュネーブ)のクリストフ・ヘインズ特別報告者(超法規的処刑問題担当)は30日、「ロボットに生死(決定)の権限を持たせるべきでない」として研究開発の一時停止を求める報告書を初めて提出した。
殺人ロボット兵器については複数の国際平和・人権団体が4月に禁止キャンペーンを開始しており、導入への反対の動きが草の根レベルで広がりつつある。
殺人ロボット兵器は、頭脳にあたる組み込みコンピューターや、感覚器にあたる各種センサー装置を装備。人間などの標的を自動的に攻撃・殺傷する「自己完結型」への進化が懸念されている。
米国がアフガニスタンなどで使用する無人機は人間が遠隔操作しているが、殺人ロボット兵器は人の関わる度合いが無人機に比べ圧倒的に低くなる。
報告は、この兵器について、「戦時、平時を問わず生命保護の面で懸念が高まっており、国際人権法に反する可能性もある」と指摘した。そのうえで、「ロボットに生死(決定)の権限を与えるべきでない。法的責任の観点からも配備は受け入れられないかもしれない」とした。
また、各国に研究開発の一時停止を求め、国際社会が明確な政策を作るためにハイレベル委員会を設置することを推奨した。【5月31日 毎日】
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“人間を殺すかどうかの判断を機械に委ねるのは「道義的責任の欠落」”とのことです。
****「殺人ロボット兵器」で討議****
・・・・勧告をまとめたのは国連のクリストフ・ヘインズ特別報告者(超法規的処刑問題担当)。人権理を通じ、殺人ロボット兵器の試験、生産、使用などの凍結を宣言するよう各国に要請。専門家を交えた検討委員会を開くことも要求した。
勧告を盛り込んだ報告書では、ロボットが人間の遠隔操作ではなく、組み込まれたコンピューターのプログラムやセンサー装置により、敵の識別、状況判断、殺傷まで全自動で実行する「自己完結型」に進化することへの懸念も表明した。
敵兵のうち、戦闘の意思と能力を失った負傷者や、降伏しようとしている人まで殺す危険性を指摘。国際人権法や人道法の順守が困難になり、人間を殺すかどうかの判断を機械に委ねるのは「道義的責任の欠落」と批判した。ロボットを使えば自国兵が死傷する危険がないため、投入への心理的歯止めが弱まり、紛争頻発を招くとも述べた。
報告書によると、「完全な自己完結型の殺人ロボット」はまだ配備されていない。現時点では無人機のほか、物資輸送用の4足歩行ロボットや小型無人戦車などが開発されているが、いずれも人の手で遠隔操作されている。
英シンクタンクによると、無人機は昨年夏時点で11カ国が保有し、計56機種に上る。無人機の軍事利用はかつて米国やイスラエルにほぼ限られていたが、最近は中国などの新興国も活用。開発競争は過熱している。無人兵器への依存は、殺人ロボット兵器件導入へつながる可能性が高い。
人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチのスティーブ・グース氏は、殺人ロボット兵器について「道徳と法の一線を越える。意思決定には常に人間が関わるべきだ」と指摘。4月から同兵器の禁止キャンペーンに乗り出している。【5月26日 日刊スポーツ】
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「殺人ロボット兵器」には“敵兵のうち、戦闘の意思と能力を失った負傷者や、降伏しようとしている人まで殺す危険性”がるとの批判は理解できます。
理解はできますが、今現在使用されている兵器も似たようなものだ・・・という感もあります。
爆撃機から投下される爆弾は、“戦闘の意思と能力を失った負傷者や、降伏しようとしている人”はもちろん。民間人まで含めて一網打尽に殺戮します。投下後は、殺す相手の選別などに人間は関わっていません。
数十km先から撃ち込まれるミサイルも同様でしょう。
核兵器などその極致です。
地雷だって、いったん敷設されると、戦闘員・非戦闘員の区別なく殺戮します。(対人地雷は多くの国で禁止されていますが)
敵兵を殺すように教育された兵士も、「殺人ロボット兵器」と大差ないようにも思えます。
自動小銃での殺し合いならよくて、なぜ核兵器や「殺人ロボット兵器」が悪いのか?
所詮殺し合いである戦争の存在を前提にして、その道具である兵器に、道徳的観点、人道的観点を持ち込むと、よくわからなくなってきます。
「正義の戦争」と同様に、道徳的・人道的な兵器も幻想のように思えます。