(アレッポ北部マクスード地区のクルド人 シリアにおけるクルド人の立場は複雑です。以前はアサド政権寄りでしたが、マクスードでは反体制派に協力しています。地域によっても対応が異なるようです。政府軍でも反体制派でもない第3勢力的な存在となっています。 “flickr”より By Thomas Rassloff http://www.flickr.com/photos/20674281@N03/9209194586/in/photolist-f2MwH1-f2MvWb-f2Mv4S-f2MwqG-f2xfgp-f2xhyi-f2xh2v-f2Mwmy-f2xfC4-f2MwZq-f2Mwvs-f2MvLL-f2xhbz-f2xgnD-f2MwRj-f2Mwzq-f2xfX2-f2Mwij-f2vbzB-f5eeHZ-f5hah8-f3hJNK-f2LkeE-f6L1nh-f44VjL-f7bZZH-f2MweU-f3nUAR-f4dvwJ-f7Ykzd-eZG3xV-eZWoif-f1r6Gm-f5cDgR-f5s47g-f5s3MX-f81iaQ-f4xWPF-f4aEQi-f31Hyo-f3ENMW-f736hs-f3BwK6-f4ugKj-f6vawj-f13sL2-f13sQK-f1bQ3f-f84P7U-f84N2y-f7Pyic)
【内部対立、周辺国の干渉 和平枠組みも主導できず】
軍事的にも隣国レバノンのイスラム武装組織ヒズボラの支援を受ける政府軍の攻勢にさらされているシリア反体制派ですが、反体制派内部の対立から統一組織「シリア国民連合」新代表が選べない組織的混乱も続いていました。
新代表については、ようやく選出できたようです。
****シリア国民連合、新代表にジャルバ氏を選出****
シリア反体制派の統一組織「シリア国民連合」は6日、トルコのイスタンブールで会合を開き、新しい代表にアハマド・ジャルバ氏を選出した。同連合の報道官が明らかにした。114人の評議員による投票の結果、サウジアラビアと関係が深いと目されているジャルバ氏は決選投票で55票を獲得し、52票の得票にとどまったムスタファ・サッバーハ氏を破った。シリア国民連合のアフマド・モアズ・ハティブ前代表は、シリア内戦に対する世界各国の無作為に抗議して5月に辞任していた。新代表は5月末に選出される見込みだったが、活動方針をめぐりシリア国民連合内部で対立があったほか、中東諸国が新代表選出に影響力を行使しようとしたことから延期されていた。ジャルバ新代表は1969年、トルコと国境を接するシリア北東部の都市カーミシュリー生まれ。イスラム教スンニ派で、シリア国民連合ではシリア反体制派に武器を供与するようアラブおよび西側諸国を説得する仕事に携わった。【7月7日 AFP】
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反体制派「シリア国民連合」は、米露が提唱する国際和平会議には参加しない意向を表明しています。
反体制派が要求しているアサド大統領の退陣が確約されないということもありますが、軍事的に劣勢にたたされている現状での交渉は不利と判断したようにも思えます。そのことは、和平交渉の枠組みづくりをリードできない反体制派の苦しい立場を示しています。
****シリア:戦況に変化なければ和平会議不参加…反体制派議長****
内戦が続くシリアの反体制派主要組織「シリア国民連合」のジャルバ議長は7日、ロイター通信のインタビューに応じ、アサド政権の攻勢が続く戦況に変化がない限り、米露が提唱する国際和平会議には参加しない意向を表明した。同会議を巡って反体制派はすでに、アサド大統領の退陣が確約されない場合には不参加との立場を表明していた。
ジャルバ氏は6日の総会で新議長に選出された。亡命していたサウジアラビアとの関係が深いとされ、ロイターとのインタビューでは「サウジアラビアから近く新型兵器が供与される」との見通しを示した。またシリアで9日開始の断食月(ラマダン)期間中の停戦を呼びかけた。【7月9日 毎日】
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アメリカ、欧州はこれまで控えていた反体制派の軍事的支援に踏み切ることを表明はしていますが、その具体的内容は明らかではなく、戦局を転換できるような重火器の大量供与や寄港禁止区域設定などは含まれないのではないかとみられています。
もし欧米が深く関与すれば、ロシアも対抗して軍事支援を強めるでしょうから、いよいよ代理戦争の泥沼にはまってしまいます。
