孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中央アフリカ  進行する「ジェノサイド(大虐殺)」 遅れる国際社会の介入

2014-02-19 20:52:09 | アフリカ

(首都バンギのムポコ国際空港では、滑走路のすぐそばで国内避難民約6万人が、水・食糧の不足、劣悪な衛生状況など、非常に過酷な環境で暮らしています。 “flickr”より By UNHCR UN Refugee Agency http://www.flickr.com/photos/25857074@N03/12431175793/in/photolist-jWv2t8-iYzbpy-iYAXhj-iYAtXY-iYyjSP-iYykan-iYzbpJ-iYzAMF-iYzAki-iYx2b8-iYzb8w-iYx23n-iYAsDA-iYxP64-iYzaVs-iYCcVW-iYzc1y-iYzaoA-jbjgvq-iYzaiL-jbhfiN-hUL8Dn-i9U9n6-jrqEP5-irXrPU)

アンチ・バラカの戦闘員たちはイスラム教徒を、国から出て行くか、殺害すべき「外国人」とみなしている
中央アフリカではキリスト教徒とイスラム教徒の対立から「ジェノサイド(大虐殺)」発生が懸念される状況となっています。
(1月30日ブログ「中央アフリカ 止まない暴力の応酬 滞る難民支援」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20140130参照)

中央アフリカの政治情勢に関する昨年3月以来の簡単な経緯は以下のとおりです。

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中央アフリカはキリスト教徒が全体の50%を占める多数派で、イスラム教徒は15%程度。
昨年3月にイスラム教徒主体の反政府武装組織セレカがバンギに侵攻し制圧。ボジゼ大統領は国外脱出した。

その後、セレカの最高指導者ジョトディア氏が暫定大統領就任を宣言したが、旧ボジゼ政権を支えたキリスト教徒側が武装して抗戦。
衝突が全土に広がり、民間人が巻き込まれる宗教対立となった。

アムネスティ・インターナショナルによると、昨年12月上旬には両者の報復合戦により、2日間だけで1000人以上が死亡した。難民・避難民は人口の2割以上の約100万人になったとみられる。

ジョトディア氏は先月10日、事態収拾を図る周辺国などの圧力を受ける形で辞任し、その後、穏健派キリスト教徒のサンバパンザ氏が大統領に就任した。【2月15日 毎日】
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ジェノサイドを懸念させる惨状、その背後にある異なる宗教の住民間の憎悪について、報告されています。

****中央アフリカ:惨殺された遺体の山に潜んでいた少女****
村人が虐殺されて4日後、遺体の山に隠れるようにして潜んでいた少女(11歳)がいた。

アムネスティのチームが、中央アフリカ共和国の首都バンギの西にある村で、荒れ果てた家屋の隅にうずくまっていたその少女を発見した。4日間、飲まず食わずだったという。
近くでは犬が遺体を漁っていた。道路に放置されている遺体は20以上もある。

この少女は、両親と近隣の人びとが惨殺されるのを目の当たりにしていた。精神的ショックが大きく、ほとんど口がきけない。衰弱して、立つこともできなかった。ただちに、少女は安全な場所に保護された。

彼女は村で生き残ったただ一人のイスラム教徒だった。他のすべての村びとは、逃げたか殺害されたかどちらかだ。
この村の凄惨きわまりない状況は、中央アフリカ全土でみられ、何万人ものイスラム教徒が犠牲になっている。

国連や主要各国は、本腰を入れて同国の惨状に対応すべきだ。同じ虐殺を繰り返させてはならない。そのためには、平和維持軍の派遣場所をよく吟味し、必要とする場所に派遣すべきである。
国連や各国は、この責務を果たすことができる兵力や物資を持っているはずである。
【2月14日 アムネスティ国際ニュース】
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****イスラム教徒大量虐殺が進行か、中央アフリカ****
・・・・アムネスティの報告によるとイスラム教徒の虐殺は1月初旬ごろから、人口の多い中央アフリカ西部で主に起きている。

