(ガンジス川の洪水にのみこまれた、ヒンズー教の破壊をつかさどる神「シバ」の像=インド北部ウッタラカンド州で2013年6月18日、AP【6月20日 毎日】)
【1961~90年平均の14度を0.47度上回り、記録を塗り替えた】
地球温暖化の話は、ここ数年あまり大きな注目を浴びていないように思えます。
世界尾的に経済状態が芳しくない、交渉しても先進国と途上国の対立の構図から抜け出せない、温室効果ガス最大排出国の中国・アメリカに熱意がみられない、日本は地震で原発稼働が停止してしまった・・・などの状況では、さしあたり今現在の不都合とは直結しない温暖化の話が脇に追いやられるのも無理ないことかもしれません。
世界気象機関(WMO)は3日、2001~10年の気象を分析した報告書「異常気象の10年」を発表しました。これによると、当該10年間の世界平均気温は観測史上最高を更新しており、また、異常気象も多発しているそうです。
やはり、温暖化は着実に進行している・・・ということのようです。
****2000年代は「観測史上最暑の10年」、国連報告書 ****
2001年からの10年間の世界平均気温は、観測史上最高を更新したことが、国連(UN)が3日に発表した報告書で明らかになった。
同期間中の気温上昇はかつてない速さで進み、異常気象による犠牲者は37万人を超えたとされている。
国連の世界気象機関(WMO)が発表した2001~10年の世界気象に関する報告書によると、同期間の世界平均気温(陸上気温・海面水温の平均)は14.47度だった。
一方、1881年から残る気象観測記録の長期平均気温は14度で、WMOのミシェル・ジャロー事務局長は「2001~10年は、この期間全体で最も暑い10年だった」と述べている。
2001年から10年間の世界平均気温は、その前の10年間と比べて0.21度上昇した。1990年代の世界平均気温は、1980年代よりも0.14度高かった。地球の温暖化は、二酸化炭素(CO2)に代表される温室効果ガスの産業活動による排出など、人間の活動が原因とされている。
WMOの報告書は、139か国で行われた調査に基づいている。これらの国の94%近くが、2001~10年を観測史上最も気温が高かった10年間と記録している。また、同期間内に全国平均気温の最高記録を更新した国は44%に上った。
WMOによると、この期間に最も頻発した異常現象は洪水で、2010年にはパキスタンで2000人の死者を出し、2000万人が被害を受けたとされる。
同期間中の異常気象関連の死者数は、その前の10年間を20%上回り、37万人を超えた。主として2003年に欧州、2010年にロシアを襲った熱波によるもので、それ以前の10年間では6000人だった熱波による全世界の死者数は、2001年からの10年間では13万6000人に膨れあがった。【7月4日 AFP】
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“その前の10年間と比べて0.21度上昇”という、はっきりと体感できない長期的変動が、温暖化対策への取り組みを鈍らせる原因でもあります。
“0.21度”なんて観測誤差の範囲じゃないか?とも素人的には感じたりもしますが、このペースが100年続けば2.1度上昇するという数字でもあります。2.1度上昇すれば大変な影響が出ます。
なお、“1881年から残る気象観測記録の長期平均気温は14度で”というのは、14度というのがどの期間の平均なのか意味不明ですが、別記事によればこの10年間の14.47度という数字は、“基準としている1961~90年平均の14度を0.47度上回り、記録を塗り替えた”【7月3日 時事】ものだそうです。
ここ2~30年で0.5度近く上昇しているということであれば、確かに心配する必要がありそうです。
最近の異常気象・大規模自然災害としては、インド北部ウッタラカンド州を中心した洪水・土砂崩れの被害が懸念されています。
同地域では6月中旬の夏季の季節風(モンスーン)による豪雨のため、すでに約1000人の死亡が確認されていますが、7月1日時点で、約3000人がいまだ行方不明となっていると報じられています。
