(2011年5月 ランペドゥーサ島沿岸で保護されるチュニジアからの難民 “flickr”より By News Agency http://www.flickr.com/photos/44858852@N04/6152406687/in/photolist-anEGan-anHz2d-dfKRaE-a9DTQR-fwqwgS-fwbhMP-fwquiW-fwbeZ4-fwbgpx-fwbgUz-fwqvYh-fwqvf1-fwquNh-fwbeq2-fwqwJU-fwbfn2-fwbhVD-fwbfcP-fwqvGU-fwbfVM-fwbgak-fwbgHt-fwqwNU-fwqurY-fwqvBG-fwbeD8-fwqu6E-fwqwSw-fwbgKV-fwqx8L-fwbhHc-fwqxrN-fwbh4t-fwbfQe-fwqtCL-fwqtTu-fwqx4b-fwqv5N-fwbhZP-fwqwuq-fwqw8C-fwquRh-fwbhCV-fwqwYj-fwquZb-fwqu2C-fwbgzv-fwqtNG-fwbf8Z-9kfgp6-fwqvko)
隣国トルコ、ヨルダン、レバノン、イラクなどへのシリア難民、および受入国の窮状については、9月25日ブログ「シリアの未来が決まるのは戦場だけではない 困窮する国内外の難民」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130925)でも取り上げました。
また、シリアから遠く離れたスウェーデンの決断についても、9月4日ブログ「スウェーデン シリア難民、希望者全員受け入れを表明」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20130904)で取り上げました。
なお、スウェーデンについては後日談があります。
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スウェーデンがシリア難民の不興を買っている。九月初旬に、スウェーデン政府はシリア人亡命希望者の全員受け入れ」を宣言したことで、トルコやヨルダン、レバノンなどシリア周辺国のスウェーデン大使館に移民希望者が駆けつけた。
これに驚いたスウェーデン政府は、わずか十日後には、「スウェーデン国内での申請に限る」と方針転換し、期待させただけにシリア釈民の失望は大きい。【選択 10月号】
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国内にも移民問題を抱えながら、受入を決断したスウェーデン政府ですが、見通しがいささか甘かったようです。
スウェーデンまでどうやって行くのか・・・という話になりますが、シリアや北アフリカから欧州へ渡る現実的方策としては先ずイタリアを目指すルートがあります。
****海路南イタリアに逃れるシリア難民増加****
この数週間、不法なボートで危険を冒し、イタリア南部に逃れるシリア難民の数が急増しています。
「この40日間で、シリア難民約3300人が主にシチリア島に到着しています。このうち、230人以上が家族と一緒ではない子ども達です。また約670人は先週到着しています」とジュネーヴでのUNHCR記者会見でエイドリアン・エドワーズ報道官は述べました。
ある船には30人以上も乗っていたと話しています。その多くはエジプトからで、中にはトルコから来た人もいました。「大半は子どものいる家族で、脱水症状のため治療が必要な人もおり、乗ってきた船からそのままヘリコプターで搬送されたケースもありました。」(中略)
UNHCRは2013年初めから4600人以上のシリア人が海を渡ってイタリアに到着していると推定しています。そのうちの約3分の2が8月に集中しています。
エドワード報道官によれば、UNHCRが接触したシリア難民のほとんどがダマスカスからで、そのなかにはシリアで生まれたパレスチナ難民も多くいます。到着すると、レセプションセンターに移送されています。この数か月で多くのシリア難民はEUと国境を接する国からヨーロッパのほかの地域へ移動しています。
UNHCRが発表した最新の情報によると、2013年に入り、約2万1900人がイタリア南部に到着しました。7981人だった2012年と比較すると大幅に増加しています。
その出身国はエリトリア5778人(2012年には594人)、ソマリア2571人(2012年は1280人)、そしてシリア3970人(2012年は369人)です。【9月24日 国連UNHCR協会】
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上記記事にあるようにイタリア南部にはシリアだけでなく、ソマリア難民も多く来ていますが、命がけの危険な旅でもあります。
****ソマリア難民:イタリア沖で難破、82人死亡250人不明****
地中海に浮かぶイタリア最南端ランペドゥーサ島の沖で3日、約500人のソマリア難民らの乗った船が難破し、女性や子どもを含む少なくとも82人が死亡、約250人が行方不明になった。イタリア・メディアが伝えた。
ANSA通信によると、約150人が救出されたが、海中に落ちた難民の捜索作業が続いており、死者数は増えそうだ。衛星テレビ・スカイによると、船は燃料に引火し、火災が発生したという。
ランペドゥーサ島はアフリカから地中海を渡って欧州を目指す移民や難民の「玄関口」となっている。7月にはフランシスコ・ローマ法王が島を訪れ、地中海を渡る途中で死亡した移民・難民のために祈りをささげた。【10月3日 毎日】
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“スタンパ紙(電子版)によると、同国沿岸警備当局に位置を知らせるために難民が船上で燃やした毛布の火が広がり、沈没した”【10月3日 時事】とのことです。
このようにイタリア南部はアフリカ・中東からの難民の“窓口”にもなっていますが、当然ながらイタリアとしては困った問題です。
2011年には“アラブの春”で混乱した北アフリカから多くの難民がイタリア最南端ランペドゥーサ島に押し寄せました。
そのなかでも多数を占めたチュニジアからの難民は、チュニジアがかつてフランスの保護領だった経緯から、フランス語ができ、フランス国内に知人・親戚が多いという事情で、フランスが最終目的地でした。
イタリアは、“ランペドゥーサ島が移民であふれかえったとき、同国政府は4月5日前に上陸した亡命申請者すべてに一時滞在許可を発行した。そのほぼすべてに当たる約2万5000人が欧州内で消え、大半が言葉のわかるフランスを目指した。”【2011年 5月 6日 WSJ】という形で、体のいい“厄介払い”を行いました。
これにフランスが反発、イタリアとの国境管理を強化、難民を乗せた列車の入境を拒む事態となりました。
このフランスの措置は協定参加国間の人の移動の自由を認めたシェンゲン協定に反するとして、イタリア・フランス間で対立が高まりました。
結局、これを機に難民の大量流入などに対応した緊急措置導入を可能にするシェンゲン協定見直しが行われることにもなりました。