周辺のイスラム教徒たちは集落ごとに逃げ出すほかになく、避難できなかった人々が、ゆるく組織化されているアンチ・バラカ(キリスト教徒民兵組織)に殺害されている。

こうした襲撃は、中央アフリカからイスラム教徒を強制排除するという意図が明確に述べられたうえで行われており、アンチ・バラカの戦闘員たちはイスラム教徒を、国から出て行くか、殺害すべき「外国人」とみなしているという。・・・・【2月12日 AFP】
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****武装勢力の元戦闘員、リンチで死亡 中央アフリカ****
イスラム教徒とキリスト教徒の宗教間対立に起因する暴力行為などが続いている中央アフリカの首都バンギで5日、イスラム教系の武装勢力連合「セレカ」の元戦闘員とみられる男性が中央アフリカ軍(FACA)の兵士らに公の場でリンチされ、殺害される事件が起きた。

事件が起きたのは、カトリーヌ・サンバパンザ暫定大統領や軍幹部、政府高官らが出席し開催された軍の式典が終了した直後。サンバパンザ暫定大統領は式典で、出席した兵士らを前に、国内の治安回復に貢献する兵士を誇りに思うと語っていた。

事件の様子は、カメラに捉えられており、複数のAFP記者によると、式典終了後、軍服姿の兵士たちが元戦闘員とみられる私服の若い男性に襲いかかり、頭を踏み付け、刃物で刺し、石を投げ付けるなどしたという。

現場では、「セレカ(の元戦闘員)だ」、「潜り込んでいるぞ」という叫び声が聞こえるとすぐに多くの人が集まり、やがてその人たちは怒れる群衆に変わったという。目撃した人たちによると、生死が分からない男性の体は通りで引きずり回された後、バラバラに切断され、火を付けられたという。

その後、式典の警備に当たっていたアフリカ連合(AU)の中央アフリカ支援国際ミッション(MISCA)の兵士たちが介入し、催涙ガスを使ったり、空に向けて発砲するなどして群集を解散させた。

今回の事件は、少数派のイスラム教徒からなるセレカが昨年3月に権力を掌握した後、多数派のキリスト教徒の市民を標的に組織的な殺人とレイプ、略奪などを始めて以降、(新たに暫定大統領が選出された)現在も、国内の混乱が収束していないことを改めて強調するものとなった。【2月6日 AFP】
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フランスは増派 EUも部隊派遣を検討
上記の状況を見ると、これまでセレカと敵対してきた中央アフリカ軍による事態沈静化は困難であり、国際社会の介入が必要とされています。

国連安全保障理事会は昨年12月、アフリカ連合(AU)主体の部隊展開と、旧宗主国フランスの軍事介入を承認。現在、フランス軍約1600人、AU部隊約6000人が展開していますが、沈静化には至っていません。

*****中央アフリカ:キリスト教徒がイスラム攻撃 民族浄化懸念****
武装勢力同士の衝突から宗教対立に発展し内乱状態となっているアフリカ中部・中央アフリカ共和国で、キリスト教徒民兵によるイスラム教徒市民への攻撃が激化している。

国際人権団体と国連高官は12日、イスラム教徒に対する「エスニック・クレンジング(民族浄化)が起きている」と一層強い表現を使い、相次いで危機感を表明した。

フランス軍などが介入しても殺りくの拡大は阻止できておらず、さらなる事態の悪化が憂慮される。

「アムネスティ・インターナショナル」(本部・ロンドン)は12日、今年1月以降に中央アフリカ西部でイスラム教徒に対する「民族浄化」が行われていると指摘、イスラム教コミュニティー全体が脱出を余儀なくされ、逃げ遅れた市民数百人がキリスト教徒民兵に殺害されたと発表した。
1月18日には少なくとも100人のイスラム教徒が殺される事件が起きたとしている。