また、温暖化の影響を敏感に反応する北極海の状況に関しては、今年5月、氷の想定外の溶解によりロシアの観測基地が水没する危険に直面するという事態も起きています。
なお、“温暖化を招くとされる二酸化炭素(CO2)の大気中濃度は産業革命前の1750年から約39%上昇。「世界の気温上昇を招き、気象パターンに著しい影響を及ぼした」と分析している”【7月3日 時事】とのことです。
【アメリカ:2020年までに温室効果ガス排出量を05年比17%程度削減】
世界的な温暖化対策が前進するためには、なんといってもアメリカの積極的対応が必要です。
アメリカはこれまで欧州各国に比べ、温暖化対策においては消極的なイメージがありましたが、オバマ大統領は地球温暖化対策を強化する行動計画を発表しています。
背景には、異常気象多発による国民的関心の高まりや、シェールガス革命による天然ガス生産の増大というエネルギー事情が指摘されています。
****米温暖化対策 シェールガス革命が追い風に****
オバマ米大統領が、地球温暖化対策を強化する行動計画を発表した。
国内で二酸化炭素(CO2)排出削減を進めるとともに、中国やインドなどとの協力を含めて国際的な温暖化対策を拡充する内容だ。
CO2などの温室効果ガスの排出量は、世界で増加の一途をたどっている。中国に次ぐ排出大国の米国が温暖化対策に本腰を入れることは、世界全体の排出量削減の観点からも、意義は大きい。
オバマ氏の指導力と実行力が問われよう。
行動計画は、2020年までに温室効果ガス排出量を05年比17%程度削減する、という米国の中期目標を改めて確認している。
国内のCO2排出削減対策として、新規及び既存の発電所に新たに厳しい規制を導入するほか、石炭や石油よりもクリーンな天然ガスへの切り替えを促した。
水力や太陽光発電などの再生可能エネルギー倍増計画や、出力30万キロ・ワット以下の小型モジュラー炉の開発など原子力発電の維持・推進も盛り込んだ。
前途は容易ではあるまい。早くも電力会社は、厳しい規制で主力の石炭火力発電所が閉鎖に追い込まれかねないと警戒し、関連自治体や共和党も、雇用が奪われると反発を強めている。規制基準作りを巡り 紆余 ( うよ )曲折が予想される。
オバマ氏が大胆な温暖化対策の推進を打ち出した背景の一つに、暴風雨や巨大竜巻など異常気象で災害が増加していることへの国民の強い関心がある。行動計画は、災害に耐性の強い地域作りへ具体策を講じることも明記した。
シェールガス革命による天然ガス生産の増大が追い風になった点も見過ごせない。石炭から天然ガスへの転換で、CO2削減目標の達成は現実味を帯びてきた。国際交渉で米国の立場も強まろう。
京都議定書後の新たな国際枠組みは20年発効予定だ。すべての主要排出国が応分の責任を負う仕組みにすることが何より重要だ。
オバマ政権は、各国が自主的に目標を設定し、削減に努める緩やかなルール作りを目指すと見られる。削減義務を負うことに反発する新興国を引き入れるには、有効な手法と言える。
日本も積極的に関与したい。
安倍政権は、鳩山元首相が09年に唐突に打ち出した「20年までに1990年比25%削減」という非現実的な目標の撤回を表明している。まずは経済活動に目配りした現実的な目標に改め、国際社会の理解を得ていくことが肝要だ。【7月3日 読売】
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【規制強化で家電製品のエネルギー効率引き上げ】
アメリカの温暖化対策においては、家電製品のエネルギー効率引き上げが大きな役割をはたしているとの指摘もあります。
****オバマ式温暖化対策の重要ポイントはエコ家電****
消費者向け製品をもっとエコにするよう求めれば、アメリカでは大きな効果が期待できる
オバマ米大統領は先週行った演説で、地球温暖化防止に取り組む新しい行動計画を発表した。
骨子は発電所を対象とする二酸化炭素の排出規制やクリーンエネルギーの活用促進だったが、そこには大きなポイントが隠されていた。家電製品のエネルギー効率引き上げである。
(中略)
誰もが得する規制強化