「サウジアラビアからの新型兵器」が何かは知りませんが、戦力面では苦しい状況が今後も続きそうです。
欧米が反体制派への武器供与を渋る理由のひとつが、供与された武器が反体制派内で軍事的に存在感を強めているイスラム過激派組織の手に渡ることへの懸念があります。
【アルカイダ系組織「自由シリア軍幹部を皆殺しにする」】
反体制派が欧米からの本格的な軍事支援を受けるためには、イスラム過激派との関係を断つ必要がありますが、それは軍事的にみて大きな部分を失うだけでなく、反体制派内の混乱・対立を激しくすることにもなります。
****シリア:反体制派で内紛か 共同作戦協議中に幹部殺害****
内戦が続くシリアの反体制派主要武装組織「自由シリア軍」幹部のハマミ司令官が11日、北部イドリブで、アサド政権側に対する共同作戦について協議していた国際テロ組織アルカイダ系のイスラム武装組織のメンバーに殺害された。
ロイター通信が報じた。殺害の経緯は不明だが、「反アサド」で共闘する自由シリア軍とアルカイダ系組織の対立が深まれば、戦況がアサド政権側に有利に働く可能性が高い。
ロイターによると、ハマミ司令官は、イラクに拠点を置き反体制派として参戦しているアルカイダ系組織「イラク・レバント・イスラム国」のメンバーとの会談中に殺害された。アルカイダ側は、自由シリア軍のスポークスマンに電話で連絡し、「自由シリア軍幹部を皆殺しにする」と通告したという。
自由シリア軍は、アルカイダ系組織とも協力し、アサド政権側に対抗してきた。だが欧米諸国がアルカイダへの流出を懸念し、武器供与に消極的なことから、今年4月に決別を宣言した経緯がある。ただ戦闘現場では、一部で共闘する状態が続いているとされる。【7月12日 毎日】
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【エジプト暫定政権の離反】
反体制派にとっては、エジプトでのクーデターによるモルシ政権崩壊も大きな痛手です。
****シリア反体制派と距離 エジプト、入国制限や拘束****
エジプトのマンスール暫定政権が、モルシー前大統領が積極支援してきたシリア反体制派への態度を硬化させている。
エジプトは反体制派への直接的な武器供与は行っておらず、シリア内戦の戦局への影響は限定的とみられるが、同国の首都カイロをアラブ諸国へのロビー活動の拠点とする反体制派の政治指導者らにとっては痛手となりそうだ。
地元報道によると、エジプト当局は3日のクーデター後、これまではほぼ自由に入国できたシリア人に、入国査証(ビザ)やエジプト治安機関の許可証取得を義務づけると決定、シリア人の拘束や退去も相次いでいる。
6月中旬にモルシー前大統領がアサド政権との断交を宣言して閉鎖されたカイロのシリア大使館は、今月7日に再開した。
イスラム原理主義組織ムスリム同胞団出身のモルシー氏は、自身と同じイスラム教スンニ派が中心の反体制派を一貫して支援。同胞団幹部からは、シーア派の一派、アラウィ派が主導するアサド政権への「ジハード(聖戦)」呼びかけが相次ぎ、多数のエジプト人が反体制派に参加した。
しかし、主に宗教的動機でシリア問題への介入を深めたモルシー氏の態度は、軍の逆鱗(げきりん)に触れ政変の誘因の一つになったとも指摘される。シリアの同胞団組織などイスラム勢力が反体制派の一角をなしていることも、軍の警戒を呼んだ。
反体制派は、カイロが本部のアラブ連盟(加盟21カ国・1機構)などでの働きかけで支援を引き出してきたが、同連盟の事務局長ポストを握るエジプトが態度を変え始めたことで、活動が難しくなる可能性がある。
他方、実際の戦闘に従事する反体制派部隊を支えているのは、カタールやサウジアラビアなど湾岸産油国からの武器や資金だ。
湾岸諸国は政変後、相次いでエジプトへの巨額支援を発表し暫定政権支持を鮮明にした。ただ、専門家の間では「湾岸諸国には、敵対するイランの支援を受けるアサド政権と戦うことに大きな意味がある」とされ、エジプトと同調する形で対シリア政策がすぐに変化する可能性は低い。【7月12日 産経】
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そもそも、“反体制派=弾圧への抵抗勢力、民主化勢力”というとらえ方自体が実態にそぐわないという話は、7月3日ブログ「シリア 反体制派内のイスラム原理主義的傾向への懸念」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130703)で取り上げたところです。