また、グテレス国連難民高等弁務官も12日、首都バンギで報道陣に対し、「民族・宗教浄化が起きており、止めなければならない」と語った。

「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(本部・ニューヨーク)は同日、キリスト教徒民兵の組織化が進み、イスラム教徒の撲滅を意図する言葉を使っていると指摘した。

襲撃を逃れたイスラム教徒は数万人単位とみられ、隣国のチャドやカメルーンなどに逃げ込んでいる。バンギではイスラム教徒の商店などが破壊され、略奪も起きている。【2月15日 毎日】
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こうした事態に、フランスは400人の増派発表、EUも500人規模の部隊派遣を検討しています。

****仏・EUが部隊増派へ=治安悪化続く中央アフリカに****
フランス大統領府は14日、宗教対立で治安悪化が続く中央アフリカ共和国に対し、部隊400人を増派すると発表した。

欧州連合(EU)のアシュトン外交安全保障上級代表(外相)も、既に合意した派遣部隊の規模拡大を表明した。

仏大統領府は声明で「平和に対する全ての敵と戦う」とし、派遣部隊を現在の1600人から2000人に増強すると表明。

アシュトン外相は訪問先の国連で記者団に、加盟国が合意した500人規模の派遣部隊の倍増を検討しており、「極めて早期に展開が始まると確信している」と述べた。

中央アフリカにはこのほか、周辺のアフリカ諸国が派遣した約6000人の部隊が展開している。

中央アフリカでは、イスラム教徒主体の旧反政府勢力の元戦闘員と、これに対抗するキリスト教徒中心の民兵との対立で治安が極度に悪化。

AFP通信によれば、国連児童基金(ユニセフ)は過去2カ月間で少なくとも133人の子供が犠牲になり、首や手足を切り落とされるなどした子供もいると訴えている。【2月15日 時事】
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ただ、EUによる部隊派遣については、“危険度の高い任務になるため、英独伊などは地上軍の派遣を見送る方針を示している。スウェーデン、ポーランド、ベルギーなどが派遣を検討しているが、兵員の確保に困難が伴いそうだ。”【1月21日 毎日】とも報じられています。

【「これに対処をしないということは、この国の人びとを意図的に見捨てる道を選択したことと同じ意味を持つのです」】
国際対応の遅れにについて、現地で負傷者の救助にあたる国境なき医師団(MSF)は、“関係諸国による民間人保護策の完全な失敗を示すものだ”と批判しています。

****中央アフリカ共和国:国際社会は民間人虐殺を抑止できていない――MSF、国連で訴え****
国境なき医師団(MSF)日本  2014年2月19日

中央アフリカ共和国(以下、中央アフリカ)における行き過ぎた暴力と社会的マイノリティに対する殺害行為は、関係諸国による民間人保護策の完全な失敗を示すものだ。

国境なき医師団(MSF)は2月18日に国連で声明を発表し、国連とアフリカ諸国は暴力抑止と人道援助拡大に速やかな行動をとるべきだと訴えた。

現地で医療援助にあたるMSFチームは、国際社会が同国を孤立無援の状態にしていると指摘した。MSFは国連安全保障理事会理事国および資金援助国に、中央アフリカ国民に対する暴力の即時の抑止に努め、人びとが身の危険を感じず自由に移動できる安全性を確保し、最低限の生活ニーズを満たすための大規模支援の展開を求めた。

また、地域・国レベルの指導者たちに、暴力の抑止と一般市民保護の強化に最善を尽くすことを強く求めた。

<前例を見ない人道危機>
先ごろ、同国を訪れたMSFインターナショナル会長のジョアンヌ・リュー医師は、「MSFの最大の懸念は民間人の保護です。極めて激しい暴力に直面し、私たちも無力感にとらわれながら、多数の負傷者の治療にあたっています。殺りくを免れるため、大勢の人が自宅からの退去を余儀なくされる様子も目にしました。国連安保理の指導者らの関心と注力の欠如には大変失望していますし、この国を分裂させている暴力への、アフリカ諸国およびアフリカ連合の取り組みはごく限られたものにとどまっています」と述べている。