電球を例に取ろう。07年に成立したエネルギー自立・安全保障法の下で、電球のエネルギー効率を25%上げ、従来の100ワット電球の明るさを72ワット以下の電力で確保することが求められた。
そのための簡単な策は、白熱電球の製造をやめて蛍光灯やLED電球に特化することだ。だが業界はそうせず、従来の電球の効率を上げた。おかげで消費者の選択肢は、さまざまな種類の白熱電球、電球型蛍光灯、LED電球と広がっていった。
しかも規制の対象から外れている従来型の白熱電球の売り上げはここ1年半で急落している。
値段は高くても耐久性のある製品のほうが経済的と見なされたためだ。このままいけば、15年には消費者にとって年60億ドルの節約になると政府は推定する。
自動車の燃費規制も業界に好影響を与えた。オバマ政権は国内で販売される乗用車・小型トラックの平均燃費を25年までに1ガロン当たり54・5マイル(1リットル当たり約23.2キロ)にするよう求めた。
すると業界は、もともと消費者が望んでいた燃費改善を実現させた。
今年5月には、1ガロン当たりの平均燃費が07年10月の20・1マイルから24・8マイルへと25%近く改善していた。40マイルを超えた車も多い。それでいて性能が下がったり、価格が上がるといったこともない。
他の業界でも、政府はエアコンや冷蔵庫のエネルギー効率を規制し、メーカーはそれに応えながら消費者の満足度を向上させてきた。オバマは演説でこの点を強調した。
「プラスチックに含まれる発癌性物質や有鉛ガソリンを規制しても、対象業界は滅びなかった。アメリカの技術者はより良い代替品を生み出した。フロンガスを規制したときも、世の中から冷蔵庫やエアコンや脱臭剤が消えることはなく、大きく環境を傷つけない方策が生まれた」
高い規制基準を満たすことが、どの企業にとっても簡単なわけではない。だが消費者向け製品のエネルギー基準は、誰にでも「平等」な市場を生んでいる。【7月9日号 Newsweek日本版】
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日本も、そろそろ原発稼働停止を言い訳にしない対策が求められます。
【究極の温暖化シナリオ】
なお、20億年後には太陽活動の変化により、地球上の生物はわずかな微生物以外はすべて死滅してしまう・・・という、究極の温暖化予測もありますが、まあ、これはいかんともしがたいといころです。
20億年後の話など全くピンとこないというのが実感です。
もし、数億年後も知的生物が地球上に残っていれば、地球外惑星への避難などを考えるのでしょう。
****20億年後「地球を継ぐ」のは微生物****
今から20億年後の地球は、ますます燃え盛る太陽に焼かれ、山や洞窟の中に点々と残った水たまりに閉じ込められた微生物だけが最後に生き残る──天文学者らの国際会議で1日に発表された未来の地球の暗いシナリオだ。
発表は、英セント・アンドリューズ大学で開かれている英王立天文学会(RAS)主催の天文学会議で、同大の宇宙生物学者ジャック・オマリージェームス氏が行った。
次の10億年の間に太陽が年を取って今よりも明るくなり、地球の温度調整システムが崩壊に至る可能性をコンピューターモデルによって示した。
水分の蒸発速度の上昇と、雨水との化学反応によって、植物が光合成を頼っている大気中の二酸化炭素(CO2)量が激減し、植物に依存している動物もまた打撃を受ける。
そして20億年のうちには海が完全に干上がり、最後に残って地球を「引き継ぐ」のは、太陽からの強力な紫外線放射と灼熱に耐えることができる極限環境生物(極限条件下で存在する微生物)だという。
RASの報道資料の中で同氏は「遠い未来の地球は、この時点までに生命にまったく適さない環境となっているだろう。全ての生物には液体水が必要で、従って生き残った生物(の生息場所)は、おそらくより温度の低い高地や洞窟、地下などに残る水たまりに限られる」と述べている。
しかし同氏のモデルによると、28億年後にはそうした「最後の砦」も消滅する運命にある。【7月2日 AFP】
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