中央アフリカでは、キリスト教、イスラム教いずれの信者であっても、対立する武装勢力による暴力に脅かされている。
大規模な武力衝突が起きた2013年12月5日以降、MSFは首都バンギおよび国内全域で合計3600人余りの負傷者を治療。銃撃、爆弾、なた、ナイフその他の暴力による負傷者に対応してきた。

リュー医師はさらに現地で目撃した光景について話した。
「ボゾウム(ウハム・ペンデ州都)では、銃撃、なた、爆弾で負傷した17人が小さな中庭に隠れているところに出会いました。彼らは再び標的となることを恐れ、病院にも行けなかったのです。ひどいけがでしたが、じっと座りこんだまま、血を流していました。医療を受けることへの人びとの不安を表す事例です。望みをすべて失い、押し黙って、その場所に座っていました」

MSFも病院の近くや敷地内における武力攻撃に何度も対処している。マンベレ・カデイ州都ベルベラティでは2月12日、なたと銃で武装した一団がMSFの活動する病院に押し入り、発砲。威嚇された患者のうち、2人が身の危険を感じ、病院を離れた。

そのほかにも各地で幾度となく、地域の有力者、聖職者、そしてMSFの医療スタッフが身を呈して介入しなければならない状況が発生している。

武装勢力が傷病者を含む人びとの殺害を試みたり、予告したりしたためだ。患者もさらなる暴力被害を恐れ、救急車での搬送を拒むことが多い。

<迫害を恐れて>
MSFの活動地8カ所の合計約1万5000人の民間人も武装勢力に殺害されるのではないかとおびえながら、病院、教会、モスクに身を隠している。
ナナ・マンベレ州ブワルその他の町のイスラム教徒合計6000人は標的になることを恐れ、避難できずにいる。

MSFはバンギをはじめ、このような孤立状態にある場所の多くに診療所を開設した。わずか数百メートル先の病院であっても、人びとは恐怖から通院を控えているためだ。

また直近の2週間にMSFが診療した、バンギ、バオロ、ベルベラティ、ボカランガ、ボサンゴア、ブーカ、ボゾウム、カルノー出身の多数のイスラム教徒は、自主的な避難や、多国籍軍に可能な唯一の手助けであるトラック輸送で周辺国へと脱出をはかる人びとだった。

北西部からバンギに逃れ、孤立地区や避難キャンプで足止めに遭い、おびえて過ごしている人もいる。また、迫害への恐れから、各地で大勢の民間人がやぶに逃げ込んだが、完全に無防備で人道援助も届いてない。

<深刻な援助不足>
暴力による甚大な被害に加え、人びとの最低限のニーズを満たせるだけの人道援助拡大さえ全く十分ではない。援助はバンギ市内でも不足しているが、市外では事実上皆無だ。援助の基本である水、食糧、住居の提供にいたるまで、依然として不足状態が続く。(中略)

「各方面からの支援が急務です。それも1~6ヵ月程度で終了するものであってはなりません。これほど大規模な惨劇が国際社会の眼前で繰り広げられているのです。これに対処をしないということは、この国の人びとを意図的に見捨てる道を選択したことと同じ意味を持つのです」。リュー医師は最後に訴えた。
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旧セレカ軍による極端な暴力行為への報復として、アンチ・バラカと呼ばれる国内の自衛民兵が民間人イスラム教徒を、セレカの政治的基盤と見なし集団攻撃を開始した。

その結果、直近の数週間は主にイスラム教徒を標的とした暴力と略奪が頻発。その一方で、キリスト教徒もやはり被害に遭っている。
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